非結核性抗酸菌症 ❸
MAC (Mycobacterium avium complex)症の起炎菌については、関東ではM. avium感染症が多く、中国・四国地方および九州地方ではM. intracellulare感染症が多いことが知られています(Respir Investig 2018;56:87-93)。
日本の抗酸菌感染症診療の拠点である複十字病院(東京都)から、興味深い研究結果が報告されました(Chest 2020年1月16日オンライン版)。
背景:
肺MAC(Mycobacterium avium complex)症の治療期間の国際的な通説では「喀痰培養陰性化から12カ月」とされています。
この基準は2007年の米国胸部学会(ATS)/米国感染症学会(IDSA)のガイドライン(Am J Respir Crit Care Med 2007;175:367-416)に記載されています。
そのため、エキスパートの間では、有空洞症例の再発率(再感染率)が高いので、空洞が残っている場合は治療期間を9カ月~1年程度長めに見積もってもよいという意見が広まっていました。
しかし、エキスパートオピニオン以上の結論は出せていません。
しかし、この基準は根拠に乏しく、これによってどの程度再発を抑制できるのかも明確にされていませんでした。
非結核性抗酸菌症の治療に用いられる抗菌薬に中で、クラリスロマイシン単剤による治療は数カ月以内に耐性誘導が起こることが問題となっております。
そして、クラリスロマイシン高度耐性菌感染の場合は予後不良とされています。そのため、クラリスロマイシン単独治療は厳に慎まねばなりません。
ですから、なるべく抗菌薬の使用は短期間で完了したいところですが、治療期間を十分に確保しておかないと、再発することが問題となっております。
そのため、どのくらいの治療期間が必要なのか、という議論は続いてきました。
<明日に続く>
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