令和元年5月5日<杉並国際クリニック>事始め②

平成の30年間と共に歩み続けてきた高円寺南診療所の総括と、積み残してきた課題、そして令和とともに始める杉並国際クリニックの新たな役割と使命

3回シリーズ(2/3)

 

 

Ⅱ 平成時代30年間の未解決な先送り課題

それでは、未解決なままの国家的、しかも日常的な国民的課題とは何でしょうか。

 

私は、以下の3点を挙げるべきだと考えています。

1、少子超高齢化対策の立ち遅れ

2、大規模災害の原因追及の不徹底

3、国際化への対応の遅れ

 

以下、それぞれについて述べてみます。

 

 

1、少子超高齢化対策の立ち遅れ

平成の初年度には、すでに高齢者の医療費の更なる増大を予想できていたはずなのにもかかわらず、日本は予防医学を国策として取り入れてきませんでした。

 

厚生労働省の推計によると、年金を含む社会保障給付費総額(自己負担は除く)は、2025年に150兆円に迫る見通しで、社会保障制度を維持していくには給付と負担のバランスの見直しが喫緊の課題となっています!

 

日本では、医療や年金・介護などの財源となる「社会保障制度」は基本的に賦課方式を採用しています。これは、いま人口が減少している現役の若い人たちが一生懸命に払い込んだお金を、現在の肥大化した高齢者の医療に支給する仕組みです。そのため、少子超高齢化による人口構造の変化に伴い、この制度を維持できる社会保障費の確保が難しくなり、次代を担う若い人たちの負担が募るばかりです。

 

高円寺南診療所の反省点は、平成元年の開設以来、受診者の平均年齢が比較的若かったため、超高齢化社会を視野に入れた具体的な長期的事業計画を立てることなく30年を経過してしまったことです。往診を含む在宅医療や介護支援などの事業を展開することができる資金を調達することは叶いませんでした。

 

 

2、大規模災害の原因追及の不徹底

大規模災害には自然災害も人災も含まれますが、原因を徹底的に追求せず、抜本的な対策もなされずに問題を先送りしている間に、災害が再発したとしたら、それは自然災害であったとしても人災としての意味合いが大きくなります。

 

主だった企業の経営破綻も人災の要素が大きいです。日本人は、都合の悪い現象にはカタカナにして、当事者としての責任の関与から逃れようとする傾向があるので反省が進みません。

たとえば、バブル経済、リーマン・ショックなどのキーワードだけが独り歩きして反省と共に分析や考察が進んでいないのも大問題だと思います。

 

医療にとって身近な問題の例としては、禁煙やインフルエンザの予防接種などのトピックスです。これらは東京などの人口稠密な大都市で生活をする上では、私たち一人一人の生活者が意識を高めて実践できる必須のマナーであると考えます。

 

3、国際化への対応の遅れ

医療界もグローバルな視点を要する領域であり、かつ未来を見据えた視点からの改革にむかって、大胆に舵を切るべきでした。それが先延ばしされてしまったため国民の生活に直結する日本の医療の危機管理は致命的に立ち遅れてしまいました。

 

たとえば「健康保険証」の文字は、まったくもって欺瞞であり、「健康保険証」をもって有名病院に行けば健康になれるような錯覚を国民に与えてしまいました。私たちの手もとにある「健康保険証」はせいぜい「疾病保険証」にすぎません。

なぜなら、健康な人や、健康の維持増進や予防のためには「健康保険証」はまったく使えないシステムだからです。

 

その結果、残念ながら、未解決な重要な国家的課題を先延ばしにしたまま令和の時代を迎えるに至ってしまいました。

 

このように高円寺南診療所30年の歴史を振り返ってみても、大きな反省材料を見出すことができます。

 

反省点1)

「医療費・社会保障費の確保が危機的状況に」

」超高齢化社会が進むにつれて、これらの問題はさらに顕在化し、その結果、個人に責任が向けられることは必然です。それらを積極的に活用し、保険診療で足りない部分は、自ら補っていく必要があります。未だ多くの国民の危機感が希薄であることこそが大問題なのです。

 

反省点2)

「医療保険でカバーされない予防と治療」

予防医学という考え方については、日本の医療制度・医療提供者・患者の全てにおいて世界と遅れをとっています。これからは病院に行く前段階や、介護予防のための医療サービスが発展させざるを得なくなってくるものと考えられます。

保険医療に頼れないアメリカ医学会は「食」「ストレス」「運動」「環境」にフォーカスを当てた「ライフスタイル医学 」を推進しており、患者さんだけでなく医療者の教育にも力が入れられています。

 

保険が効かないのは「予防」に限った話ではありません。たとえば、国内に200万人以上と推定されている慢性の難治性(といわれている)線維筋痛症の患者さんは、根治できる可能性が高いのにもかかわらず、健康保険医療至上主義(保険外の医療に対する根拠のない疑念や偏見)のために長く苦しんでいる方が少なくありません。

 

保健医療システムの弊害の一つが、健康増進に対する自主的な投資努力を阻む結果を招いていることがあるのは確かです。

 

「自立」して「健康」に「長く」生きることを目的とすると、予防意識をあげる必要があります。しかし、これらの問題点から、今後は好むと好まぬに関わらず国民全員が「予防」を意識しなくてはいけない時代に入ってきています。

 

反省点3)

「世界一の寝たきり大国」

健康長寿は予防の賜物であり、病気になってからでは手遅れです。また、介護状態に至るまでの様々な予防サービスが各居住エリアに存在し、まさに「アクティブシニア」でいるための水氣道®や聖楽院などの画期的なサービスを創設し、充実させていく必要があります。

 

日本の医療制度や病院を過信した「病院に定期的に通っているから安心」という考えは捨てて、「自分の命は自分で守る」という意識を徹底し、自ら健康を守る対策を講じるべきでしょう。

 

公的医療保険や介護保険制度は早晩崩壊するので、病院で入院したり、要介護状態になって長引いたりすると、非常に高額な医療費や介護費用がかかる時代になりつつあります。そのため、予防意識を徹底し、可能な限り入院加療や要介護状態を未然に防ぐ、健康維持増進活動への積極的参加が望まれます。

 

今後は日本も、個人の責任が問われる時代となります。つまり、「自分の命は自分で守る」ことを皆が自認し、自分の健康を見つめ直すことを余儀なくされるのです。