最新の臨床医学 6月13日(木)リウマチ・膠原病・運動器疾患

第116回日本内科学会講演会は2019年4月26日(金)から28日(日)の3日間、名古屋で開催されました。未曽有の大型連休の前でもあるため、初日の26日(金)は出席せず、高円寺南診療所としての最終診療日としました。

 

しかし、4月26日(金)は、聞き逃したくない貴重な演題が目白押しでした。そこで、学会レジュメをもとに関節リウマチに関する重要なトピックを紹介します。

 

招請講演3.骨と関節の科学―関節リウマチの病態を中心に、免疫系が骨代謝系に及ぼす影響および免疫系の制御による治療のパラダイムシフトについてー(その2)

 

免疫系および代謝系の接点から関節破壊のメカニズム

 

関節リウマチにおける関節破壊は、関節滑膜組織で産生されるTNFやIL-6によるものです。TNFやIL-6は、関節滑膜からのマトリックスメタロプロテアーゼ等の産生および滑液中への放出を促し、滑液に浸っている軟骨表面の細胞間質を酵素分解してしまいます。

 

そこで、関節破壊の引き金となるTNFやIL-6を標的とするバイオ抗リウマチ薬は、滑膜細胞からの分解酵素の産生を抑制することによって、関節破壊を最小限にすることができます。

 

なお、骨組織は骨基質および骨細胞等から構成されます。破骨細胞は骨細胞に発現するRANKLによる刺激を受けると活性化して骨を吸収し、名称通りに骨組織を破壊してしまいます。一方、抗RANKL抗体は、骨細胞や骨芽細胞上のRANKLによる破骨細胞の成熟および活性化を刺激する骨粗鬆症薬です。また抗RANKL抗体は、滑膜細胞やT細胞に発現するRANKLによる破骨細胞の成熟を抑制する作用をもつため、関節リウマチの骨びらんの進行を抑制することができます。

 

 

経口JAK阻害薬による関節リウマチ治療の新展開

 

関節リウマチでは、すべての患者で寛解を目指すことが治療目標となりましたが、実際にはバイオ抗リウマチ薬を使用しても寛解導入率は3~5割です。バイオ抗リウマチ薬の分子量は巨大であるため注射が必要ですが、内服可能な低分子化合物であるJAK阻害薬は、標的型合成抗リウマチ薬という新たな範疇の治療薬に分類されます。すでにJAK3阻害薬(トファシチニブ)、JAK1/2阻害薬(バリシチニブ)は関節リウマチの治療に用いられています。

 

JAK阻害薬は低分子量であるため生物学的製剤とは異なり、細胞内のシグナル伝達を阻害し、マルチターゲット効果を有します。しかし、こうした特性が長期安全性に関する懸念材料でもあります。JAK阻害薬は経口薬であるため使いやすいのは確かですが、使用前のリスク・スクリーニングおよび治療中のモニタリングを徹底すべきであることから、入院設備を備え、全身管理を行なえる環境下で使用すべきだと考えます。