第4週:内分泌・代謝病・神経病 10月25日(金)脳心血管病予防のための血糖管理(管理目標を中心に)

5)薬物療法の開始と薬物の選択

 

糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法です。これを十分に行っても改善が不十分な場合があります。その場合には薬物療法を追加することを検討するというのが、日本糖尿病学会のコンセンサスです。

 

ただし食事療法や運動療法が不十分なままでは、薬剤をしても血糖降下は得られにくいです。また、薬剤によっては肥満が誘発されたりして、かえって治療が難渋することもあります。薬物療法併用の有無にかかわらず、食事療法や運動療法は一生継続する必要があります。

 

経口血糖降下剤は、現時点では7系統あります。それぞれの機序や特徴、禁忌、副作用を勘案した上で、個々の患者の病態や環境を考慮して選択する必要があります。たとえば肥満と強いインスリン抵抗性を伴う欧米人タイプではビグアナイド薬であるメトホルミンを第一選択薬とすることに合理的な根拠があります。しかし、わが国には、肥満を合併せずインスリン分泌不全が病態を特徴づけるタイプが多いため、こうした多様な病態に個別に対応する必要があるため、あえて第一選択薬はしていされていません。

 

薬物療法に際して特に注意すべき副作用の筆頭は、低血糖です。低血糖、とくに重症低血糖は脳心血管系のリスクを高めます。そのため、薬剤選択に当たっては、状態が許されるならば、単独では低血糖を起こす可能性が低い薬物から開始します。

 

<脳心血管病予防のための血糖管理(完)>