最新の臨床医学 2月4日(月)内科Ⅰ(消化器・肝臓)

内科2

 

日本消化器病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、「患者さんとご家族のためのガイド」が公開されていますので、ご参考になさってください。

 

規定により直ちに転載できませんので、「消化性潰瘍」の概要を紹介し、コメントを加えることにしました。

 

 

Q4 

どのようにして消化性潰瘍の診断をするのですか?

 

A4 

消化性潰瘍が疑われたら、まず内視鏡検査やバリウム検査(エックス線造影検査)により潰瘍があるかを確認します。

 

 

最近では、内視鏡検査を行う方が多いです。これには、口から入れる内視鏡(経口内視鏡)のほか、近年は鼻から入れる径の小さい内視鏡(経鼻内視鏡)が普及しています。内視鏡のメリットの1つ目は、とくに出血が疑われる場合は緊急に検査を行い、必要に応じて止血処置を行うことができることです。

 

メリットの2つ目は、生検といって、病変部位から組織の一部を採取し、顕微鏡による病理診断を行って良性・悪性(がん)の確認ができるというメリットがあります。ただし、経鼻内視鏡では止血処置はできません。

 

また、アレルギー性鼻炎の方、鼻中隔湾曲症のある方、その他、鼻づまりの傾向にあり、ふだんから口呼吸をしている方には余りお勧めできません。いずれの方法とも内視鏡検査では、構造や粘膜の色調など局所の表面に異常しか確認できません。胃の全体像や胃の位置はおろか、周辺臓器との位置関係も不明です。症例数の多い胃下垂や食道裂孔ヘルニアなどの診断にも不向きです。

 

粘膜表面に異常が認められなければ、患者さんが症状を訴えているにもかかわらず、異常なし、あるいは機能性ディスペプシアと診断するのみで、有効な治療選択には繋がりにくいことが多いことが残念です。

 

ですから、内視鏡検査が普及・発達してきた現在でも、消化管造影は有用です。消化管を広い範囲で観察でき、病変の大きさや存在する部位を客観的に評価できる点で優れています。これらの情報は、外科手術の術前検査や、化学療法の治療効果判定に不可欠な検査となっています。また消化管に穴が開くなどの合併症のリスクがなく、内視鏡挿入困難例でも施行可能で、スクリーニング検査としても有用です。

 

高円寺南診療所は杉並国際クリニックに移行しても、バリウム検査(エックス線造影検査)を継続する予定です。

 

その理由は、第1は空間的な広がり:胃の全体像が見られるからです。これは、形の異常だけではなく胃の機能異常の有無を確認するためにも必要な条件です。また線状の微細な変化などは色調変化を伴う内視鏡よりわかりやすいです。

 

第2に時間的な連続性:エックス線テレビ透視撮影装置を備えているため、これを駆使してリアルタイムに連続的に体内情報が得られるからです。第3に生理的機能との整合性:検査で使用するバリウムは、X線を透過しないので、バリウムが口から食道、胃、十二指腸へと流れていく様子を動画で見ることができます。バリウムの流れは、そのまま、私たちの食事の流れということになりますので、食後の胃の形や位置、食物が食道や胃、十二指腸を通過する際に通過しにくくなっていないか、狭くなっていないかどうかを見ることができます。

 

その他のメリットとしては、胃潰瘍の他にポリープや胃がんも発見でき、治療に結びつけられます。胃X線による胃がん検診については、検査の感度(がんがある人を正しく診断できる精度)は70~80%といわれていますが、減少効果を示す相応の証拠があり、対策型検診として実施することが勧められています。胃潰瘍を否定する結果だとしても、消化管の病態や機能を理解する手掛かりが得られることは重要です。

 

この検査は、まず、空気を出して胃を膨らませる発泡剤を飲みます。その後、X線を反射するバリウム(造影剤)を飲んで撮影したいところにバリウムがうまく付着するように体を動かすことによって胃壁にバリウムを付着させます。そして胃壁の凹凸をエックス線により描出することで調べる検査です。潰瘍により粘膜が欠損して窪んだ部位にバリウムが入りこむことで、潰瘍の大きさや深さ、拡がりを確認できます。

 

 

胃X線検査のデメリット

X線による放射線の被曝(ひばく)があります。自然のなかで浴びる放射線と同程度なので、健康に大きな影響を及ぼすことはありません。ただし、消化管造影はX線を用いた検査であるため、妊娠可能な年齢の女性では、妊娠の可能性が無い時に受けてください。

 

ただし消化管造影検査後に妊娠が判明した場合でも、広島の原爆の追跡調査から、基本的には消化管検査の被曝量では胎児に奇形等の影響を及ぼさないことが判明していますので、通常は心配ありません。さらにバリウムの誤飲や便秘などの偶発症が起きることがありますが、予め下剤を内服することで便秘になった方は幸い経験していません。