最新の臨床医学 5月24日(金)アレルギー・感覚器系疾患

アレルギーの検査

 

アレルギー反応の概要をつかむための検査には、IgE抗体検査、皮膚テスト、血中好酸球数などがあります。

 

 

IgE抗体検査

IgE抗体は、即時型アレルギー反応を引き起こす抗体です。一般的な、血液検査でアレルゲンに特異的なIgE抗体を測定することができます。

 

血液中に存在するIgE抗体の総量を示すのが血清IgE抗体値、非特異的IgE抗体値とよばれるものです。そのIgE抗体がどのようなアレルゲンに対して反応するのかを測定するのが特異的IgE抗体測定です。

 

現在200種類以上のアレルゲンに対する特異IgE抗体を測定することができます。測定値は、クラスという段階的に量をわかりやすく示す方法でクラス0~6まで7段階で示す方法がとられています。値が高い方がその特異IgE抗体の量が多いことを示していますが、ここで気をつけなければいけないことは、この値が高いからと言って必ずしも臨床症状と相関しないということです。

特に、食物アレルゲンでは、特異IgE抗体がある程度高くてもそのアレルゲンを摂取しても症状がでないことがしばしば経験されます。

 

アレルゲンによる感作の状況を診ている検査で診断の参考にしていると考え頂くのがよいようです。

 

健康保険の範囲内で測定できるアレルゲン数は、測定方法によっても異なります。主治医とよく相談して相談するアレルゲンを選びましょう。

 

 

皮膚テスト

皮膚の直下にいるアレルギーに関連する細胞に皮膚表面から直接アレルゲンを接触させることで反応を見る検査です。

 

IgE抗体が結合しているマスト細胞に、皮膚表面からアレルゲンを接触させ局所での反応がプリックテスト、スクラッチテスト、皮内テストです。このテストは、即時型アレルギー反応によってマスト細胞から放出されたヒスタミンによって周囲の血管が拡張することで皮膚の赤み、血漿成分の漏出で皮膚の盛り上がり(膨疹)がおこります。

 

このテストは、間接的に特異的IgE抗体の存在を示しているものなので、血液の特異IgE抗体の検査と同様にアレルゲンによる感作の状況を見ている検査なのですぐには診断をしません。診断の参考にしていると思ってください。

 

具体的な方法は、アレルゲンのエキスを1滴前腕部などにたらして、専用のプリック針、スクラッチ針を使用して、皮膚の表面に傷をつけます。皮内テストの場合は、1mLのシリンジを用いて、皮膚のごく表面に水疱をつくるようにエキスを注射します。15分後に判定しますが、赤く腫れていれば陽性です。

 

遅発型アレルギー反応を見る検査がパッチテストです。皮膚表面に、アレルゲンエキスのついたシールを貼りつけて48時間まで観察します。48時間後に貼ったシール部分が腫れていれば陽性です。この反応は、Ⅳ型アレルギー反応を見る検査です。

 

 

<補足説明>

アレルギー専門医として毎日診療しているのですが、皮膚テストなどを実施しなければならない機会はほとんどありません。それどころか、大学病院の皮膚科で実施したパッチテストによる皮膚の湿疹がいつまでも治らず、痒みで眠れなくなったという方の相談にのったこともあります。

 

アレルギー専門医としては、確定診断をするために厳密な検査を実施しなければならないこともありますが、検査のために、患者さんを苦しめる結果を招かないよう、細心の注意を要することは言うまでもありません。

 

私自身、プリックテストを自分で実験したことがあります。アレルゲン試液でないコントロール用の塩酸ヒスタミン液によって膨疹が出現し、しばらくの間、痒みが持続した経験があります。それ以来、皮膚テストに対しては消極的になりました。

 

ましてやこうした検査はアナフィラキシー・ショックという致死的な副反応の可能性もあり、たった1件であってもこのような事故は起こしてはならないと考え、慎重な姿勢で臨んでいます。