緊急提言:イタリアでのCOVID-19感染による高い致死率から日本が真剣に学ぶべきことNo.4 (全4回)


杉並国際クリニック 飯嶋正広

 

❹ 対処行動(ソフト面)の問題

1)初動対応の遅れ:

感染者が集中する北部ロンバルディア州では、最初の市中感染が確認された2月下旬の時点で既に広範囲にウイルスが広がっていたとの分析があります。

患者急増に集中治療室の受け入れが追い付かず、人工呼吸器もたちどころに不足してしまいました。

⇒初動対応の遅れをなかなか認めようとせず、言い訳に終始するのは、イタリアだけでなくWHO、中国そして日本も同じ穴のムジナであるようです。

流行性の感染症の制圧の鍵は初動対応に罹っていると思います。初動が遅れ、しかも適切な対応ができないと、患者数の急増に加えて、重症化が進行し、それがまた患者のさらなる増加を招きます。

 

2)症状の重い人を優先的に検査する態勢:

医療現場は初動で混乱し、ANSA通信によると3月中旬までにロンバルディア州だけで約700人の医師や看護師も感染しました。

イタリア政府の衛生高等研究所幹部は、症状の重い人を優先的に検査する態勢が死亡率を高くした原因であるとも述べています。

⇒初動の対応が遅れたから、トリアージして重症患者を中心に対応せざるを得なくなったことは明らかです。

そして、人工呼吸器が不足すると、適応を60歳未満に限定して、リスクの高い重症の高齢者を排除したことも死亡数を増やす結果を招く原因になったのではないでしょうか。

大流行しているロンバルディア州の人口は約1000万人で、この一州でイタリアの人口の1/6を占める最大の州とはいえ、ただでさえ不足している医療従事者を700人感染させてしまったのは、最大の失策だったのではないかと思います。
   

イタリアの感染者数の累計が感染者累計1万7660人であるということは、ただでさえ不足している医師が膨大な件数のPCR検査に従事したことになります。

検査を受けた患者の陽性率の情報が手元にないため、より正確な推計はできませんが、少なくとも感染が判明した1万7千件の数倍以上のPCR検査を実施したはずです。

患者の収容施設や治療資源や十分な防禦体制が確保されていない状況で、有効な治療に結びつけられないまま、ひたすらに膨大な件数のPCR検査を強行していけば、医療従事者が次々に感染してしまいます。

そして、残された医療従事者の負担が更に増えて疲弊し、更なる感染に繋がってしまうと、医療体制は完全に混乱し、麻痺し、収集のつかない事態にまで発展してしまいかねないことは容易に理解できます。
   

患者を救う立場の医療従事者を感染の危険から守り、一定期間継続的で安定した医療供給をはかれるような態勢を確保することが、パンデミック収束にむけて行政が留意すべき最優先事項であるということ、そしてPCR検査は態勢の整った施設に限定して最大限の支援を行い、これまで通り症例を限定して実施すべきであること、この2点を深く認識していただきたいものです。