最新の臨床医学 1月30日(水)内科Ⅲ(糖尿病・内分泌・血液・神経)

日本糖尿病学会ホームページから

 

Q1-5 

1型糖尿病は、どのように診断するのですか?

 

【要点】

1型糖尿病は成因別に、(A)自己免疫性、(B)特発性に分類され、発症 様式別に、急性発症、緩徐進行、劇症の3つに分類されます。

 

急性発症1型糖尿病では、一般的に高血糖症状出現後3か月以内にケトーシスやケトアシドーシスに陥り、直ちにインスリン療法を必要とします。

 

緩徐進行(slowly progressive insulin-dependent diabetes mellitus:SPIDDM)1型糖尿病では、抗GAD抗体もしくは膵島細胞抗体(islet cell antibody:ICA)が陽性であるものの、診断されてもケトーシスやケトアシドーシスには至らず、直ちにはインスリン療法を必要としません。⇐ 膵島細胞抗体は、GAD抗体、IA-2抗体、インスリン自己抗体、ZnT8抗体とともに膵島関連自己抗体とされます。

 

劇症では、高血糖症状出現後1週間前後以内でケトーシスやケトアシドーシスに陥るため、血糖値に比しHbA1cが比較的低値であることが特徴であり、直ちにインスリン療法を必要といます。

⇐ケトーシスとは、尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める場合に診断されます。

 

 

【 杉並国際クリニックの実地臨床からの視点 】

糖尿病の多くは生活習慣病とされる2型糖尿病であり、診断は容易に行われています。

 

しかし、注意を要するのは生活習慣病でない1型糖尿病です。1型糖尿病の診断は、必ずしも容易ではありません。その理由は、成因が原因不明なもの(特発性)、自己免疫性など一様でなく、また発症様式も、急性発症、緩徐進行、劇症に3分類され、とりわけ緩徐進行1型糖尿病の臨床像は報告によりばらつきがあり、明らかな診断基準が明示されていないからです。

 

大多数を占める2型糖尿病は、治療開始に至らない、あるいは治療を中断する症例が就労世代に多いことが問題になっていますが、1型糖尿病である場合は、診断の遅れは、さらに深刻な事態になりかねません。糖尿病患者は1型・2型を問わず医療ケアとの継続的な繋がりを維持していくことが重要であることは、広く啓発していかなければなら無い課題です。

 

通常、

① 急性発症では何らかの膵島関連自己抗体が陽性であることが多く、大半が自己免疫性に分類されます。1型糖尿病は、免疫学的な理解が必要であり、したがって、アレルギー学やリウマチ学を専攻するアレルギー専門医、リウマチ専門医としては、その専門性からも強い関心をもつ領域です。

 

② 緩徐進行(SPIDDM)1型糖尿病は、定義上GAD抗体あるいはACAの陽性が前提であるため自己免疫性に分類されます。ただし、臨床上は報告によりばらつきがあり、明らかな診断基準は明示されていません。糖尿病発症または診断時にケトーシスおよびケトアシドーシスはないこと、多くの症例で経過中に膵島関連自己抗体が陰性化すること、自己抗体の値によらず、内因性インスリン分泌が低下しない例もあること、などから、診断が遅れがちになる可能性があります。

 

③劇症の多くは自己免疫の関与が不明であり、通常では特発性に分類されます