緊急提言:イタリアでのCOVID-19感染による高い致死率から日本が真剣に学ぶべきことNo3. (全4回)

杉並国際クリニック 飯嶋正広


❷ 人口構成で高齢者が多い

イタリア政府の衛生高等研究所幹部は致死率の高さについての説明で、欧州連合(EU)の昨年の統計によると、同国で人口に占める65歳以上の割合は22.8%でEU加盟国の中で最も高いという指摘があります。たしかに、高齢の感染者は病状が悪化しやすいため死亡率も高いです。

⇒ しかし、各国の比較のために2018年統計をみると、1位の日本についでイタリアは2位、たしかに欧州ではトップの高齢化率ですが6位のドイツ、12位のフランスと大差がないことがわかります。

 

1位日本(27.59%)、2位.イタリア(22.75%)、6位.ドイツ(21.46%)、
12位フランス(20.03%)、18位、スペイン(19.38%)、26位、英国(18.4%)

 

人口の高齢化は一因ではあるでしょうが、主要因ではなさそうです。どこの国でも似たようなものですが、イタリア政府の衛生高等研究所幹部が高齢者人口比率を引き合いに出すのは根拠としては、とてもお粗末だと思います。

こういう場合は、当局が真実を報道することを避けて、意図的に言及していない可能性があります。

 

 

❸ 医療体制(ハード面)の不備

その原因:医療従事者の人員不足、原因の原因:緊縮財政のあおり

医療関係予算は削られ2012~17年の間で全国で約760の診療科が閉鎖されています。イタリアのレスプレッソ(L’Espresso)誌はエリート層や学生を中心に読まれている主要なニュース週刊誌ですが、この雑誌は「新型コロナ感染拡大が起きる前からイタリアの医療体制は機能不全に陥っていた」と指摘しました。

「既に緊急事態は起きていた」との大見出しで、医師はすでに5万6千人、看護師は5万人不足していたとの分析を伝えました。

 

現在、ミラノやジェノバでは見本市会場やフェリー内を突貫改装し、数百単位ずつの病床を増設する案も浮上しています。

⇒緊急時に対応できる医療機関の大規模閉鎖や医療従事者の慢性的欠乏が続いてきた中で、にわかに改築した病院を建設したとしても、十分な設備や医療スタッフが不足していれば病院はまったく機能しないはずです。すると、次第にとんでもない悪循環が連鎖的に加速して起こることになります。