最新の臨床医学 3月20日(水)内科Ⅲ(糖尿病・内分泌・血液・神経)

糖尿病はもはや国民病です。糖尿病専門医だけに任せておけばよい病気ではありません。薬物療法の発展は目覚ましいのですが、食事療法、運動療法、生活習慣編世用のための行動療法を駆使して治療に当たるのでなければ、コントロールに至ることは難しいです。糖尿病は動脈硬化性疾患とならんで臨床栄養学の中では中心的な病態です。私は、糖尿病専門医ではありませんが、たいていの糖尿病専門医よりは、糖尿病について深くかかわり、実践してきたという自負があります。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

Q2-4 

糖尿病の慢性合併症の予防・進展抑制はどのように行いますか?

 

【要点】

糖尿病の慢性合併症の予防,進展抑制のためには、

①血糖コントロール

②肥満解消

③禁煙遵守

④血圧のコントロール

⑤脂質代謝のコントロール

 

以上のすべてを目指します。

 

 

【 杉並国際クリニックの実地臨床からの視点 】

糖尿病なのですが、③の禁煙遵守からはじめるのが、杉並国際クリニックのメソッドです。なぜならば、糖尿病は万病の元であり、糖尿病の管理は、全身管理と密接に結びついているからです。禁煙をしたいが、これまで何度も失敗してきた、というタイプの方でも禁煙成功に導くことは可能です。ただし、頑なに禁煙を拒否するような方は、責任ある医療機関としてお引き受けすることは難しいです。

 

④血圧のコントロールなどもなかなか進展しません。ガイドラインで明記されている理由は、糖尿病患者では動脈硬化が進みやすいから、禁煙が必要としています。

 

次いで、①血糖コントロールは当然です。慢性合併症の代表が血管障害(細小血管症、大血管症)です。細小血管症の発展・進展をほぼ抑制できるとされるのがHbA1c<6.9%です。これに対して、大血管症については、食後の血糖値だけが高い耐糖能異常の段階から発症・進展するリスクが高いです。

 

したがって、①血糖コントロール、の理想的な目標は、1日を通じて高血糖、低血糖なく空腹時および食後高血糖が是正され、その結果、HbA1c値が正常化することです。

 

杉並国際クリニックでは、1日1~2食(朝食抜きが多いです)ではなく、1日3食を原則として推奨していますが、これは上記の①血糖コントロール、の理想的な目標を実現し易くさせるためです。

 

次に、② 肥満解消、が重要であることにも根拠があります。肥満の中でも、内臓脂肪蓄積は、血圧、脂質代謝、血糖のコントロールに悪影響を及ぼし、心血管イベント(症状出現)の危険因子とされています。

 

体重コントロールの目標はBMI22とすべきとされます。そして、2型糖尿病患者ではBMI≧23以上は蛋白尿が出現する率が高く、心血管イベントの危険因子の閾値でもあります。たとえ1~2㎏だけでも減量すると糖尿病に関与する代謝の改善を認めることが多いです。そこから、減量前体重の約5%の減量を目安として、徐々に行うことが大切です。

 

実際の方法は、まず、毎日の体重記録です。肥満の原因を生活環境、食習慣、運動習慣、精神的要因などの面から総合的に分析し、是正できるものを見出して減量に対する動機付けを行うことが推奨されています。

 

さらに、④血圧のコントロール。目標血圧<130/80mmHg(家庭血圧<125/75mmHg)です。その理由は、合併症防止のためには、1日中正常血圧を維持することが重要だからです。

禁煙と肥満解消に加えて食塩摂取制限だけでも血圧はコントロールしやすくなります。ただし、糖尿病性腎症がある場合には、生活習慣全般の改善委加えて、十分な降圧を図るべきです。

 

糖尿病合併高血圧症の薬物療法は、それぞれの病態に見合った降圧剤を選択します。

 

最後に、⑤脂質代謝のコントロール。血清脂質で最も重要なのはLDLコレステロールです。脂質代謝の目標値は、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など)を有しない場合にはLDLコレステロール<120mg/dL,冠動脈疾患を有する場合にはLDLコレステロール<100mg/dLです。糖尿病患者にみられる脂質異常症は心疾患イベントの強力な危険因子です。その他、中性脂肪<150mg/dL,HDL-コレステロール≧40mg/dL以上、非HDLコレステロール<150mg/dLをそれぞれ目標とします。

 

心血管イベントの危険因子です。アルコールの摂取は血糖や血清脂質の コントロールを乱しがちなので、少ないほど良いです。とくに、肝疾患や合併症など問題のある症例では禁酒とします。

 

平成8年に標榜を追加した心療内科は、実際には、このような総合的な日常診療の場で力量を発揮しやすいのです。心療内科とは身体科である内科をベースにしていますが、社会的には誤解が多く、啓発運動を継続していく必要があります。なお高円寺南診療所時代に基礎を確立し、杉並国際クリニックの新時代に国内はもとより、世界に向けて発信する全人的健康法である水氣道は、糖尿病治療の国際標準にも適ったメソッドであることを知っていただければ幸いです。