アレルゲン

 

アレルギー反応を起こす原因となる物質をアレルゲンと呼んでいます。免疫学の言葉で抗原と呼ぶこともあります。

 

アレルゲンになり得る物は、その多くはタンパク質です。食物、ダニ、カビ、昆虫、ハチ毒、動物の皮屑、花粉、薬品、天然ゴムなどがあります。アレルゲンとなる物質は、はじめに私たちの体の中に入ってくると抗原提示細胞によりアミノ酸に配列によって形作られる立体構造が認識され、その形に合った特異IgE抗体が産生されるようになります。

 

多くのアレルゲンは、加熱処理や消化酵素によりその立体構造が変化してアレルゲンとしての活性が低下します。例えば卵白の多くのタンパク質は加熱処理で構造が変化して、卵白特異IgE抗体とは反応しにくくなります。しかし、ピーナツは、加熱ロースト処理でアレルゲンとしての活性が高まることがわかっています。

 

 

<補足説明>

一言でアレルギーといっても複数の型があります。もっとも代表的なのがⅠ型アレルギーです。そして、治療薬である抗アレルギー薬はⅠ型アレルギー反応に関与する化学伝達物質(ケミカルメディエーター)の遊離、作用を調節する薬剤、Th2サイトカイン阻害薬の総称です。

 

剤形としては、経口薬、吸入薬、点鼻薬、点眼薬など多様です。しかし、これらの抗アレルギー薬はすべて、症状をコントロールする治療薬であって、根治的治療法ではありません。

 

Ⅰ型アレルギーの根治療法には、アレルゲン免疫療法があります。これはIgE抗体が関与するI型アレルギー反応のアレルゲンを生体内に投与し、アレルゲンに対する過敏反応を軽減させようとする治療法です。

 

気管支喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、蜂毒アレルギー(保険応なし)に行われます。

 

アレルゲン免疫療法の施行法には、注射による皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)があります。

 

両者の臨床効果は同等ですが、アナフィラキシーなど生命の危険にかかわる全身性副反応はSLITの方が遥かに少ないです。そのため杉並国際クリニックが実施するアレルゲン免疫療法はもっぱら舌下免疫療法(SLIT)です。

今年の日本リウマチ学会総会・学術集会は、これまでの中で、もっとも大きな収穫がありました。それは、学術集会に先立つアニュアルレクチャーコースで最新の専門知識がアップデートできたこと、関節エコーライブ&ハンズオンセミナーといって、超音波検査の専門実習(参加者限定)で実践的なスキルアップができたこと、それに加えてMeet the Expertといって、特殊領域のエクスパートのレクチャーに続き、その講師を囲んで臨床に即した質疑応答(参加者限定)に参加でき、日常診療における専門的な課題の克服に大いに役立つ経験ができたからです。

 

そこで今月の木曜日のシリーズは4月14日(日)に開催された日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーの内容を、講義録のメモ〔講義録メモ〕をもとに要点を少しでもわかりやすく<まとめ>皆様にご紹介することにいたします。

 

アニュアルコースレクチャーは、2006年より、日本リウマチ学会の学術集会に併せて開催されています。リウマチ学会の中央教育研修会の中心となる7つの講演で、丸一日をかけて1年分のリウマチ医学の最新情報を得ようとするものです。

 

昔から難病とされてきた関節リウマチではありましたが、日進月歩の医学の発展により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールも充分に可能な状況となりつつあります。そして、寛解状態を目指すことが現実的な治療ゴールになってきました。
とりわけ、関節リウマチの薬物療法の進歩は大学病院のみならずリウマチ専門医が勤務する地域のクリニックで高度な対応ができる時代になってきました。しかし、そこで重要なことは、やはり、早期に診断し、速やかに治療を行うことです。

 

医師免許や博士号などの学位とは異なり、専門医のタイトルは、常にアップデートな情報に触れ、新しい知識を取得しておくことが必須の条件になっています。また、社会環境の変化も重要です。なぜなら、社会が医療に求める内容は、日々めまぐるしく変わって、より高度で有益で安全なものが求められていくからです。それについても、絶えずアップデートされた知識や技術が求められていることを実感しています。

 

 

〔講義録メモ〕

<日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーのリポート⑤>

 

4月14日(日)


15:20~16:20

 

ACL7:高齢者関節リウマチの治療のコツ

 

演者:杉原毅彦(東京医科歯科大学生涯免疫難病学)

 

高齢者の定義:

75歳以上(歩行速度、握力)

フレイリティ(身体的虚弱)
1.体重減少
2.歩行速度低下
3.易疲労感
4.筋力(握力)低下
5.低活動

フレイリティ(身体虚弱症)3つ以上
プレ・フレイリティ(身体虚弱前症)1または2
ノン・フレイリティ(身体機能正常:非身体虚弱)該当なし

 

フレイルは可逆性のステージがあるので、不可逆性のステージに移行しないうちに発見し、支援する

 

 

関節リウマチ
1) 高齢者の有病率増加
2) 発症年齢のピーク60歳
3) 高齢者では急性発症例、関節破壊急速進行例、大関節型が多い

 

関節リウマチの治療目標
1) 疾患活動性のコントロール
2) 関節破壊振興抑制
3) 身体機能改善(仕事や趣味の継続)
4) 長期的予後の改善
5) 高齢者では身体的な虚弱(フレイル)の進行防止
6) 健康寿命の延長

 

高齢者関節リウマチの特徴と留意点:
病態の複雑化
合併症の増加
加齢に伴う変化
動脈硬化、心疾患、脳卒中、肺疾患、骨密度低下、変形性関節症、
認知機能低下、抑うつ、
サルコペニア、生理機能低下、免疫機能低下

 

高齢者関節リウマチ患者の薬物療法の注意点:
メトトレキサートを中心とした治療を実践しないと、副腎皮質ステロイド併用による関節破壊進行抑制効果は期待できない

 


TNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプトにおいて、高齢者関節リウマチと非高齢関節リウマチの治療反応性は同等である。
リウマチ性多発筋痛症との鑑別が難しい例がある。
末梢関節症状のある症例の50%が一年後に滑膜炎を伴ってくる。

 

予後不良因子
ACPA、疾患活動性

 

 

 

<まとめ>
このレクチャーは、関節リウマチに関するものではありますが、「高齢者」診療全般にとって有意義な内容でした。

 

75歳以上を高齢者と定義する流れができつつありまが、加齢に伴い個人差は拡大していきます。ですから、75歳以上を一括りに高齢者と定義するならば、75歳未満であれば、どれほど老化が進んでいても非高齢者ということになってしまいます。

 

個人差というバラツキを無視した平均値的な定義は、実臨床上は有害でさえあります。なぜなら、老化対策は75歳になってからでは遅きに失することがほとんどだからです。

 

他方においては、今月16日、政府の大綱で、政府は70代に占める認知症の人の割合を、2025年までの6年間で6%減らすとの数値目標を公表しました。現役世代の減少や介護人材の不足、社会保障費の抑制に対応するために認知症の予防促進を掲げており、その一環として初めて数値目標を設定したものです。しかし、これには確かな医学的裏付けがありません。これとて70歳になってからの認知症予防では、とうてい数値目標を達成することは不可能でしょう。

 

それでは、私たちはどのような心構えと対策を持ったらよいでしょうか。
それは、まずフレイル(身体的虚弱)対策です。基本は、歩行速度と握力です。歩行速度は、意識さえしていれば、他者と比べることができるでしょう。若い人たちと比べたり、同年配の人たちと比べたりしてみることも有意義です。また、定期的に握力を測定し、数値データとして記録を残しておくとよいでしょう。

 

杉並国際クリニックでは3カ月に1回のフィットネス・チェックを推進しています。それによって四季ごとの体調の変化を観察することができます。握力は全身の筋肉のパワーを反映することが知られています。

 

また知らず知らずのうちに身体的虚弱に陥っていないかどうかのチェックを定期的に行うことによって、有効な対策を講じることができます。体重の測定も重要な項目の一つです。

「最近、疲れやすくなった」といった主観的な症状もフレイルを評価するための重要項目です。

 

なお、関節リウマチは、若い女性でも発症しますが、60歳にもピークがあります。関節リウマチと診断されることによって、早い時期からフ適切なフレイル対策を始めることによって、長期的にて、一般の方より良い予後を得ることも不可能ではありません。
水氣道に参加している関節リウマチの方のお話を聞いていただければ、それが確かであることがわかるでしょう。

糖尿病患者の腎症進行の原因物質を同定、新たな治療法に(その2)

 

東北大学病態液性制御学分野の阿部高明教授らの研究によって、糖尿病性腎臓病の原因物質としてフェニル酸が脚光を浴びています。

 

その結果、腎臓病を起こしやすい糖尿病患者において、フェニル硫酸を測定してリスクの程度を予測し、原因となるチロシンをあまり含まない食事にするといった食事指導をしたり、チロシン・フェノールリアーゼ阻害薬を投与してフェニル硫酸の産生量を減らすといった治療戦略が考えられます。

 

それでは、腎臓病を起こしやすい糖尿病患者において、原因となるチロシンをあまり含まない食事にするといった食事指導のためには、どのような基礎情報が必要なのでしょうか。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

慢性腎臓病(CKD)や糖尿病性腎臓病(DKD)の方は、原因となるチロシンをあまり含まない食事にするとよいということはわかりました。

 

しかし、それだけでは実際的なアドバイスにはなりません。実臨床においては、「原因となるチロシンをあまり含まない食事にする」という指導はしません。そのかわりに「チロシンを多量に含む食物を控えてください」という指導をしたうえで、具体的な食材を挙げていくのが親切であると思います。

 

 

チロシンを多く含む食品(含有量/100gあたり)は、

◆高野豆腐 3,000mg、◆チーズ 2,600mg、◆鰹節 2,600mg、

◆大豆・きな粉 2,000mg、◆落花生 1,100mg、◆アーモンド 580mg

 

鰹節を大量に摂取することは少ないとおもわれますが、体に良いとされる健康食である大豆製品(高野豆腐、大豆・黄な粉)などがチロシンを多く含むんでいることは注目に値します。

 

そもそも、チロシンは、アミノ酸の一種で芳香族アミノ酸の一つです。フェニルケトン尿症、睡眠不足、うつ症状(うつ病)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などに効果があるとされていますが、糖尿病や腎臓病の患者さんでは控えるべき食品ということになってしまうので注意を要するところだと思います。

 

朝食を全く食べないと、毎日食べる場合よりも心血管死のリスクが高い(J Am Coll Cardiol誌2019年4月30日号)

 

 

朝食を抜くことが、心血管死や総死亡のリスク上昇と関連するかが米国で検討された。 

 

背景:

朝食は1日の中でも重要な食事と考えられているが、朝食を抜くことの健康上の影響に関する研究は少ない。エビデンスは不十分であるが、朝食の欠食は、過体重/肥満、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、冠動脈心疾患、脳血管疾患のリスク上昇と関連することが示唆されている。

 

目的:

本研究では、米国の全国代表コホートで、朝食の欠食と心血管死、総死亡との関連を検討すること。

 

対象:

米国全国健康栄養調査(NHANES)III(1988~1994年)の参加者6550例(40~75歳、平均年齢:53.2歳[標準誤差:0.3]、48.0%が男性)

 

方法:

本研究では、前向きコホート研究で、朝食の摂取頻度に関する情報は面接調査で収集された。「どのくらいの頻度で朝食を食べるか?」という質問に対する回答を「全く食べない」、「たまに食べる」、「時々食べる」、「毎日食べる」の4つのカテゴリーに分類した。

 

心血管死を心疾患または脳血管疾患による死亡をエンドポイントとした。死亡の判定には、2011年12月31日までのNHANES III Public-Use Linked Mortality FileとNational Death Indexのデータを用いた。

 

朝食の摂取頻度と心血管死および総死亡との関連は、Cox比例ハザード回帰モデルで検討した。

 

結果:

共変量は、年齢、性別、人種/民族、婚姻状態、世帯所得、喫煙状態、飲酒、身体活動、総エネルギー摂取量、健康食指数(Healthy Eating Index-2010)による全体的な食事の質、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症だった。

 

6550例のうち、朝食を全く食べないと回答した参加者は5.1%(336例)、たまに食べる参加者は10.9%(713例)、時々食べる参加者は25.0%(1639例)、毎日食べる参加者は59.0%(3862例)だった。

 

11万2148人年の追跡期間中(追跡期間中央値:18.8年、最長追跡期間:23年)、2318例が死亡し、そのうち619例が心血管死だった。

 

朝食を全く食べない参加者は、心血管死のリスクが高かった。全ての共変量で補正したところ、朝食を毎日摂取している参加者と比較して、朝食を全く食べない参加者の総死亡のハザード比(HR)は1.19(95%信頼区間[95%CI]:0.99-1.42)、心血管死のHRは1.87(95%CI:1.14-3.04)だった。

 

また、朝食の摂食頻度と心疾患による死亡および脳卒中による死亡との関連を別々に検討した。全ての共変量で補正した結果、朝食を毎日食べる参加者と比較して、朝食を全く食べない参加者の心疾患による死亡のリスクは有意ではなかったが(HR:1.59、95%CI:0.90-2.80)、脳卒中による死亡のリスクは有意に高かった(HR:3.39、95%CI:1.40-8.24)。

 

考察:

先行研究と同様、今回の研究でも、心血管の健康を促進し、心血管疾患の罹患と死亡を予防する簡単な方法として朝食をとることの重要性が明白に示された。

 

また、朝食の欠食がどのように心血管代謝の異常を引き起こし、最終的に心血管死へとつながるのかを説明しうる機序として以下のものを挙げている。

 

(1)朝食の欠食は、食欲の変化や満腹感の低下と関連し、これはその後の過食とインスリン感受性の障害へとつながる可能性がある。

 

(2)朝食の欠食は、絶食の時間が長くなるため、視床下部-下垂体-副腎系の、ストレスとは無関係の過活動と関連し、朝の血圧上昇につながる。朝食の摂食は、血圧を低下させる助けになることが報告されており、それにより血管の閉塞、出血、心血管イベントが予防される可能性がある。

 

(3)朝食の欠食は、例えば総コレステロールやLDLコレステロール濃度の上昇など脂質濃度の有害な変化を誘発する可能性がある。

 

結語:

米国の中高年集団を長期にわたって追跡した今回の前向きコホート研究により、朝食の欠食が心血管死のリスク上昇と関連することが示された。今回の結果は、心血管の健康促進において朝食をとることのベネフィットを支持するものだった。

 

 

論文:

Rong S, et al. Association of skipping breakfast with cardiovascular and all-cause mortality.J Am Coll Cardiol. 2019:73:2025-32.

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

朝食抜きダイエットを推奨する医師もいますが、日頃、朝食摂取を進めている私には理解できない理論を展開していました。今回の米国の研究は、朝食摂取の意味をこれまで以上に明らかにしてくれました。

<膝の痛みにーお灸をはじめます>

 

 

これから梅雨の季節になり、冷房などにより体が冷え膝が痛むことがあります。

 

 

そのような時には、灸による温熱療法が有効です。

 

 

6月より、膝の痛みのためのお灸療法を始めます。

 

 

お灸をしながら座位で膝の曲げ伸ばしの運動をすることによって痛みを緩和していきます。

 

 

また、お灸療法を覚えると

 

 

1.自分でツボにお灸をすることにより、自分で治療できるようになります。

 

 

2.他の疾患に効果のあるツボを覚えれば、それらの治療も自分でできるようになります。

 

 

膝の痛みに悩んでいる方はがまんせずに早めにご相談くださいますようお願い申し上げます。

 

 

<料金>

灸のみ1回20分ー3240(消費税込み)

 

鍼治療+灸    1回60分ー6480円(消費税込み)

 

<ある日の出来事>

クリニックを悩ませた2件の出来事を紹介いたします。

 

 

昼下がり、

代理の方が来られて

「すぐ近くなので往診に来てほしい。」

という申し出がありました。

 

当院は高円寺南診療所時代から、往診は行っていません。

その旨をお伝えし、東京都医療機関案内の「ひまわり」を紹介しました。

 

代理の方から少し後に電話がきました。

 

「前に診てもらったことがある。」

「動けないから往診に来てほしい。」

とのこと。

 

前といっても、27年前で、もう診療記録もありません。

現在までの状態が把握できません。

(カルテの保管義務は5年間となっています)

 

それにすぐ近くで動けずお越しになれないようなら、直ちに救急を呼んだほうがよいとお伝えしたら電話が切れました。

 

 

別の日。

半年ぶりに来院された方がいました。

 

「紹介状がほしい。」とのことでした。

 

お話を伺うと、

「半年前までこちらで診ていたものと関連する検査を受けたいから、紹介状が欲しい。」

 

「紹介状がないと大きな病院だとお金がかかるから。」

とのことでした。

 

調べてみると受けたい検査の病名はありましたが、治療していた病気と「関連がある」とはその方の思い込みのようでした。

 

半年間受診も無くさらに別件のため、初診になります。

ですので直ちに紹介状は書けません。

 

そのように伝えすると、「診察受けるのを止めます。」

と言って去っていかれました。

 

 

いかがだったでしょうか?

皆様のご意見、ご感想をお待ちしております。

<今月の論点:リウマチ膠原病診療の盲点>

―心療内科指導医・専門医 兼 リウマチ専門医 の立場からー

 

④ NPSLEのマネジメントについて

 

NPSLEについてどのようなマネジメントが推奨されているのでしょうか。

 

急性期:

つまり活動性のNPSLE(身体症状のみならず神経精神症状が前面に出現しているSLE)であれば、強力な免疫抑制を要するのみならず、抗精神薬による対症療法も必要となってくることでしょう。その場合の薬剤選択は「症候群診断」に基づいて行うことが推奨されています。

 

しかし、NPSLEの急性期の精神症状(サイコーシス)は基本的にはストレス反応性ではないので、原因検索の上でストレッサーのみを追求してしまわないことが求められます。

 

 

慢性期:

膠原病患者は慢性疾患であるため様々な心理社会的な問題が生じやすく、これに起因したストレス関連性の精神症状(抑うつや不安)をしばしば伴います。この場合は、心身医学・心療内科学的なストレス・マネージメント、支持的精神療法なども必要になってきます。SLEの認知機能障害は軽症のものが多く、認知症に至っていないものが多いです。

 

NPSLEばかりでなく線維筋痛症の患者さんの多くも、同様の苦悩を背負っています。杉並国際クリニックがより積極的に貢献すべき統合医学的領域は、まさに、こうした現代医療のピットホールに重なる部分であると思われます。

<(鍼灸)東洋医学の話をしようー 経絡(2) 肺経 >

 

 

<はじめに>

 

 

前回経絡の種類と経穴の数についてお話しました。

 

 

今回から「経絡」と「経穴」の話をしていきましょう。

 

 

まずは「肺経」から見ていきましょう。

 

 

 

<肺経>

1肺経

 

 

 

「肺経」は胸部から始まり母指の爪の生え際までのびます。

 

 

11個の経穴があります。

 

 

11個の経穴は

 

1.中府(ちゅうふ)

 

2.  雲門(うんもん)

 

3.天府(てんぷ)

 

4.侠白(きょうはく)

 

5.尺沢(しゃくたく)

 

6.孔最(こうさい)

 

7.列缺(れっけつ)

 

8.  経渠(けいきょ)

 

9.太淵(たいえん)

 

10. 魚際(ぎょさい)

 

11. 少商(しょうしょう)

 

 

です。

 

 

主に、喘息、喉の痛み等、呼吸器系疾患によく使われます。

 

 

私がよく使う経穴は

 

 

「尺沢」「孔最」です。

 

 

「尺沢」は 「鼻炎」で鼻汁が出る、鼻閉、「喉の痛み」によく使います。

 

 

「孔最」は鼻炎の症状が更にひどいときによく使います。

 

 

とても効果があります。

 

 

 

また、「孔最」は「痔の痛み」によく効くそうです。

 

 

学生時代にM先生が話していました。

 

 

痔の痛みで座れなくなった妊婦に灸をして痛みを取ったそうです。

 

 

試してみたいのですが、その機会は訪れません(笑)。

 

 

 

最後に「尺沢」「孔最」の部位をお伝えしましょう。

 

2019-05-23 19-09

 

 

「尺沢」は上腕二頭筋(力コブの筋肉)の腱の親指側にあります。

 

 

「孔最」は「尺沢」から指4本(人差し指~小指)下にあります。

 

 

鼻炎でお困りの方ぜひ刺激してみてください。

 

 

楽になりますよ!

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

When bad humours afflict an individual with a rash on his entire body, one should wait awhile until the abscesses mature and the humours are discharged. When the skin between the abscesses turns red and begins to dry out, a suitable salve should be applied without delay. In this way, the skin will not become more painful through the infection and will not relapse into sepsis. (CC154,33)

 

悪い体液をもつ人は全身性の発疹に苦しみますが、そのひとは膿瘍が熟してその悪い体液が排出するまでのしばらくの間待たなければなりません。膿瘍間の皮膚が赤くなって乾燥すると、遅滞なく適切な膏薬を塗布すべきでしょう。このように、皮膚は感染によって痛みが増すことはないであろうし、敗血症にまで陥ることにはならないでしょう。

 

 

<解説> 

聖ヒルデガルトの皮膚を通しての治療理論は、現代にも通用するとても傑出した役割をもっています。聖ヒルデガルトが考えていた悪い体液とは何か、ということはとても興味深い内容を含んでいるように思われます。

 

聖ヒルデガルドの時代にはウイルスはおろか細菌を直接調べる顕微鏡などは開発されていなかったにもかかわらず、感染症の概念をもっていたことには驚かされます。

 

一般的にいって、膿瘍を形成するような発疹は感染性のものが主ですが、栄養関連の代謝毒、皮膚アレルギーを引き起こすアレルゲンなども悪い体液に含まれている可能性があります。なお、敗血症とは、細菌等が血流に乗って全身性に散布されておこる重篤な病態です。

 

聖ヒルデガルトは、こうした悪い体液により全身に発疹が出現しても、膿瘍形成という自然治癒の過程を待つことが大切であり、そのうえでタイミングよく適切な軟膏処置をすれば、悪い体液が血液中に流れこむことが防げると考えていたようです。