3月5日(木) 呼吸器 非結核性抗酸菌症 ❹

呼吸器 非結核性抗酸菌症 ❹

日本の抗酸菌感染症診療の拠点である複十字病院(東京都)から、肺マック症の治療期間に関する研究結果の紹介(Chest 2020年1月16日オンライン版)

 

対象:

2006年1月~17年11月に、12カ月以上の標準治療(マクロライド、エタンブトール、リファマイシン±アミノグリコシド注射剤)を受けた肺MAC症患者234例を登録した。微生物学的に治癒に至らなかった29例、外科手術を受けた45例、Mycobacteroides abscessusに感染した4例、マクロライド耐性の1例を除外し、残りの154例が解析対象となった。

 

方法:

培養陰性化後12カ月以上治療、例えば+3カ月を超える延長レジメンの有効性を評価するに当たって、培養陰性化後15カ月以上治療した群(15カ月以上群)と15カ月未満治療した群(15カ月未満群)を比較した。喀痰培養陰性化の定義は、4週間以上間隔を空けた喀痰抗酸菌培養検査が少なくとも連続3回陰性になることとした。

 

結果:

全患者は治療時に胸部CTで空洞や気管支拡張所見の有無が確認された。154例のうち、44例がM. aviumとM. intracellulareに分離でき、84.1%がM. avium、15.9%がM. intracellulareだった。疾患のタイプとしては、非空洞結節・気管支拡張型が109例(70.8%)、空洞結節・気管支拡張型が29例(18.8%)、線維空洞型が9例(5.8%)、分類不能が7例(4.5%)だった。

 

喀痰陰性化までの期間中央値は43日(28~83日)だった。15カ月以上群は110例(71.4%)、15カ月未満群は44例(28.6%)だった。それぞれの治療期間中央値は、20.9カ月、12.4カ月である。

 

全体で肺MAC症の再発は59例(38.3%)に見られた。そして、15カ月未満群では、15カ月以上群と比較して有意に再発率が高いという結果が示された(P=0.002)。

 

本研究で、3カ月を超えて陰性化に至った遅効例は、全体の約20%だった。

 

定められた12カ月を下回る不十分な治療の患者を、15カ月未満群の集団から除外して解析しても、この有意差は残った(P=0.016)。また、統計学的に有意ではなかったが、治療終了から再発までの期間は、15カ月未満群の方が短い傾向にあった。

 

また、多変量解析の結果、治療終了時の空洞病変の存在、気管支拡張症の重症度、15カ月未満の治療期間が肺MAC症再発の独立したリスク因子であることが示された。

 

本日のまとめ:肺MAC症再発防止のためには、治療期間を15カ月以上とすることの臨床的な意義があります。