11月26日 SLE診療の実際

2) SLEの皮膚・関節の診察

 

全身性エリテマトーデス(SLE)は国の指定難病であり、国内の推定患者数は10万人程度とされています。

 

しかし、国内でのSLE治療ガイドラインは担当研究班により作成中です。SLEで出現する症状や重症度は患者間で大きく異なります。

 

また、寛解の後にも再発が高頻度であることも特徴です。リウマチ膠原病疾患という内科疾患であって、皮膚科的所見や整形外科的関節所見にも対応できるのがリウマチ内科専門医です。

 

 

SLEの早期診断は、重症化を防ぎ、予後を左右するため重要です。臨床症状としては、まず、全身症状として発熱、倦怠感、多関節痛(炎)がみられます。
 

とくにSLEに特徴的皮疹として、頬部紅斑(蝶形紅斑は特異疹)、円板状エリテマトーデス型皮疹(ディスコイド疹)を伴うことが多いです。なお、特定の疾患との関連が強い皮膚症状を特異疹とよびます。

 

その他、レイノー症状(註1)などの皮膚症状は多様です。また、無痛性口腔内潰瘍(註2)や非瘢痕性脱毛(かつては、診断基準に含まれていました)は膠原病の中でもSLEに特異性が高いです。


そして、それらが診断、活動性や重症度の評価、予後予測に有用です。膠原病でみられる皮膚症状の多くは痛みや痒みなど自覚症状を伴わず、患者自身が気付いていないことも多いです。

 

ただし、自然軽快するため経過観察が基本ですが、全身疾患(ベーチェット病、サルコイドーシスなど)との鑑別、皮下脂肪炎を呈する結節性疾患(結核の硬結性紅斑、血栓性静脈炎、結節性動脈炎など)と深在性エリテマトーデスとの鑑別をします。

 

(註1)レイノー現象:SLEの50%程度にみられるが、強皮症や混合性結合組織病ではいずれも90%以上と高頻度に認められます。これは、寒冷刺激や精神的なストレスにより手指の皮膚の色の変化が認められる現象です。それは皮膚の色調の変化が認められる点が重要です。
典型的には、まず蒼白となり、その後チアノーゼ(暗紫色)、最後に血流が戻るために赤くなるといった三相性の変化をたどります。実際には、すべてが三相性を示すとは限らず、このうち、少なくとも二相性の変化が認められる場合、レイノー現象陽性とします。
左右対称に現れ、痛みを伴う場合もあります。
一次的に小動脈の血流不足が発生するために起こる現象です。
ただし、その機序は十分に解明されていません。

 

(註2)口腔内潰瘍:硬口蓋に好発し、痛みを伴わない場合が多いです。通常、疾患活動性と相関するため、ステロイド治療後には消失することが多いです。

 

 

 

SLEでは滑膜炎や関節炎も伴います。炎症性単関節炎を発症する頻度が高いです。単一の関節炎であっても、SLEに伴う関節炎は炎症性ではあっても関節変形を伴わないので、日常診療で頻繁に遭遇する非炎症性で関節変形を伴う変形性関節症とは区別されます。

 

SLEでは関節破壊のない関節変形(Jaccoud変形)がみられることがあります。またPSSなど他の全身性結合組織病と同様に、非びらん性多発関節炎を伴うことがあります。

 

<明日に続く>