第1週:呼吸器・腎臓病 今月のテーマ:呼吸不全

12月2日(月)

慢性呼吸不全についてNo1

 

呼吸不全に関する杉並国際クリニックの日常診療の課題として、慢性呼吸不全の管理があります。

 

令和元年5月に、新体制となってから、初診(再初診も含め)はすべて予約制としたことにも関連して、急性呼吸不全の患者さんに遭遇することはほぼ皆無となりました。そのかわり、見過ごすことができないのが、気づかれずに進行していく慢性呼吸不全です。

 

慢性呼吸不全とは、『動脈血酸素分圧(PaO₂)が60Torr以下の呼吸不全の状態が1カ月以上継続する状態』を指します。

 

このことは、最低でも毎月1回の受診をしなければ、慢性呼吸不全の最初の状態を速やかに発見することができないことを意味します。

 

杉並国際クリニックでは、必要に応じてパルスオキシメータで動脈血酸素飽和度(SpO₂)を測定しています。水氣道の会員の皆様は、稽古の前後に自主的に測定しているのでお馴染みですね。

 

慢性呼吸不全の基準となる動脈血酸素分圧(PaO₂)60Torrというのは、動脈血酸素飽和度(SpO₂)では90%に相当します。90%という数字に何となく安心してはいけません。動脈血酸素飽和度(SpO₂)90%で、呼吸不全の状態を疑わなければならないからです。

 

それでは、動脈血酸素飽和度(SpO₂)はどれ位であれば良いのでしょうか。

 

私(Dr.飯嶋)自身は、97~98%が普通で、ときどき96%や99%になります。

 

パルスオキシメータで測定中に呼吸を止めていると、みるみる数値が下がり、一過性には90%以下になりますが、健康であれば、呼吸を再開するならばたちどころに初めのデータに戻ります。

 

さて、超高齢社会では、予後予測に基づく先制医療が必要となります。予防が大切であることは昔から言われていることですが、これは、より明確な方略です。これは個人データを集積していくことで、病気の早期発見・早期介入に繋げていく方法です。すでに水氣道でパルスオキシメータで動脈血酸素飽和度(SpO₂)を毎回測定している方は、進行した慢性呼吸不全に至る可能性からはかなり免れることができます。

 

パルスオキシメータで90%以下であれば、呼吸不全の状態なので、90%を超えていれば安心して良いのでしょうか?そうではありません。先制医療による早期発見のためには、もう一つ手前の段階を知っておりていただきたいと思います。それは、パルスオキシメータで93%以下となった場合には、准呼吸不全に該当するということです。このときの動脈血酸素分圧(PaO₂)70Torrに相当します。

 

 

PaO₂≦60%で呼吸不全、60≦PaO₂≦70%で准呼吸不全

また代表的な数値を紹介します。