最新の臨床医学 2月12日(火)内科Ⅱ(循環器・腎臓・老年医学)

日本循環器病学会のHPには、有益情報が満載されていますので、それを紹介します。

 

最後に、杉並国際クリニックからのコメントを加えました。

 

 

心疾患など、慢性疾患を有する人たちは以前には病状の悪化を恐れるあまり、医師でさえも運動を禁止する傾向にありました。

 

それが、最近では運動によって患者の生活の質・人生の質(QOL)が改善することが明らかにされてきました。

 

現在では、むしろ許容範囲内であれば運動・スポーツへ参加することを勧めています。

 

心疾患患者の学校、職域、スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン(2008年改訂版)では、学校、職域、スポーツにおける心疾患の重症度に応じた運動許容条件を示しています。

 

 

Q4

心疾患における運動強度は、どのように決定するのですか?

ちなみに私は高血圧で降圧薬を服用しています。    

 

A

高血圧患者はリスクの層別化と、高リスク例に対する適切な運動許容条件が必須となります。身体活動のリスクに影響する因子として、年齢、冠動脈疾患の存在、血行動態と心筋酸素消費量に直接関連する運動強度などが挙げられます。

 

リスクの層別化には、高血圧の重症度、標準的臓器障害及び他の冠危険因子の有無を確認します。

 

リスクの層別化は、特に冠動脈疾患の有無の確認が最重要です。そのため、運動負荷試験(自転車エルゴメータなど)は可能な限り実施します。

 

 

高血圧患者の運動実施に際しては、以下のような配慮が必要です。

 

①β-遮断薬や利尿薬は、高温・多湿環境下における体温調節機能を阻害する可能性があるので、熱中症予防対策は重要です。

 

②α-遮断薬やカルシウム拮抗薬、血管拡張薬は、運動後低血圧を誘発することがあるのでクールダウンを必ず行うように指導します。

 

 

高血圧の重症度別運動強度

血圧120~139/80~89mmHgでは、生活習慣是正を行い、運動への参加は可とします。また血圧の高値が続く場合には、心エコー検査で左室肥大の有無を確認します。左室肥大が認められた場合には薬物療法を開始し、血圧の正常化が確認されるまでは参加する運動を制限します。

 

血圧140~159/90~99mmHgで、臓器障害を伴わない場合には、競技スポーツの参加は制限しません。ただし、約3か月ごとに血圧を確認します。

 

血圧160/100mmHg以上では、臓器障害を認めなくても、高度静的スポーツへの参加は、生活習慣修正及び薬物療法により血圧がコントロールされるまで禁止します。

 

他の心血管疾患を合併する場合には、疾患の種類と重症度により参加の可否を決定します。冠動脈疾患の合併例のような高リスク患者では、虚血性心電図変化や狭心症発作を誘発する心拍数よりも10bpm以上低くなる運動強度とします。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

ガイドラインでは、スポーツあるいは運動の強度をMETs表示で示しています。

 

成人の心筋症については、大規模な臨床試験はほとんどありません。そして、運動中の心事故・突然死の機序や危険因子については不明な点が多いです。この疾患は左心室の収縮機能は正常に保たれ、死因の過半数は突然死(特に40歳以下)が占めることが問題です。突然死はスポーツ、労作中やその直後に多く発生すると報告されています。

そこで、この疾患ではリスク評価で分類し、以下の危険因子がなければ軽度リスクと評価します。

軽度リスクの場合

軽度および中等度の作業・運動は許容されますが、強い運動や競技スポーツは禁忌です

 

中等度リスクの場合

軽い運動は許容されます。また中等度の運動は自覚的強度(Borg)13以下で危険な不整脈がなければ許容されます。

 

高度リスクの場合

自覚的強度(Borg)13以下で危険な不整脈や心不全が無ければ軽い運動は条件付き許容とします。

 

肥大型心筋症における突然死の危険因子とリスク分類

中等度リスク

50歳未満の早発性突然死の家族歴、原因不明な失神、

高度な左室壁肥厚(≧30mm)、運動中の血圧上昇反応不良、

非持続性心室頻拍

 

高度リスク

心停止(心室細動)の病歴、自然発症の持続性心室頻拍