最新の臨床医学 5月17日(金)アレルギー・感覚器系疾患

IgE抗体

 

IgE抗体は、即時型アレルギー反応をおこす大切な役者です。アレルゲンによる感作がおこると、そのアレルゲンにだけ結合することができる特異IgE抗体が形質細胞で産生されます。

 

アレルゲンが卵白であれば卵白特異IgE抗体、ダニであればダニ特異IgE抗体が産生されます。産生されたIgE抗体は、血液中を流れて、私たちの皮膚や粘膜のすぐ下にいるマスト細胞や、血液中を流れる白血球の一種である好塩基球の表面にくっつき、アレルゲンと出会うのを待っています。

 

アレルギーの血液検査で測定しているのが、このIgE抗体の量であり、現在200種類以上のアレルゲンに対する特異IgE抗体を測定することができます。測定値は、クラスという段階的に量をわかりやすく示す方法でクラス0~6まで7段階で示す方法がとられています。

 

値が高い方がその特異IgEの量が多いことを示していますが、ここで気をつけなければいけないことは、この値が高いからと言って必ずしも臨床症状と相関しないということです。特に、食物アレルゲンでは、特異IgE抗体がある程度高くてもそのアレルゲンを摂取しても症状がでないことがしばしば経験されます。

 

診断の参考にしていると考え頂くのがよいようです。

 

マスト細胞や好塩基球の表面にくっついている二つのIgE抗体にアレルゲンが結合し、2つのIgE抗体につながりができるとそのシグナルが細胞内にはいりマスト細胞や好塩基球が活性化してヒスタミンやロイコトリエンを放出する仕組みがあります。この物質によって即時型アレルギー反応による症状がおこります。

 

 

<補足説明>

 この解説のポイントは、アレルギーの血液検査で測定することが多いIgE抗体についての扱い方です。

 

現在200種類以上のアレルゲンに対する特異IgE抗体を測定することができますが、当クリニックでは、代表的なアレルゲンの検索のみ検査して診断の参考にしています。

しかし、この値が高いからと言って必ずしも臨床症状と相関しないことは良く知られています。

 

ただし、特異IgE抗体ではなく、総IgE抗体(非特異的IgE抗体)量はしばしば検査しています。慢性のアレルギー疾患の患者さんは、複数のアレルギーを合併しているいことが多いため、個別的なアレルゲンに対する特異的IgE抗体量を測定するより、いろいろなアレルゲンに対する個体全体の反応の結果、すなわち、治療がうまくいっているかどうかの経過観察の血清免疫学的な目安として総IgE抗体量の測定はなお有用であると考えております。