最新の臨床医学 6月6日(木)リウマチ・膠原病・運動器疾患

第116回日本内科学会講演会は2019年4月26日(金)から28日(日)の3日間、名古屋で開催されました。未曽有の大型連休の前でもあるため、初日の26日(金)は出席せず、高円寺南診療所としての最終診療日としました。

 

しかし、4月26日(金)は、聞き逃したくない貴重な演題が目白押しでした。そこで、学会レジュメをもとに関節リウマチに関する重要なトピックを紹介します。

 

 

招請講演3.

骨と関節の科学―関節リウマチの病態を中心に、免疫系が骨代謝系に及ぼす影響および免疫系の制御による治療のパラダイムシフトについてー(その1)

 

21世紀に入って、モノクローナル抗体等の免疫学的手法およびJAK阻害等の免疫学的新知見を臨床応用することが実現しました。その結果、難治性とされてきた関節リウマチ等の全身性自己免疫疾患の治療にパラダイムシフトがもたらされました。

 

現在の関節リウマチの治療は、免疫異常を抑制して疾患活動性を制御することを目的として、抗リウマチ薬を用います。

 

抗リウマチ薬は、メトトレキサート等の従来型合成抗リウマチ薬、TNFやIL-6、T細胞共刺激分子を標的とした生物学的製剤であるバイオ抗リウマチ薬に分類されます。

 

診療ガイドラインでは、診断されれば速やかにメトトレキサートで治療を開始し、治療開始後3カ月以内に改善がみられない場合、あるいは半年以内に目標である寛解に達しなければ、バイオ抗リウマチ薬等を追加することが推奨されています。

 

免疫系の不均衡を是正しないと、骨代謝系の不均衡を生じ、骨や関節の破壊を生じることもわかってきました。その結果、適切な治療を受けている全ての患者さんが寛解を目指すことを治療目標とすることになり、関節破壊や機能障害の進行が抑止できるようになってきました。さらに、寛解維持により、10年間に亘って身体機能障害が進行しないことが示されました。さらに、発症早期であれば、寛解導入後にバイオ抗リウマチ薬を中止し、ドラッグホリデーを目指すことも可能となってきました。

 

しかし、抗リウマチ薬には禁忌があります。そして、その重要な副作用として感染症が多いです。特にバイオ抗リウマチ薬の使用においては、特定の標的分子を制御することに伴う副作用に留意する必要があります。重篤な副作用のなかで最多なのは細菌性肺炎です。高齢、呼吸器疾患の既往ならびにステロイド薬併用は細菌性肺炎発症の危険因子です。このような症例には肺炎球菌ワクチンの接種を積極的に推奨すべきものとされています。また、結核やニューモシスティス肺炎等の日和見感染症等の重篤な副作用の危険因子も同定され、関節リウマチの治療においては、内科的な全身管理、予防ならびに治療が不可欠となっています。

 

 

<まとめ>

関節リウマチは、診断されれば速やかにメトトレキサートで治療を開始することが推奨されています。

 

そのためには、関節痛などの症状があれば、できるだけ早期にリウマチ専門医等を受診して、診断を受けることが最も重要です。

 

そして、もし治療開始後3カ月以内に改善がみられない場合は、バイオ抗リウマチ薬等をメトトレキサートに追加することが推奨されています。

 

改善がみられる場合でも、治療開始後半年以内に目標である寛解に達しなければ、やはりバイオ抗リウマチ薬等をメトトレキサート追加することが推奨されています。

 

杉並国際クリニックでも、早期にメトトレキサートでの関節リウマチ治療を開始しています。しかし、これまでバイオ抗リウマチ薬等を積極的に追加することはせず、その場合は、入院設備のある医療機関、とりわけリウマチ専門医の教育機関である病院と連携することにしています。

 

その理由は、抗リウマチ薬の重要な副作用として感染症が多いからです。特にバイオ抗リウマチ薬の使用においては、特定の標的分子を制御することに伴う副作用に留意する必要があります。