11月27日 SLE診療の実際

3) SLEの臓器診察と診断

 

SLEは、皮膚・関節症状の他に、漿膜炎(胸膜炎、心膜炎)、腎炎、神経症状(けいれん発作、精神病、多発単神経炎、末梢・中枢神経障害、急性錯乱状態)に加え、血液疾患(溶結性貧血、白血球減少、血小板減少)、膀胱炎や腸炎がみられることもあります。

 

このように、SLEは特有の腎臓病や脳神経症状をも伴うので、腎臓や血液、神経内科・心療内科・精神神経科領域にも及ぶ知識や経験も求められる疾患です。

 

 

2010年に欧州リウマチ学会(EULAR)は、SLEに伴う神経精神症状(NPSLE)、2012年に欧州腎臓学会・欧州透析移植学会と合同でSLEに伴う腎炎(ループス腎炎)の管理に関する推奨、米国リウマチ学会(ACR)はループス腎炎のスクリーニング・治療・管理に関する推奨を、それぞれ発表しています。

 

また、2014年にEULARは、寛解とその維持を目標とする(Treat to Target)治療方略に関する推奨と問題点について報告しています。

 

 

重要な臓器病変としてループス性腎炎はSLEの約50%の症例にみられます。発症機序として、DNAと抗DNA抗体による免疫複合体形成が主因と考えられています。

 

これは免疫複合体性糸球体腎炎であり、持続性タンパク尿(0.5g/日以上)からネフローゼ症候群になります。

 

強力な免疫抑制療法がおこなわれるため、致命的な合併症として感染症が問題となります。また抗リン脂質抗体症候群が合併することが多いです。

 

 

診断にあたっては、ウイルス感染症や血液疾患、他の膠原病などとの鑑別をしながら進めていきます。

 

厚労省基準(1987年改訂ACR分類基準)にかわって、最近では、より早期からの分類が可能となる国際基準(SLICC)分類基準が用いられます。

 

診断基準には、臨床的基準の11項目の他、免疫学的基準が6項目あり、このうち4項目を満たせばSLEと分類されます。杉並国際クリニックでは、免疫学的基準が6項目のうち、抗核抗体、抗DNA抗体、補体(C3,C4)、直接クームス試験の4項目をスクリーニングしていますが、他にも抗Sm抗体、抗リン脂質抗体の2項目があります。

 

 

SLEの診断がついたあとに、計画的に確認しておくべきなのは、重症度と疾患活動性の評価です。

 

重症度の評価は、臨床症状の重症度で判断しますが、ループス腎炎については、生検による組織所見により評価します。ループス腎炎は、SLEの予後を左右する主要臓器病変であり、腎生検でⅠ型からⅥ型に分けられています。

 

 

SLEの疾患活動性の評価は、日常診療においては、発熱、関節痛、皮膚粘膜病変、血球減少、低補体血症、抗二本鎖DNA抗体上昇、尿所見などにより活動性を評価します。尿検査では尿蛋白0.5g/日以上、赤血球円柱などはSLEの診断の臨臨床的基準の項目の一つです。

 

<明日に続く>