水氣道における自主稽古の考え方―<創業は易し、守成は難し>の警句をもとにして―

<創業は易し、守成は難し

【読み方】創業(そうぎょう)は易(やす)く守成(しゅせい)は難(かた)し

 

 

【趣旨】《「貞観政要」論君道などから》新たに事業を興すよりも、それを衰えさせないように守っていくほうがむずかしい。

 

 

【解釈案】創業という働きは天の助けを受けることができた人物によって成されます。天の助けを受けることができた人物とは、天の助けを感受できる資質をもっている人物に他なりません。

ただし、そのために、そうした人物は、世俗社会においては、かえって幾多の艱難に遭遇することになります。そして、創業の使命を達成するためには、それらを避けて通ることはできません。

創業者は、こうした試練を乗り越え、世俗的な誘惑や妨害に打ち勝つことによってはじめて事業の基礎を築くことができるのです。

 

これ対して、後継者は、たとえ創業者によって選ばれた事業の功労者であったとしても、創業者が最初から一人で経験してきたような様々な苦難を味わうことはできません。

天の助けを受けることができなくとも、また創業者のような艱難辛苦の過程を経なくても、後継者の地位に就くことはできます。

そのような背景しかもたない後継者は、創業者が立ち上げた基礎の上に立つ事業を発展させるどころか、現状を維持していくだけでも精一杯になりがちです。

 

 

【教訓】後継者は、創始者の創業の歴史を振り返ってみることが肝要でしょう。そうすれば、天の助けを受けるとはどのようなことなのか、そして、天の助けを受けることができるようになるためには、どのような感性を磨き、心身の鍛錬を続けたらよいのかを学び取ることができるようになるでしょう。

 

水氣道の指導者になるために必要な心構えや修養の方法は、普段の稽古の流れの中に予め備わっています。そこには、誰にでも身に着けることができるような知恵が惜しみなく顕示されています。ただし、それを求めようとしない人には、その知恵が一向に見えてはこないことでしょう。

 

自主稽古は、水氣道の指導者を志すまでに至った方には必須の修行方法の一つであるといえます。

しかし、そこまでの段階に至っていない方は、なるべく公式稽古で精進していただくことが望ましいあり方である、ということを予めお伝えしておくことにします。

 

令和元年7月1日

 

日本水氣道協会 創始者 飯嶋正広