10月19日(土)慢性便秘症の漢方と鍼灸治療

漢方薬は、大腸蠕動運動の増加作用、腸管内の水分調節による便の軟化作用、便の滑りを良くする作用を併せ持ち、効率良く大腸通過時間を短縮させます。また大黄の含有量によって作用の強いものから弱いものまで種類が豊富にあり、そのため微調整しやすく、作用が緩慢で、副作用を起こしにくいという好ましい特徴を持っています。さらに、通常の便秘薬では対応不可の腹痛や腹部膨満感等の便秘周辺症状に対応できるメリットまで有しています。
     

そのため漢方薬の便秘治療の位置付けとしては、腹部膨満感や腹痛等の便秘周辺症状を合併した便秘患者や高齢者、他疾患併存の便秘患者、西洋薬による治療効果が不十分な患者の良い適応になります。

 

・枳実:消化管運動亢進作用

 

・当帰・麻子仁:潤腸瀉下

 

・芍薬:鎮痛・鎮痙

 

一方で、投薬上の注意点もあります。便秘の治療に有効な代表的な漢方エキス製剤の構成生薬の中にも副作用をもたらすものが含まれているからです。

 

・麻黄:交感神経刺激作用があり、不適切な量を服用すると、食欲不振、嘔気、血圧上昇ならびに動悸を生じることがあります。
     
・大黄:子宮収縮作用及び骨盤内臓器の充血作用により早期流産の危険性があります。そのため妊婦または妊娠の可能性がある方には投与しないことが望ましいです。

 

・甘草:偽アルドステロン症を生じないように注意を払う必要があります。

大黄甘草湯(一包中の甘草0.67g)、防風通聖散(一包中の甘草0.67g)、
桂枝湯加芍薬大黄湯(一包中の甘草0.67g)、桂枝湯加芍薬湯(一包中の甘草0.67g)、桃核承気湯(一包中の甘草0.5g)、潤腸湯(一包中の甘草0.5g)、調胃承気湯(一包中の甘草0.33g)