イタリアは新型コロナで今も大変です。その中心が1000万人の人口を擁するロンバルディア州で、ミラノは中核都市です。
ミラノといえばスカラ座ですが、昨年までの数年間は3月になると欧州医学・音楽研修で2週間ほどウィーンを中心に欧州各地で研修をしていましたが、この時期のスカラ座では観劇すべきオペラが開催されてなくて残念に思っていました。
今年は、資金不足のため欧州研修は控えていましたが、結果的には幸いでした。
さてミラノから遠くない港は、中世に海洋国家として栄えたジェノバです。
現在でもイタリア最大の港町です。新大陸を発見したコロンブス(1451~1506年)の出身地でもあります。市庁舎として使われる王宮や赤の宮殿、白の宮殿が並ぶガリバルディ通り、バルビ通りは世界遺産に登録されるが、栄光はもはや過去のもので寂寥感が漂う港町だそうです。
昨年3月、中国の習近平国家主席のイタリア訪問に合わせ、ジェノバ港とトリエステ港の開発について覚書が交わされました。先進7カ国(G7)の中で一帯一路を承認したのはイタリアが初めてです。
米国もEUも強い警戒感を示したが、低成長に苦しむ老大国には背に腹は変えられず、中国マネーを断ることができず、中国交通建設(CCCC)の投資を呼び込むことで港湾施設を再構築して貨物取扱容量を増やし、稼働率を上げる狙いがあったようです。
ここまで書けば、イタリアのロンバルディア州でなぜ爆発的なコロナ感染がおこったのかピンときた方も少なくないのではないかと思いますが、世界の大手メディアもイタリア政府もあえて触れようとはしていないようで恐ろしくもあります。
さて、こんな時でも語学と音楽は私たちに豊かな教養の源泉を与えてくれます。
NHKテキストラジオまいにちイタリア語応用編のテーマは、
イタリアで劇場に行こう!(Andiamo a teatro in Italia!)
です。
4月号の第3・4課(Lezioni3~4)から抜粋し、話題を提供させていただこうと思います。
テキストにも対訳が掲載されていますが、独立したセンテンスに合わせて訳しなおしてみました。
〇 La prima opera, Euridice, composta da Jacopo Peri, è stata rappresentata a Firenze nel 1600.
私訳:(イタリアの、というより世界での)最初のオペラ(歌劇)である『エウリディーチェ』は、ヤコポ・ペーリ作曲で、1600年にフィレンツェで上演されました。
コメント:1600年と言えば、日本では関ヶ原の合戦の年です。それで世界のオペラは概ね江戸時代の藝術であることがわかります。
また、この『エウリディーチェ』は現存する世界最古のオペラ作品です。フィレンツェで16世紀末から活動していた芸術家集団「カメラータ」による、古代ギリシア悲劇を再興させようとする試みの中で生み出されました。
作曲家のペーリは『エウリディーチェ』の序文で、語りの部分における音高の変化と、歌の音程のある動きとが古代ギリシア演劇の理論において区別されていたことに触れ、<語りと歌の中間をいく、古代ギリシアの人々が英雄詩の吟唱に用いていた>と考えられるものを見いだそうとしたと述べています。
私が歌うレパートリーの一つにはグルックの歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』のアリア、Che farò senza Euridice「エウリディーチェを失って」という曲があります。
この作品の元になったのがギリシャ神話で、古事記の筋書きにとても似ています。エウリディーチェを伊弉冉命(イザナミのミコト)、オルフェオを伊邪那岐(イザナギのミコト)とすれば、日本版オペラ『イザナミのミコト』もしくは『イザナギのミコトとイザナミのミコト』そしてそのアリアは「イザナミを失って」となることでしょう。
〇 Adesso ci sono anche i sottotitoli, ma è moltoimportante leggere in anticipo il libretto o anche solo la trama, non solo per gli stranieri ma anche per gli italiani…
私訳:今では字幕もありますが、とても大切なことは事前に台本やあらすじだけでも読んでおくことです、外国人だけでなく、イタリア人にとってもです・・・
コメント:これは本当だと思います。私が観能するときは、必ず謡本(台本)を持参します。能楽には字幕がないからだけではありません。見どころ聴きどころや背景知識が得られるので、贅沢な楽しみができるからです。中世の日本語の美しさに触れることができるのはとても有難いことです。
さてカトリック信者でクラシック音楽家でもあるという、とある方が意外に感じたというお話を聞きました。それは信仰を見失い、オペラも知らないというイタリアの若者の多さです。
しかし、少し考えてみれば不思議はないと感じました。なぜなら、能や狂言に夢中になっている日本の若者をあまり見かけないのと同じことだからです。イタリアの若者も日本の若者も伝統芸能よりポップスに惹かれるのではないでしょうか。
追伸:
3)パンデミック:教皇フランシスコ、全世界で「主の祈り」の呼びかけ
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