高円寺南診療所は5月1日より、<杉並国際クリニック>に名称変更いたしました。

高円寺南診療所は杉並区高円寺南3丁目46番5号に立地しています。

 

<高円寺南>という地名を冠する医療機関を引き継いだ医師として、開院以来30年間、常に意識せざるを得なかったことがあります。

 

それは、地域への医療貢献でした。

 

24時間医療、往診、在宅医療、介護などすべての柱を確立することが達成できれば、地域医療として立派な責任を果たすことは可能だと思い、地域密着型のプライマリケアの確立に心がけていた時期がありました。

 

プライマリケアとは患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスです。

 

しかし、開院以来<高円寺南>診療所の受診者の圧倒的多数が現役世代でした。初期の受診者のほとんどは、家族や地域とのつながりも乏しい単身生活者で、かつ局所的症状に対しての応急的対応を望まれる方が多かったためです。

 

特に、午前中の受診者は開院初期には長期にわたり一桁台で夕方以降の時間帯に受診者が集中する状況でした。無料の禁煙指導なども努力すればするほど患者を遠ざける結果を招きました。その限られた夕刻以降の混雑時間帯に限って複合的で長期化した持病についての窮状を長々と訴える方が多数来院されるようになり、そのため待ち時間に耐えられない多くの患者さんを失いました。このようにして経営状態は一挙に暗転していきました。

 

もっとも、こうした経験がなければアレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医ばかりでなく心療内科専門医・指導医の資格取得し、より高度な医療水準の達成は果たせなかったと思われます。

 

このようにプライマリケアの実践のためには教科書的なひな形はなく、優れた指導者も皆無に等しいことを知りました。そして置かれた現場ごとに医師が自ら手探りで展開し、現場に必要な知識や技能は、そのつど貪欲に習得していかなければならないものであるという現実に直面しました。そこで自分なりの新たな方向性を模索する必要に迫られ、今日のシステムを展開していくことにしました。

 

そのお蔭で現実の困難から逃げず、避けず、誤魔化さず、ピンチの状況にあって、チャンスを生み出す技を学び続けるという姿勢を確立することができたことは感謝すべきことです。

 

最近の診療所の傾向としては、超高齢社会を反映してか高齢者さらには後期高齢者に達した皆様も徐々に比率を増しています。しかし、それでもほとんどの皆様が生涯現役を望み、私を生涯の主治医として選んでくださっています。

 

診療圏については、地元高円寺という貴重な方はごく少数で、23区内よりも都下をはじめ、千葉、埼玉、神奈川など近県から長期間定期通院されている方が多いことが特徴です。

 

 

生涯現役を目指したいという多くの患者の皆様の願いと私自身の健康維持の必要性が独自の「生涯エクササイズ」着想を得ました。そうして平成12年(2000水氣道が誕生しました。

 

水氣道の活動会員は現在何とか70余名を維持している状況です。発足以来20年近くを経過しているにもかかわらず会員が100名にも達していない理由は、水氣道の真価を伝えることが難しいからだと思います。

 

水氣道は、身体のコンディションを向上させるだけでなく、精神を涵養し、さらに芸術や学問的活動のための潜在的能力を引き出す効能を持っています。それは、多忙でストレスフルな毎日を送っている向上心に満ち溢れた方には特に有効です。

 

杉並国際クリニック(高円寺南診療所改め)や水氣道会員に御縁があるすべての皆様に水氣道をお勧めしたい理由がここにあります。

 

 

さて、現状としては、国際化を背景としてか外国籍の方の受診が顕著に増えて参りました。特にアジア圏からの皆様は知識層が多く、待合室でもお名前を伺うまでは余り目立ちません。また欧米圏の出身の方の増加も同様に顕著です。

 

こうした傾向とともに英語での診療の必要性は急激に増加しています。私がデザインする「生涯エクササイズ」とは体一つで実践できる全人的習慣をベースとしているのが特徴なので、水氣道の他、外国語学習、歌唱を併行しています。

 

水氣道によって人体を楽器(人生を楽しむ器、他者を幸福にできる器)化することで歌うことの素晴らしさを再発見し、特にクラシックの声楽は、イタリア語、ドイツ語、フランス語その他の外国語の歌詞を伴います。これが、平成27年(2015)発足の聖楽院の活動を生み、外国語診療を促進する契機となりました。

 

高円寺南診療所は、水氣道、聖楽院の誕生とともに当初のからの使命追及を終え、新たなる時代に向けての体制を整え、杉並国際クリニックが誕生します。院長である私自身が水氣道と聖楽院活動を継続発展させることによって生涯現役を確かなものとしていきたいと思います。

 

地域限定の母国語である日本語による従来のプライマリケア思想の呪縛から解放され、多言語による医療・保健・文化を統合するグローバルな創造的活動によって広く国際社会に向けて、皆様とともに楽しく有意義な貢献への第一歩を踏み出していきたいと思います。