11月8日 脳心血管病予防における慢性腎臓病(CKD)の考え方

5)CKDの経過・予後

 

軽度のアルブミン尿やわずかな腎機能低下が心血管病の危険因子となることが明らかにされましたが、一般の患者さんでこれを知っている人は限られています。

 

特に糖尿病を病原とするCKD患者は、末期腎不全よりも心血管病により死亡するリスクが高いです。

 

その理由としては、CKDと心血管病は危険因子を共有しており、またCKDに関連する合併症であるCKD-MBD(註1)や腎性貧血(註2)は心血管病の危険因子となります。 

      

CKD-MBD(註1)慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常

慢性腎臓病では様々な骨ミネラル代謝異常を伴ないます。

      

高リン血症を伴うCKD患者には、蛋白質制限を行なった後に、必要に応じてカルシウム非含有リン吸着薬で血清リン濃度を正常範囲内に管理します。

      

また高副甲状腺ホルモン(PTH)血症を伴うCKD患者には、活性型ビタミンD製剤の投与が推奨されています。杉並国際クリニックでも、高カルシウム血症を来さないようにモニターしながら、この治療法を行なっています。

      

骨粗鬆症を伴うCKD患者には、ビタミンD製剤、ビスホスホネート製剤その他による治療を行いますが、杉並国際クリニックでも、同様です。

 

      

腎性貧血(註2)

腎性貧血を認めるCKD患者には、まず鉄欠乏の有無を判定して、必要に応じて鉄を補充します。しかし鉄欠乏性貧血をとは異なり、腎性貧血の原因は、腎障害により、腎臓で生産される造血刺激因子であるエリスロポイエチン欠乏によるものです。鉄欠乏がなければ、赤血球造血刺激因子製剤を投与します。

      

杉並国際クリニックでは、少量の鉄剤補給で調整可能なケースしか経験していません。

 

<肝脳心血管病予防における慢性腎臓病(CKD)の考え方(完)>