最新の臨床医学 5月20日(月)内科Ⅰ(消化器・肝臓)

第116回日本内科学会総会・講演会(ポートメッセ名古屋)

 

シンポジウム2:<GFR免疫チェックポイント>から

第2日目

2019年4月27日(土)9:00am~

 

2018年のノーベル医学生理学賞に、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)の開発につながった京都大学の本庶佑名誉教授が選ばれ、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬に関心が集まっています。「夢の新薬」という言葉で形容されるケースさえ見受けられます。

 

ヒトの免疫システムには、免疫応答を活性化するアクセル(共刺激分子)と抑制するブレーキ(共抑制分子)が存在します。新しい抗がん剤として注目されている免疫チェックポイント阻害薬ですが、実際の奏効率は約20%です。そのため有効例を見分ける診断法や無効例に対する治療法の開発が急がれています。副作用の発生が問題になっていますが、副作用が発現する症例の方が、かえって抗腫瘍効果が得られやすい

というデータもあります。

 

1)

免疫チェックポイントの機能とがん治療への応用

 

CTLA-4やPD-1等の共抑制分子は「免疫チェックポイント」として機能し、自己への不適切な免疫応答や過剰な炎症反応を抑制します。

 

CTLA-4はT細胞活性化初期に働く免疫チェックポイント分子で、主にリンパ組織における抗原提示を抑制し、T細胞活性化を抑制します。

 

CTLA-4抗体は抗腫瘍効果を発揮し、T細胞のブレーキ解除によりがん治療が可能になり、悪性黒色腫の治療薬として承認されました。

 

しかし、CTLA-4抗体では治らない病気があり、副作用が大きいという問題があります。また、転移を抑制できなければ、抗腫瘍薬としては役に立たないと考えられます。

 

PD-1はT細胞活性化後期に働く免疫チェックポイント分子で、主に炎症局所でキラーT細胞が標的細胞を攻撃する場面で作用します。がん細胞が標的なのではなくキラーT細胞が標的であるため、がんが変異しても効果が持続するという利点があります。PD-1抗体は、がん転移を抑制して、CTLA-4抗体よりも強力な抗腫瘍効果を示し、副作用が小さいという特徴が観察された。

 

 

2)

消化器がんに対する免疫チェックポイント阻害薬

 

免疫感受性が低いという問題を抱えたまま臨床試験トライアル中です。

 

食道がん:

扁平上皮癌(乞食タイプ)、腺癌(ブルジョワタイプ)

日本人の扁平上皮癌への奏効率17%、PD-L1陽性例では奏効率が高くなります。

 

胃がん:

標準治療の確立が困難な状況です。ニボリズマブ(PD-1阻害薬)、ペムブロリズマブいずれも奏効率11%です。EBウイルス関連のマーカーが注目されています。

 

隠れた治療選択バイオマーカーの発見が胃がんの治療に重要であるようです。二剤、さらに三剤の併用療法も調査中です。

 

大腸がん:

遺伝子プロファイルによって分類されています。MSI-Hタイプでのペムブロニズマブ奏効率は高く62%です。さまざまな併用療法が良好な成績を上げています。これに対してMMSタイプの大腸がんでは有効性が否定されています。

 

オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬は、現在のところ多くは再発や転移がある、手術できない例の生存率改善目的に使用される薬です。ですから、切除可能ながんを診断された人が、「オプジーボだけで治しましょう」ということはまずあり得ないということを,ぜひ知っておいてください。