最新の臨床医学 3月14日(木) 骨粗鬆症についてQ&A

ここで掲載する内容は、公益財団法人 骨粗鬆症財団のホームページから引用したものです。骨粗鬆症についてわかりやすい解説をしています。

 

骨粗鬆症は、長年の生活習慣などにより骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。最初は、自覚症状はありませんが、ひどくなると骨折を起こし、寝たきりの原因となる場合もあります。多くは腰や背中に痛みが生じて医師の診察を受けてからみつかります。しかし、骨粗鬆症になってから治すのはたいへんです。骨粗鬆症にならないように、日ごろから予防を心がけることが大切です。骨粗鬆症を予防することが、ほとんどの生活習慣病を予防することにつながります。そのために、高円寺南診療所では女性では、45歳以上、男性でも50歳以上の皆様に骨量計測を推奨し、骨年齢を算出し、骨粗鬆症の早期発見、早期対応に力を注いでいます。それでは、骨粗鬆症についてもっと詳しく勉強していきましょう。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

 

それぞれのQ&Aのあとに【杉並国際クリニックからのコメント】を加えました。

 

 

Q9

カルシウムと各栄養素の摂取比率と安全量について

 

骨粗鬆症治療のために、薬と食品で毎日カルシウムを約2,000mgとっていますが、吸収率を上げるためにはマグネシウムなどの栄養素も必要とききました。各栄養素の摂取比率と、安全な摂取量について教えてください。

 

栄養素等摂取量やバランスについては、以下をご参照ください。

 

 

「食事摂取基準」によるミネラルの1日あたりの上限量

上限量:

「ほとんどすべての」人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない最大限の量

例)

カルシウム……2300mg(18-70歳)

 

鉄…………………40mg(15-49歳)

 

リン……………3500mg(18-70歳)

 

マグネシウム… 通常の食品以外からの摂取量の上限は350mg(成人)

 

 

ミネラルのバランス

例)

カルシウム/リン比………………0.5~2の範囲

 

カルシウム/マグネシウム比……2:1程度

 

カルシウム600mgに対してリンを1200mg以上摂取すると、カルシウムの腸管からの吸収阻害のリスクが増加します。

 

 

カルシウムの腸管からの吸収に関わる因子

 

 吸収促進因子:ビタミンD、乳糖、カゼインホスホペプチドなど

 

吸収阻害因子:リン、食塩、アルコール、カフェインの過剰摂取

 

 

[栄養素以外にも、喫煙、不動(運動不足)などを含みます]

骨粗鬆症の治療においては、充分な量のカルシウムやビタミンDの摂取は効果的に働くと考えられます。毎日の食事のエネルギー摂取量をはじめとして、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミン類が過不足なく適正量摂取できるように注意を払ってください。

 

ただし、カルシウムやマグネシウムの摂取のみで骨粗鬆症は治りません。医療機関で適切な治療を受けてください。

 

 

【杉並国際クリニックからのコメント】

栄養学、とりわけ臨床栄養学とは各栄養素の摂取量と栄養素間のバランスや相互作用の学問であるともいえます。栄養素のバランスとは摂取栄養素間の比率といってもよいでしょう。ただし、それらの摂取量の算定には連立方程式を解くようなややこしさを伴いますが、なるべく優しく解説してみましょう。

 

カルシウムと各栄養素の摂取比率

カルシウム/リン比:0.5~2、カルシウム/マグネシウム比:2:1程度

 

<薬と食品で毎日カルシウムを2,000mg>をとっているとすれば、

カルシウムとの関係でリン、マグネシウムの摂取量は、それぞれ

リン1,000~4,000mg、マグネシウム1,000mg程度ということに、一応はなります。

 

 

カルシウムと各栄養素の安全量について

カルシウム2300mg(18-70歳)、リン3500mg(18-70歳)、

マグネシウム350mg(成人、通常の食品以外からの摂取)

 

<薬と食品で毎日カルシウムを2,000mg>をとっている人が18ないし70歳だと仮定するならば、カルシウムの摂取量は安全量の範囲です。そこで、この人のリン摂取量をカルシウム/リン比0.5~2に基づき単純に算定するとリン摂取量は1,000~4,000mgになります。しかし、この人がリンを4000mg摂ってしまうと3500mgの安全量を超えてしまうことになります。安全量を考えると、この人のカルシウム/リン比は2000mg/3500mgすなわち、0.571であることから、カルシウム/リン比は0.5~2でなく、0.58~2に修正されなければならないことになります。

 

世間では、商業主義に煽られて、サプリメントブームですが、各栄養素を必要以上摂取していればよい、というわけではありません。ミネラルやビタミンにはカロリーが無く、安全であるという先入観を持っている人が大多数のようですが、これが大きなピットホール(落とし穴)です。ミネラルやビタミン(とりわけ脂溶性ビタミンであるビタミンA,D,Eなど)は過剰に摂取すると種々の過剰症を生じます。また、上記の例でも説明したように栄養素間の摂取バランスを崩してしまうことにもなりかねません。

 

<骨粗鬆症の治療においては、充分な量のカルシウムやビタミンDの摂取は効果的に働くと考えられます。毎日の食事のエネルギー摂取量をはじめとして、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミン類が過不足なく適正量摂取できるように注意を払ってください。>と解説している背景は、こうしたことを踏まえてのアドバイスであることを押さえておきましょう。

 

ただし、すでに骨粗鬆症の診断を受けている方は、

<カルシウムやマグネシウムの摂取のみでは治りません。医療機関で適切な治療を受けてください。>とありますが、その通りです。これからも、一緒に勉強を続けていきましょう。