最新の臨床医学 6月23日(日)心療内科・統合診療科の実践

睡眠障害の治療戦術(3)

特殊な睡眠障害に対する薬物治療

 

1)概日リズム関連性不眠

生物時計の位相を変化させる目的で睡眠物質とされるメラトニンを用います。睡眠層に問題がある場合の不眠には、メラトニン受容体作動薬ラメルテオンの使用が適しています。また、通常では入眠困難が問題となることが多いため、超短時間型あるいは短時間型睡眠薬が使用されることもあります。

 

 

2)睡眠時無呼吸症候群(SAS)

患者本人は、ほとんどのケースで無呼吸に気づかず不眠のみを訴えます。

 

軽症から中等症のSAS患者の不眠治療では、睡眠薬を服用しても呼吸状態の悪化が生じないという報告があります。安全性が優れているラメルテオン(メラトニン受容体作動薬:ロゼレム®)やスボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ®)を用います。

 

重症例では、睡眠薬の影響を否定できないため、持続陽圧呼吸療法(CPAP)などで十分にSASの管理をしたうえでの睡眠薬投与が望まれます。

 

SAS患者はCPAP治療初期に睡眠薬を併用すると、より効率的なCPAP圧の設定と、その後の長期的なアドヒアランスの向上が期待できます。

 

このような場合は、通常では、マウスピース使用、鼻腔持続陽圧呼吸法、などに加えアセタゾラミドを用いて腎からの重炭酸イオン排出を促進することによって、代謝性に呼吸を促進させるなどの方法があります。

 

 

3)アルコール性嗜好品使用に伴う不眠

アルコールは睡眠導入には効果があるが、レム睡眠に影響し、また利尿作用もあることから、中途覚醒、早期覚醒の原因となることがあります。カフェインやニコチンなどの不眠の原因となる嗜好品とともに寝酒の習慣を修正するように勧めます。そしてアルコールを中止させたうえで中・長時間作用型の睡眠薬を使用します。

 

 

4)薬物による不眠

ステロイド、インターフェロン、ドパミン作動薬(パーキンソン病治療薬)、β遮断薬(血液脳関門を通過しやすい)で不眠をきたすことがあります。

 

また、テオフィリンなどのキサンチン系薬はカフェインと同様に覚醒作用があります。

 

 

5)その他の疾患に伴う不眠

①レストレスレッグズ症候群(RLS)

RLSでは、就寝時に「虫が這うような」むずむずした知覚異常のため、臥床していられなくなり、入眠困難や中途覚醒を示します。治療薬としてはクロナゼパム(リボトリール®)やプラミペキソール(ドパミン作動薬:ビ・シフロール®)、さらに本疾患に焦点を当てたガバペンチンエナカルビル(レグナイト®)が用いられます。

 

②周期性四肢麻痺

高齢者に多く、夜間片側または両側の足関節の背屈運動を主体とする周期的な不随意運動が反復して起こるものです。入眠直後の浅いノンレム睡眠のときに出現し、夜間前期から中期にかけて発生しやすいです。治療はクロナゼパム(リボトリール®)が用いられます。