1月23日 抗血栓薬の二面性について

脳梗塞などを予防する重要な作用は、逆に出血を止まりにくくする作用でもあります。

抗血栓薬には抗血小板薬と抗凝固薬があります。

 

 

抗血小板薬は血小板の力を少し弱めて血液が固まりにくくする薬です。

それは狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの患者さんあるいは心臓カテーテルで冠動脈を広げたり、ステントを留置したりした患者さんに処方されます。

 

抗凝固薬は、血液が固まって血栓ができるところに作用します。心臓で不整脈が起こった場所や足の深部静脈などに血栓ができ、それが血流によって脳や肺に運ばれ動脈を詰まらせることがあります。

 

抗凝固薬は血液を固まりにくくさらさらにする薬です。

適応は心房細動、深部静脈血栓症、肺梗塞などです。
 

 

抗血栓薬にはこういう"光"の部分に対して、出血しやすいという"影"の部分があります。

 

このことを念頭に置き、頭を打った、派手に転んだという場合はすぐに医療機関を受診していただきたいと思います。

 

転倒は100%防げるものではないので、なるべく転倒をしないように気を付けること、転倒してしまったらどうするかを常に考えておくことが大切です。

 

覚えておいていただきたいのは、高齢の方は、脳と頭蓋骨の隙間が大きく空いているため、自分では支障がなく問題ないと思うような程度の受傷でも頭蓋内で出血が生じてしまう場合があるということです。

さらに、頭部にけがをした際、すぐに意識障害が出ず、しばらく経過してから突然現れることもあります。

 

どのような状況であれば医療施設を受診すべきかは、私でも簡単にはいえません。ですから、せめて高齢で抗血栓薬を服用している方は少しでも頭をぶつけたら、遠慮せずにCTスキャンのある医療機関をまず受診してほしいものです。

そして、自分が飲んでいる薬の名前を覚えておいていただきたい。中には中和剤がある抗血栓薬もあるので、うまく中和ができれば転帰不良になる確率は低くなります。

 

頭を打った直後は出血していたものの、少量の出血だったため症状が現れず、話すこともできていた(Talk)のに、血腫が大きくなると急に意識レベルが低下し、会話ができなくなったり麻痺が出現します(Deteriorate)。

この症状が増悪する現象を"Talk & Deteriorate"と呼びます。

 

抗血栓薬を服用している方では血腫が大きくなりやすく、高齢の方が転倒して頭をぶつけると、もともと重症化しやすいので、この現象は抗血栓療法中の高齢の方では問題になることが多いです。

頭部外傷における転帰良好の割合は65歳未満の48.6%に対し、65歳以上では14.6%。

死亡率はそれぞれ26.6%、43.8%と報告されています。

 

頭を打って、少しでも様子がおかしいと感じたら、迷わず脳神経外科等でCTスキャンを有する医療機関を受診すべきだということを、ぜひ覚えておいていただきたいです。