号外:新型コロナウイルスのゲノム解析

Lancet誌オンライン版2020年1月30日号より。
 

2月を迎えてから、連日コロナウイルスの話題でもちきりです。

新着情報を毎日確認していないとついていけなくなってしまう程です。

 

今週は、新型コロナウイルスの話題を毎日発信していきましたが、掲載時には、すでに古い情報になっているような有様です。

そこで、追加情報のまとめとして、この号外を発信することにしました。

 

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病原体として同定された新型コロナウイルス(2019-nCoV)について、中国疾病予防管理センターのRoujian Lu氏らがゲノム配列を調べました。
 

 

著者らは、入院患者9例(うち8例は海鮮卸売市場を訪れた症例)の気管支肺胞洗浄液サンプルと培養分離株の次世代シークエンシングを行ないました。

これらの症例から全体および部分的な2019-nCoVゲノムシークエンスを取得し、2019-nCoVゲノムとほかのコロナウイルスの系統解析を用いてウイルスの進化について同定し、可能性のある起源を推定したものです。
 

 

主な解析結果:

❶ 9例から得られた新型コロナウイルス(2019-nCoV )の10のゲノム配列は非常に類似し、同一性は99.98%以上だった。

 

❷ 2018年に中国東部の舟山で収集された2匹のコウモリ由来の重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(bat-SL-CoVZC45、bat-SL-CoVZXC21)は、新型コロナウイルス(2019-nCoV) と88%の同一性であった。

 

以上の結果より、
2019-nCoVは系統解析では、コウモリがこのウイルスの最初の宿主(第1宿主)である可能性が示唆されました。

ヒトに感染する新たなβコロナウイルスと考えられ、βコロナウイルス属サルべコウイルス亜属に分類されます。

 

さらに武漢市の海鮮卸売市場で販売されている生け捕りのままの動物はヒトでのウイルス出現を促進する中間宿主(第2宿主)である可能性が示されました。

 

ホモロジーモデリングから、新型コロナウイルス(2019-nCoV)は受容体結合ドメイン構造がSARS-CoVと似ていることがわかりましたが、SARS-CoVとは異なるタイプです。

最も近縁のbat-SL-CoVZC45およびbat-SL-CoVZXC21より比較的長い分岐長を有し、SARS-CoVとは遺伝的に異なることが認められました。

 

さらに構造解析から、新型コロナウイルス(2019-nCoV)がヒトのアンジオテンシン変換酵素(ACE)2受容体に結合できる可能性が示唆されました。

 

 

杉並国際クリニック院長からのコメント:

私は、今回の新型コロナウイルス流行については、1月5日付けの産経新聞「中国 原因不明の肺炎 武漢で44人発症 11人重症」という見出しの記事を家内から見せられた段階で、おおよその予測がついていました。

政府の対応が遅いことも家内とともに心配していましたが、ついに1月末には、日本の対応の杜撰さを抗議する英国人の友人からメールを受け取るにいたりました。

とりあえずの返信をしましたが、それ以降の反応はありません。

初動は遅かったのは否めませんが、それ以降の政府は概ね適切な対応となりつつあるように見られます。