1月31日 急性白血病をめぐって(No5)

―再発または難治性でCD19陽性の、B細胞性急性リンパ芽球性白血病―

 

キムリアによる治療は、CAR-T療法と呼ばれ、がん細胞への攻撃力を高めるように患者さん自身の免疫細胞に遺伝子改変を行う治療法で、「がん免疫遺伝子治療」にあたります。

 

まず、患者さんの血液から免疫細胞のひとつであるT細胞を取り出し、白血病のがん細胞を標的として攻撃するためにCARと呼ばれる分子を作り出すことができるように遺伝子を導入し、CARを発現したT細胞(CAR-T細胞)を作ります。これを患者さんの体内に戻せるように製造された製品がキムリアです。

 


CAR-T細胞は、白血病に出ているCD19という標識をみつけて捕まえる能力高くなっています。CD 19を目印に白血病を捕まえたCAR-T細胞が強い攻撃力で白血病をやっつけます。

キムリアを投与すると、体中にCAR-T細胞が拡散します。CAR-T細胞は、他の血球の協力がなくてもCARを使って白血病のがん細胞を見つけて結合し、がん細胞を攻撃し、死滅させます。

また、CAR-T細胞は体の中で増えることができるため、1度だけの投与で継続的に標的のがん細胞を攻撃します。

 


CAR-T細胞療法は細胞性免疫をつかさどるT細胞を利用した治療法です。しかも、CAR-T細胞療法は遺伝子を患者の細胞に導入した遺伝子治療です。

患者のT細胞をアフェレシスにより採取し、その細胞に遺伝子操作を行い、CD19に反応するような抗原受容体を持ったT細胞に改変して患者に戻します。

患者数は年間200人程度と見込まれています。このようにCAR-T療法は、がん免疫療法として有効性が期待される反面、重篤な副作用が起きる可能性もあります。

 

治療は、1患者当たり1回であり、薬価は約3,349万円です。これまでの治療薬よりはるかに高額な治療法であり、過去最高の薬価です。

わが国では高額医療の多くは公費での負担が重く、個人より国の負担が重くなります。2019年に、米国では脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬(zolgensma)が212.5万ドル(約3億円)で認可されました。それにしても驚天動地の高額医療です。

 

そもそも、特許切れの薬剤の薬価は低く抑えられてしまいます。

残念ながら日本の製薬会社はアカデミアやベンチャー発の画期的新薬を取り入れる競争で後れを取ってしまいました。

国家を挙げて重要な研究を積極的に支援することが望まれます。私は政策や経済の門外漢ながら、わが国の研究の遅れにより、これら高額な海外の新薬が増えてくるトレンドを冷静に考えると、早晩わが国の薬剤費、貿易赤字の両方に悪影響が及んでくることが懸念されます。

 

<完>