最新の臨床医学 4月22日(月)内科Ⅰ(消化器・肝臓)

日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

 

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、NASH・NAFLDの診療ガイド2010 を採り上げることにしました。

 

Q&Aをご紹介した後、杉並国際クリニックの立場からにて、解説を加えてみます。

 

 

Q4

NAFLD/NASHになるメカニズムは?

 

A4 

肝臓は、腸で消化・吸収したさまざまな栄養素を取り込んで分解したり新たに合成したりして、バランスよく全身に供給する大事な役割を担ってくれます。食事でとった糖分は、通常はグリコーゲンとして肝臓に一時的に貯蔵されますが、過剰な糖分は中性脂肪に変換されて肝臓にたまります。食事で余分にとった脂肪分はもちろんのこと、蛋白質が分解されてできるアミノ酸も過剰な分は脂質に変換されます。

 

食べ過ぎや運動不足などのために食事でとったカロリーが消費量を上回ると、肝臓で中性脂肪が多く作られ、脂肪肝となります。

 

また、肥満の人では血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなり(これを“インスリン抵抗性”といいます)、このことによっても肝臓で中性脂肪をたくさん作るように促されます。

 

一方、同じ食事や運動をきたしていても、太りやすい人とそうでない人がいるように、肝臓への脂肪のたまりやすさも体質によって異なります。最近の研究では、脂肪肝になり易い遺伝的素因として、「PNPLA3」などの遺伝子の型が関係していることがわかってきました。また、栄養障害による極度のやせや、医薬品の副作用などで生じる脂肪肝もあります。脂肪肝になると、過剰な栄養素を分解してエネルギーに変える(燃焼する)ときに、活性酸素などの有害な物質が多くできる“酸化ストレス”という状態を引き起こし、肝細胞が傷ついてしまいます。このため、NASHの患者さんでは、酸化ストレスを防ぐ抗酸化剤が治療に有効だと考えられています。

 

また、NASHには腸内細菌のバランスの変化や免疫系の反応なども影響しており、肝臓で炎症が強まって線維が増えることで肝硬変へと進行する過程だけでなく、肝癌を発症するステップにも重要な役割を果たしていることが明らかにされつつあります。

 

 

杉並国際クリニックの立場から

NAFLD/NASHとは、まず肝臓の病気であること、この病気は肝臓に中性脂肪が蓄積することによって起こる脂肪肝がスタートであることがポイントです。

そして脂肪肝になると、過剰な栄養素を分解してエネルギーに変える(燃焼する)ときに、活性酸素などの有害な物質が多くできる“酸化ストレス”という状態を引き起こし、肝細胞が傷ついてしまうことで病気が進展していきます。

 

ここで、脂肪肝について補足説明をします。脂肪肝には、肥満や糖尿病に伴う過栄養性とアルコール性があります。NAFLD/NASHは過栄養性の脂肪肝から発展したものです。脂肪肝の発症は、肝臓が発する生活習慣に対するイエローカードであり、動機付け面接法などを取り入れて患者教育と生活指導を十分に行うことが大切です。

 

なおNASHの患者さんの治療では食事と運動による体重の減量が基本なので、可能であれば水氣道®など医学的に適切に管理された有酸素運動をはじめることをお勧めします。このようなNASHの患者さんには酸化ストレスを防ぐ抗酸化剤が治療に有効なので、ビタミンEやウルソデオキシコール酸を処方して改善を図ることがあります。また、糖尿病を併発されている方には、インスリン抵抗性改善薬などの有効性が報告されています。