第1週:呼吸器・感染症:10月2日(水)現代の肺炎について

2)「成人肺炎診療ガイドライン2017」とは?

       
そもそも、このガイドラインが誕生した背景には、それまでの肺炎ガイドラインが現状に適合しなくなってきたことがあります。

 

以前は市中肺炎(CAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)ならびに院内肺炎(HAP)に分類され、それぞれごとの診療ガイドラインが作成され、抗菌薬療法が推奨されてきました。

 

しかし、これらの3種の診療ガイドラインの推奨に則った抗菌薬療法が必ずしも予後の改善に寄与しないことが判明したのでした。

 

 

新ガイドラインでは、わが国の診療実態に合わせた高齢者肺炎対策を重視して、上記の3つのガイドラインを統合する形で整理されたものです。

 

 

まず肺炎を市中肺炎(CAP)か否かで大別します。

市中肺炎でない肺炎は院内肺炎(HAP)および医療・介護関連肺炎(NHCAP)であり、その場合には、患者背景のアセスメントを行ないます。

 

具体的には誤嚥性肺炎のリスクの判断や疾患終末期や老衰状態の判断を行ないます。

これらに該当しない場合には、HAPではI-ROADシステム、NHCAPではA-DROPシステムで重症度判定を行い』最終的には治療薬を決定するか、もしくは個人の意志やQOLを考慮した治療・ケアを行うように推奨されています。

 

 

つまり、本ガイドラインは、NHCAP/HAP群において高齢者の易反復性(発症を繰り返しやすい)肺炎自体も老衰の過程で生じる人生の終末期における肺炎であると認識していることになります。

 

しかし、誤嚥性肺炎の定義自体が不明確であるばかりでなく、疾患終末期や老衰状態であるかどうかの判断はとても困難です。

 

 

いったい、このような診療ガイドラインがどれほど役に立つのでしょうか?

 

<明日に続く>