1月17日 リウマチ科医に関係が深い肝炎:自己免疫性肝炎(その2)

関節リウマチで当院通院中の40代の女性が、他の病院の人間ドックで肝機能障害を指摘され、その原因はリウマチの治療薬によるものではないかと疑って相談を受けました。

 

まじめに内服を続けられ、治療反応も良好であったため、使用していた2種類の抗リウマチ薬のうちメトレキサートは1週間に1回1カプセル(2㎎)のみとなり、サラゾスルファピリジンも通常投与量の半量(1日500㎎)でコントロール可能となっておりました。

 

本人は一切飲酒せず、正常体重であり、まずアルコール性肝障害は除外され、また生活習慣病による脂肪肝の可能性は低いうえに、ウイルス性肝炎でないことはすでに確認済みでした。

そのため、少量投与とはいえ本人が内服している抗リウマチ薬(メトレキサートとサラゾスルファピリジン)のいずれか、あるいは両方による薬物性肝障害を疑うのも尤もです。

確かに、いずれの薬剤も注意すべき副作用として肝障害が挙げられているため、無理はありませんでした。

 

自己免疫性肝炎では20%程度が肝硬変であり、3~5%に肝細胞癌が合併します。幸い、腹部超音波検査では、脂肪肝等は見出せず、肝硬変や肝癌の所見もありませんでした。

 

追加して実施した血液検査では、抗核抗体640倍(基準値≦40倍)、IgG3,280㎎/dl(基準値≦1,700)でした。抗核抗体は、全身性エリテマトーデス(SLE,陽性率ほぼ100%)、混合性結合組織病(同ほぼ100%)、全身性硬化症(80-90%)、シェーグレン症候群(70-90%)、多発性筋炎/皮膚筋炎(50-80%)では陽性率が高く、関節リウマチ患者でも40%程度に見られます。

 

この患者さんの肝機能障害の原因が、薬物性肝障害なのか、自己免疫性肝障害なのかの臨床的鑑別は困難であるため、転院先の病院で肝組織検査を受けていただくことになりました。

 

組織による病理検査によって、自己免疫性肝炎の診断が得られ、副腎皮質ステロイド薬の内服が開始されました。

その間、抗リウマチ薬は継続しておりましたが、肝機能は徐々に改善していったようです。

ただし、副腎皮質ステロイド薬の長期投与は、必然的に骨粗鬆症(ステロイド骨粗鬆症)を招くことになるため、新たな副作用対策が必要となります。

 

遠方への転居のため更なる転医をされたために、連絡が途絶え、その後の経過は不明です。