4月7日(火)昨今の関節リウマチ診療No2 

関節破壊評価と身体機能評価

 

関節リウマチ(RA)においては、治療目標の設定が長らく行われてこなかったという歴史があります。

それが2009年から、治療目標を臨床的寛解とし、もしくは少なくとも低疾患活動性とし、これに向けて治療を6カ月おきに見直していくという治療戦略がまとまりました。

これは「目標達成に向けた治療:Treat to Target」として世界的に認知されるようになりました。

 

関節リウマチ(RA)の治療目標は、疾患活動性制御に基づく関節破壊進行の阻止、および、機能的予後の改善、さらに生命予後の改善にあります。

 

これらの治療目標は、メトトレキサートMTX(リウマトレックス®)と生物学的製剤による治療学の進歩により実現可能となっており、これは目標に向けての治療である「Treat to Target(T2T)戦略」で明文化されています。

 

このなかで、関節破壊の進行度を評価する方法として旧来より種々の評価法が考案されてきました。近年では、関節エコー法や核磁気共鳴法(MRI)など、新たな機器を用いた評価法の発展が著しいです。

しかし、簡便性、経済性、反復評価などの点で、単純X線による評価こそがスタンダードであることに変わりはありません。

 

単純X線による関節破壊の評価法にも、これまでSteinbrockerのStage分類、Larsenのkey filmに基づくgrading scaleなど、さまざまな方法が提唱されてきました。

しかし、現在のRA研究においては、van der Heijdeによって提唱されたSharp Score変法、すなわちmodified Total Sharp Score(mTSS)ないしSharp-van der Heijde Score(SHS)が、関節破壊の評価ツールとして最も頻用される方法となっています。

このvdH-mTSS法がRAのアウトカム評価、特に自然歴を変え得る抗リウマチ薬の薬効評価の最も重要な指標となりました。

図1

 

 

杉並国際クリニックの見解
当クリニックでは、関節破壊の進行度を評価する方法として、簡便性、経済性、反復評価などの点で、現在においても最もスタンダードで評価の高い単純X線による評価に加えて、関節エコー法など、新たな機器を用いた評価を加えています。

 

そして、経時的観察による評価方法としては点数化できる指標で、しかも信頼性と妥当性の高いツールを求めてきました。手や指の観察は、概ね6カ月ごとの骨量測定検査(DIP法:中指骨で測定)で用いる手のエックス線フィルムで同時に評価していました。

 

関節リウマチのQOL予後の改善のためにも、骨粗鬆症の進行を抑制するためのケアは必須なので、この方法は理に適っていると考えています。

 

そこで今年度から、関節リウマチ(RA)の患者さんに対しては、従来の骨量測定の際には足指関節も単純X線撮影を実施することによってvdH-mTSS法による評価を行い、これまでより診療の精度を高めていくことにしました。