1月1日 日閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)その1

症例は40代男性。身長175㎝、体重97㎏。

 

夜間の頻尿があり、また日中も勤務中に高度の眠気を自覚していました。

 

挙児希望なのに性欲が減退し、イライラが募る妻に睡眠時のいびきを指摘されて来院しました。

 

まず身長と体重から体格係数(BMI)を計算してみます。


BMI=97÷1.75÷1.75=31.7;30以上なので肥満度(Ⅱ度)に相当します。


また血液検査の結果は糖尿病型でした。
夜間頻尿は、胸腔内圧の陰圧化による静脈還流量の増加により、心房性ナトリウム利尿ペプチドが増加することが原因となることがあります。


また、慢性的な低酸素血症による末梢神経障害やテストステロンの低下、日中の疲労からインポテンツに陥ることがあります。

 

ここから睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑うことになります。
以下は、日本呼吸器学会のHPからの睡眠時無呼吸症候群についての引用です。

 

【概要】睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を起こす病気です。
【疫学】成人男性の約3~7%、女性の約2~5%にみられます。男性では40歳~50歳代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加します。


【発症のメカニズム】空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。首まわりの脂肪の沈着が多いと上気道は狭くなりやすく、肥満はSASと深く関係しています。扁桃肥大、舌が大きいことや、鼻炎・鼻中隔弯曲といった鼻の病気も原因となります。

あごが後退していたり、あごが小さかったりすることもSASの原因となり、肥満でなくてもSASになります。


【症状】いびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛などを認めます。日中の眠気は、作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害の原因にもなります。


【診断】問診などでSASが疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて睡眠中の呼吸状態の評価を行います。

PSGにて、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上であり、かつ上記の症状を伴う際にSASと診断します。
重症度はAHI5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症としています。


【治療】AHIが20以上で日中の眠気などを認めるSASでは、経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous posi-tive airway pressure:CPAP)が標準的治療とされています。CPAPはマスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。また、下あごを前方に移動させる口腔内装置(マウスピース)を使用して治療することもあります。

小児のSASではアデノイド・口蓋扁桃肥大が原因であることが多く、その際はアデノイド・口蓋扁桃摘出術が有効です。


【生活上の注意】肥満者では減量することで無呼吸の程度が軽減することが多く、食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけることが重要です。アルコールは睡眠の質を悪化させるので、晩酌は控える必要があります。 


【予後】成人SASでは高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなり、特に、AHI30以上の重症例では心血管系疾患発症の危険性が約5倍にもなります。しかし、CPAP治療にて、健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。

 

<明日に続く>