第5週:アレルギー・膠原病・血液病 10月29日(火)関節リウマチ診療の実際

2)関節リウマチの症状(全身・関節・関節外)

 

関節リウマチは運動器疾患であると同時に全身の内臓病であることを説明します。

 

関節リウマチは関節滑膜炎と骨・軟骨破壊を特徴とします。

 

関節リウマチでは頸椎病変を見逃さないことが大切です。そのポイントは頸椎のエックス線検査で環軸椎亜脱臼(AAS) と垂直性亜脱臼(VS)の有無を確認することです。AASの評価は環椎歯状突起間距離(ADI)の計測で行いますが、頸椎前屈位で確認すると明らかとなります。AAS,VSの症状としては後頭部痛をしばしば認め、めまいを生じることも少なくありません。そして、強い頸部痛が生じている場合は、頸椎前屈位での長時間作業は控えるように指導し、頸椎カラーの装着が勧められます。

 

関節リウマチは、様々な関節外症状を伴うことがあります。

 

大別して①皮下および滑膜下結節(リウマトイド肉芽腫)、②内臓異常、③全身性合併症および④血管炎のある例に合併する症状、に分類されます。

 

① 皮膚病変としては皮下結節(リウマトイド結節)が有名です。ただし、リウマトイド結節は皮下のみならず、心、肺、中枢神経などにも出現することがあります。

 

② 内臓異常としての障害部位は、心、肺、眼、神経系に分類されます。

 

心病変としては心膜炎が最多です。心膜炎の臨床症状は10%以下の患者にしか見られませんが、心エコー検査や剖検では半数近くに心膜炎を認めるとの報告があります。また僧帽弁閉鎖不全症は関節リウマチで最も頻度が高い弁膜症です。リウマトイド結節と病理学的に類似するため、関節リウマチ特有の可能性があるものとして心筋炎があります。

 

肺では胸膜炎、間質性肺炎、細気道病変、気管支拡張症、リウマトイド結節などがあります。

 

眼では、強膜炎(まれに穿孔性胸膜軟化症を合併)の他、若年性関節リウマチでは虹彩毛様体炎が代表的です。

 

神経系では、硬膜のリウマトイド肉芽腫など中枢神経の他に、末梢神経障害がみられます。末梢神経圧迫症候群として、手根管症候群(正中神経障害)、尺骨神経障害、腓骨神経障害が含まれます。また末梢神経炎を合併することがあります。特に下腿から足にかけての部位に好発するのが多発性神経炎による神経障害です。これは神経そのものの障害というよりは、小動脈を中心に生じる血管炎が原因であると考えられています。

 

③ 全身性合併症としてみられるのは、貧血、汎発性骨粗鬆症、フェルティ症候群、シェーグレン症候群、アミロイドーシスなどがあります。

 

④ 血管炎のある例に合併する症状には、発熱、指の動脈炎、レイノー現象、下肢の慢性潰瘍、末梢神経障害(多発性単神経炎)、出血を伴う胃腸管粘膜びらん、壊死性動脈炎(腸間膜、冠状動脈および腎動脈を侵す)を挙げることができます。このように、中・小血管炎を伴う関節リウマチは悪性関節リウマチと呼ばれます。既存の関節リウマチに血管炎やその他(火血管炎型)の関節外症状を合併し、難治性もしくは重症の病態と定義され、国の指定難病になっています。

 

 <明日に続く>