5) 家族性高コレステロール血症(FH)
脂質異常症の中でも病因により甲状腺機能低下症やステロイド治療などに合併した続発性(二次性)脂質異常症では、原疾患の治療が優先されるべきです。
これに対して原発性脂質異常症の主たるものは家族性高脂血症(FH)です。
家族性高脂血症(FH)は、冠動脈疾患発症のリスクが極めて高いため、早期発見による厳格な管理が基本となります。
家族性高脂血症(FH)の診断は、15歳以上であることを前提として、
① 高LDLコレステロール血症(未治療時のLDL-C180㎎/dL以上)
② 腱黄色腫(手背、肘、膝など)やアキレス腱肥厚あるいは皮膚結節性黄色腫
③ FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)
以上の3項目のうち2項目以上が当てはまれば診断できます。
家族性高脂血症(FH)は脂質異常自体が高度であることに加え、若年期から発症することから、厳格な脂質管理が必要です。
生活習慣が原因ではないですが、生活習慣が良好でない場合はリスクをさらに高めますので、その是正を並行します。しかし、生活習慣の是正だけでは管理することができないため、薬物療法を用います。
治療指針としては、原則として、
① LDL-コレステロールの管理が最も重要であること、
② non-HDL-コレステロールの管理を二次目標とすること、
③ 脂質以外の動脈硬化危険因子も考慮すること、
が挙げられます。
経過観察時の脂質検査項目としては、原則として脂質値に加えて副作用のチェックのため肝・腎機能、CKなどの検査を行います。
原発性脂質異常症は生涯にわたる薬物療法が必要となることが多いです。
脂質異常症への治療は、短期間で終了することはなく、生涯にわたり継続することが重要です。
わが国では、欧米に比べて心筋梗塞発症率・死亡率が低く、治療に対する効果も比較的良好です。
その背景には、日本の食習慣が維持されていることによって動脈硬化性疾患の危険因子が欧米に比べて良好な状態で管理されてきていることが指摘されています。
治療においては、①できるだけ生活習慣の変容を促すこと、②薬物療法においては効果と安全性を考慮して、できるだけ薬剤数および投与量を減らすことがポイントです。
生活習慣の変容のためには、行動変容が前提ですが、その前提として認知の変容が求められます。
杉並国際クリニックでは、複数の生活記録表フォーマットを準備して、各人の目的にマッチしたチェック・シートにより、行動療法ないし認知行動療法を行なっています。
認知行動と運動療法をリンクさせたのが水氣道®であるということもできます。
水氣道®の実践継続によって、薬剤数および投与量を減らすことができた事例数は枚挙に及びません。
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