心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。
それは日本心療内科学会のHPです。
心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。
Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックするとが表示されます。
通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の
後に、<杉並国際クリニックの見解>でコメントを加えることにしました。
「質問23」
授業中やアルバイトのデスクワーク中に寝てしまうことが多く、治したいです。
好きな映画や舞台を見に行った時にも寝てしまうこともあり、一緒に行った彼に呆れられてしまいました。心療内科で診てもらえるでしょうか。
「答え」
文面からお若い女性の方と思われます。
いろいろな場面で眠ってしまい、日常生活でさぞお困りのことと思います。
日中の本来は活動している時間帯に強い眠気を催してしまうこと、これは「過眠症」と言えるでしょう。
過眠症の原因は多岐に渡っておりますが、診断のためにもっとも重要なのはご本人からの問診です。
主なものを挙げると、いつ頃からそのような眠気が出てきたのか、普段の睡眠時間は何時間くらいで平日と週末とで異なっているか、眠くなるようになった時期にきっかけとなることはあったか、現在何らかの薬をのんでいないか、治療中の病気はあるか、夜に途中で目を覚ますことがあるか、などです。
過眠の最も多い原因は睡眠時間不足と言われています。
残業が多くて帰宅時間が遅くなったり、娯楽のために夜の時間を使ったり、スマートフォンの普及などにより、昔よりも布団に入る時刻が確実に遅くなっています。
また、交代勤務などの生活リズムがずれてしまうことも過眠症の一因となります。
これらの中に当てはまる生活スタイルがありますでしょうか。
また身体の病気や精神的な病気によっても眠気をきたす場合がありますし、夜間に尿意を催して目を覚ましてしまう過活動膀胱や男性では前立腺肥大症なども睡眠が妨げられて日中の眠気の原因となります。
眠気を催す薬剤としては、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬などのほか風邪薬、解熱鎮痛剤、咳止め薬、抗アレルギー薬などもあります。
これらに当てはまらない場合には、睡眠中に呼吸が止まることを繰り返す睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシー、特発性過眠症などが考えられます。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中にいびきをかく、呼吸が止まっているなどとパートナーから言われたことがきっかけでわかることがあります。
ナルコレプシーでは注意や集中を要する場面でも居眠りを繰り返し、短時間の仮眠でもリフレッシュ感があることが特徴です。
笑った時や感動した時に脱力を感じることもあり、また金縛りや寝る時の幻覚が起こりやすいとも言われます。
これに対して特発性過眠症では昼間の眠りは長くて4時間にもなり居眠り後の爽快感が乏しいという特徴があります。
前述したような問診からある程度は原因を見つけることが可能であり、その原因を取り除いて効果をみることができます。
しかし、これのみで改善せず、また複数の原因が絡んでいるような場合には、終夜睡眠ポリグラフ検査や反復睡眠潜時検査などの専門的検査が必要となります。
さて、お尋ねの心療内科でみてもらえるかということへの回答ですが、過眠症の診断を系統的に行い、終夜睡眠ポリグラフ検査や反復睡眠潜時検査が可能な医療機関は限られています。
心療内科というよりも、日本睡眠学会が認定しているような医療機関が宜しいのではないかと思います。
インターネットで調べてみれば掲載しています。
但し、原因に生活習慣が大いに関連しているような場合には、その治療は心療内科が適しているかもしれません。
(千葉太郎)
<杉並国際クリニックの見解>
日本心療内科学会が、なぜ情報量の欠如した中途半端な複数のケースを掲載し、回答者に漠然とした解説をさせるのか理解に苦しみます。心療内科の一般性や専門性を具体的に活かせるようなケースであるとは言い難く、回答者の千葉先生の御苦労が察せられます。
さて心療内科か否かを問わず、診療の入り口は、患者さんの年齢、性別と主訴です。このケースの主訴は<活動時間帯に眠ってしまうこと>ですが、患者さんが主に訴える症状の発症時期や連続性や頻度などの情報が含まれてはじめて「医学的な主訴」になります。こうした問診がなされないうちから、アドバイスを始めることは心療内科医以前に一般医としても失格ということになります。
主訴を明確にしない問診は問診にあらず、です。問診なしの検査は医療費の無駄遣いであり、得られた結果のみではとうてい患者さんの全体像を把握することは叶わないことでしょう。
このケースは具体的で明確な診断を下すことは不可能ではありますが、睡眠覚醒障害の範疇に入るものと思われます。睡眠覚醒障害は、おおよそ不眠症、過眠症、睡眠覚醒リズム障害、睡眠時随伴症(パラソムニア)に分けられます。
そして、このケースでもっとも疑われている過眠症には、原発性過眠症、ナルコレプシー、周期性睡眠過剰症候群、月経関連症候群などがあります。
過眠症とは、日中に過剰な眠気または実際に眠り込むことが毎日の様に繰り返して見られる状態で、少なくとも1ケ月間は持続し、そのため社会生活または職業的機能が妨げられ、あるいは自らが苦痛であると感じるものです。 ただし一回の持続期間が1ヵ月より短くても繰り返して過眠期がみられるものも含みます。
質問者が若い女性であることを想定するならば、真っ先に言及していただきたかったのは月経関連症候群です。月経前に強い眠気に悩まされることを「月経関連過眠症(月経前過眠症)」といいます。月経の前に心身が不調になる「月経前症候群(以下、PMS)」がある人は、女性の30~80%もいます。ある調査では、41%の女性が月経に関連して睡眠に変化があり、そのうち、1%は月経前不眠症、43%は月経前過眠症、5%は月経時不眠症であったと報告されています。
月経周期で黄体期には、「プロゲステロン」という女性ホルモンの血中濃度が高くなります。このプロゲステロン自体に催眠効果があります。また体温を上げる働きがあり、卵胞期に比べて黄体期の最低体温と最高体温の差は小さくなります。私たちは体温が下がると眠くなり、体温が上がるときに目が覚めます。黄体期には1日の内での体温の変化が小さくなるので、睡眠と覚醒のメリハリも小さくなって、日中に眠気が強くなると考えられています。
典型的な月経関連過眠症では、月経の約1週間前から日中の眠気が強くなり、月経の開始とともに眠気が軽くなるパターンをとります。下腹部痛や頭痛、イライラ、憂うつな気分など、PMSのほかの症状が強い人ほど、日中の眠気も強くなる傾向があります。
基本的には生活指導とカウンセリングが行われます。過眠がひどく日常生活に支障があるときには薬での治療が行われます。生活指導としては、睡眠の質を高めるための生活習慣が勧められます。たとえば、日中に日光をしっかり浴びたり、昼夜の生活にメリハリをつけたりします。水氣道でこれを治した患者さんは多数にのぼっています。また、気分転換を行うことも大切です。症状がひどいときには生理休暇を取るなどして、体調の変化に生活のパターンを合わせることも必要です。
また臨床心理士によるカウンセリングも、効果があります。基礎体温を記録したり睡眠日誌をつけたりして、月経周期と過眠症状の関連を理解することは有意義です。
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