最新の臨床医学 4月4日(木)骨粗鬆症についてQ&A

ここで掲載する内容は、公益財団法人 骨粗鬆症財団のホームページから引用したものです。骨粗鬆症についてわかりやすい解説をしています。

HPで確認することができます

 

骨粗鬆症は、長年の生活習慣などにより骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。最初は、自覚症状はありませんが、ひどくなると骨折を起こし、寝たきりの原因となる場合もあります。多くは腰や背中に痛みが生じて医師の診察を受けてからみつかります。しかし、骨粗鬆症になってから治すのはたいへんです。骨粗鬆症にならないように、日ごろから予防を心がけることが大切です。骨粗鬆症を予防することが、ほとんどの生活習慣病を予防することにつながります。そのために、高円寺南診療所では女性では、45歳以上、男性でも50歳以上の皆様に骨量計測を推奨し、骨年齢を算出し、骨粗鬆症の早期発見、早期対応に力を注いでいます。それでは、骨粗鬆症についてもっと詳しく勉強していきましょう。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

それぞれのQ&Aのあとに【杉並国際クリニックからのコメント】を加えました。

 

 

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Q12 

カルシウムの摂取量が少なかった時代よりも、現代人の骨が弱いのはなぜ?

 

A

昔の日本人は、カルシウムを1日に400mg以下しか摂取していなかったとききましたが、現代人よりも骨は強かったはずです。カルシウムだけを摂取しても骨は強くならないと思いますが、いかがでしょうか。

 

また、カルシウムを摂取する場合、日本人は「乳糖不耐性」の人が多いため、牛乳を飲むよりも、昔から食べてきた大豆製品や、小魚、海藻類をとる方が安全ではないでしょうか。

 

昔と現在の日本人の骨の強さは正確に比べられませんので、「現代人の方が骨が弱い」と断定はできませんが、確かに、子供の骨折が増えているなどの報告はあります。骨の強さや骨折の危険度は、運動で養われる筋力や平衡機能などが関係しているので、運動不足や、栄養過剰による肥満が骨を弱くする原因になっている可能性もあります。

 

なお、カルシウムの吸収率は、総カロリーやタンパク質の摂取量が関係しています。タンパク質をとりすぎると、尿の中にカルシウムを排出するため、高カロリー、高タンパクの食事でカルシウムを大量に摂取しても、昔の一般的な食生活ほど吸収率は高くないかもしれません。

 

牛乳はタンパク質や、大量に摂取するとカルシウムの排出を妨げるリンを含んでいるため、理想的なカルシウム補給源とは言えない部分もありますが、カルシウムを手軽に摂取できる食品であることは確かです。例えば、大豆製品や小魚、海藻などは、単位重量あたりのカルシウム量は多くても、一度に大量に食べられないため、カルシウムの総摂取量を上げるためには、牛乳を含めたバランスの良い食事が欠かせません。

 

 

【杉並国際クリニックからのコメント】

公益財団法人骨粗鬆症財団が、このような思い込みと決めつけの甚だしい素人の質問を律儀に受けて、ホームページで誠実に回答しよう姿勢に学ぶことは少なくありません。このような質問を投げかけてくる患者さんに、納得がいくような説明をすることは容易ではありません。

 

それでは、この質問者が、昔の人より<現代人の骨が弱い>と確信するに至ったのには、理由があって、その過程を想定してみることも、ときには必要かもしれません。

 

子供の骨折が増えている報告がありますが、骨折が増えている原因を骨が弱いからだと決めつけるのは早計だと思います。部活動をしている子供の方が、しない子供より骨折が多いという報告があるからです。子供は部活動をすると骨が弱くなるということではなく、単に骨折する機会が増えるからと考えることも可能でしょう。そのように考えると、骨粗鬆症財団の回答は質問者に寄り添ってはいますが、それがかえってアダとなって的外れのコメントになっている可能性があることを指摘しておくべきでしょう。

 

質問者は、また<昔の日本人は、カルシウムを1日に400mg以下しか摂取していなかったとききましたが、現代人よりも骨は強かったはずです。>と、更なる断言を重ねています。<昔の日本人は、カルシウムを1日に400mg以下しか摂取していなかった>という不確かな伝聞情報をもとに、無理やり<昔の日本人は、現代人よりも骨は強かったはずです。>という結論に結び付けているようです。これも素人の患者さんにありがちな論理の飛躍です。

 

まず、昔の日本人とはいつの時代の日本人のことでしょうか。いずれにしても、<昔の日本人は、カルシウムを1日に400mg以下しか摂取していなかった>という表現には、現代の日本人は昔の人より豊富にカルシウムを摂取しているという思い込みがあるようです。

 

しかし、現在に至っても日本人は慢性的なカルシウム不足だと言われています。実は現代の日本人のカルシウム摂取量も1日に400mg程度です。『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』では1日700〜800㎎のカルシウムの摂取を勧めていますのでカルシウムはほとんどの世代で不足しています。 それから、摂取すべき栄養量は性別や年齢によっても変わりますが、身長や体重などの体格にもよります。

 

たとえば日本人の平均身長推移は過去60年で、男女とも10cm以上伸びています。その分だけより多くのカルシウムの摂取が必要となってきます。骨粗鬆症財団の回答は、こうした基礎データを検討せずに安易にコメントしているので、質問者の素朴な疑問に対して、余りにも無責任であるといわざるをえません。

 

質問者自身の論理から導かれた疑問である<カルシウムだけを摂取しても骨は強くならないと思いますが、いかがでしょうか。>という問いの意図は、骨の強化に対するカルシウム摂取の必要性に対する疑念であることを、まず読み解かなければならないはずですが、現代人は体格に見合ったカルシウムを慢性的に摂取できていない事実から示してさしあげることが親切というものではないでしょうか。その前提を踏まえたうえで、カルシウム以外の栄養摂取の必要性や運動などの重要性についてお答えすることが大切だと思います。