アルコール性肝障害
アルコール性肝障害は、常習飲酒家(エタノール60g/日以上)に発生する肝障害です。これは日本酒換算で3合/日に相当します。わが国の肝硬変の18%を占めます。
男性に多いが、女性はより少量(男性の2/3)で短期間の飲酒で重症化し、肝硬変への進展も早いことが知られています。
なおC型慢性肝炎の患者は少量の飲酒でも肝障害が進展しやすくなります。
飲酒に伴う低栄養だけでなく、肥満もアルコール性肝障害進展の危険因子であるため、過栄養に対する注意が必要です。
重症アルコール性肝炎は、連続飲酒発作など過度の飲酒をきっかけに発症し致死率は70%と高率です。
アルコールによる肝障害の原因の一つに、アルコールの代謝産物である、肝毒性をもつアセトアルデヒドの蓄積があります。
アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)により酸化されて無害な酢酸になりますが、日本人の約40%は代謝能の弱いALDH2*2の遺伝子多型を持っています。
この遺伝子をもつひとは、代謝能の高いALDH2*1/*1ホモと比較すると、より少ない飲酒量でも肝障害を呈します。
アルコール代謝酵素であるアルコール脱水素酵素(ADH)、チトクロームP450(CYP)2E1は、このALDHとともに、いずれも肝小葉の中心部(Zone3)に優位に存在するため、この領域での肝障害が強く現れます。
この領域は、元来、低酸素状態になりやすいため、微小循環障害や酸素消費の増大によって障害が起こりやすいことが知られています。
なお、アルコール性肝障害では、肝臓に過剰な鉄沈着がみられます。その機序は、トランスフェリン受容体の発現亢進およびヘプシジンの発現低下によると考えられています。
血清鉄の結合蛋白であるトランスフェリンとへプシジンは、いずれも肝臓で合成されます。トランスフェリンはトランスフェリン受容体を介して、肝細胞内に鉄を供給、蓄積する一方、へプシジンは腸管細胞における鉄取り込み蛋白であるフェロボルチンの発現を低下させることによって鉄蓄積には抑制的に作用するため、へプシジンの発現低下が鉄蓄積を促進する作用を強めることになります。
肝病変のそれぞれの段階に対する治療はウイルス性肝炎の治療と違いはありません。ただし、断酒を含めた生活指導を最優先にします。
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