最新の臨床医学2019 1月5日(土)漢方治療についてのQ&A

漢方治療に関しては一般社団法人 日本東洋医学会 一般の方へ

のHPを検索してみました。

ここには<漢方ストーリー>という読み物がりますので、お読みになってください。

ただし、具体的なQ&Aは掲載されていません。

 

そのため、以下のQ&Aを採り上げ、解説を加えてきました。

慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&A

 

富山県立中央病院 内科和漢・リウマチ科-Q&A

 

 

今回からは、三和生薬株式会社のHP「よくあるご質問」をご紹介いたします。

 

高円寺南診療所の立場から、<高円寺南診療所からのメッセージ>を加えます。

 

Q

漢方薬と西洋薬を一緒に飲んでも大丈夫ですか?

 

A

一般的には漢方薬と西洋薬を併用しても問題ないと考えられています。

 

しかし、病院で処方されている薬がある場合、ご自身で購入された漢方薬を併用することで予期せぬことがおこる場合もありますので、必ず主治医の先生にご相談の上、了解を得たうえで服用してください。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

回答には問題があります。漢方の生薬のなかには、西洋薬との併用で注意を要するものがあることは、明確にしておかなければなりません。

 

なぜなら、単独でも副作用が生じることがある生薬は、併用する西洋薬によっては、その副作用の発現を強化してしまう可能性が検証されているからです。特に注意を要する生薬(主成分)は4つあります。

 

それは麻黄(エフェドリン)、大黄(センノシド)、附子(アコニチン)、甘草(グリチルリチン)です。これらについて生薬の副作用と、これとの併用に注意を要する西洋薬を挙げてみます。

 

 

○麻黄(エフェドリン)の副作用は、不眠、興奮、動悸、血圧上昇、発汗過多、胃腸障害、尿閉(前立腺肥大の人は特に注意)です。エフェドリンとはアドレナリン(エピネフリン)のことなので、交感神経を緊張(興奮)させることによって生じる作用です。

 

注意を要する併用薬:エフェドリン類・カテコラミン含有製剤、選択的モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬、甲状腺薬、キサンチン系薬剤

 

特に注意すべき疾患:気管支喘息、甲状腺機能亢進症、心不全、高血圧症、パーキンソン病など

 

 

高円寺南診療所では気管支喘息に対して麻黄を含む漢方製剤を用いることは多いです。しかし、気管支喘息の治療薬としてはβ₂刺激薬の他、キサンチン系薬剤を用いることがありますが、控えめな量から用いています。逆にいえば、麻黄剤を適量用いれば、これらの西洋薬を用いずに済むか、あるいは併用しても少量で効果を引き出すことができます。代表的な漢方製剤は19小青竜湯(しょうせいりゅうとう)です。これは、朝食の前後のみ、1日1回服薬していただくようにしています。とくに朝が苦手な方には強力な味方になることが多いです。

 

 

○大黄(センノシド)の副作用は、下痢、腹痛、骨盤内うっ血です。

 

便秘に対する下剤として処方されるので、西洋薬の下剤を併用するに際しては、これらの副作用の出現に注意しなければなりません410附子理中湯(ぶしりちゅうとう)を除いて、下剤として用いられる漢方製剤には126麻子仁丸(ましにんがん)、84大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)にはそれぞれ4.0g、33大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)や61桃核承気湯(とうかくじょうきとう)にはそれぞれ3.0g、51潤腸湯(じゅんちょうとう)や134桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)にはそれぞれ2.0gが含まれています。高円寺南診療所では、便秘の治療は漢方単独で済ませることが多いので西洋薬との併用はほとんどありません。しかも、1日1回夕食前もしくは眠前の内服として処方することを原則としているので、上記の大黄の量も三分の一になります。

 

 

○附子(アコニチン)の副作用は、嘔気、呼吸促迫、舌のしびれ、唾液分泌亢進、<重症例>四肢失調、呼吸障害、不整脈、痙攣などで死亡に至ることもあります。副交感神経亢進症状が以上に強くなりショックや中毒を来すことがあります。

 

原料は猛毒のトリカブトです。附子単剤として01ブシ末が漢方処方の調剤として用いられるほか、鎮痛、強心、利尿目的で錠剤で単独に用いられることがあります。漢方製剤に含まれる附子末の量は1.0g以下です。

 

1.0gの附子末を配合している漢方製剤は、05芍薬甘草附子湯(しゃくやくかんぞうぶしとう)29当帰芍薬散加附子(とうきしゃくやくさんかぶし)107牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)127麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)410附子理中湯(ぶしりちゅうとう)、0.5gのものは7八味地黄丸(はちみじおうがん)18桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)30真武湯(しんぶとう)などです。

 

高円寺南診療所では、浮腫みがあって冷えや痛みによる交感神経亢進症状が強いケースにしばしば用いて良好な成績を収めています。投与時間帯はケースバイケースですが、1日1回投与を原則としています。

 

 

○甘草(グリチルリチン)の副作用は、偽アルドステロン症(浮腫、高血圧、低カリウム血症)、重症例では横紋筋融解症があります。西洋薬の併用以前に多くの漢方薬が甘草を含んでいるため、漢方薬の併用にも注意を要します。西洋薬では、グリチルリチン製剤、カリウム排泄性の利尿薬(ループ系、サイアザイド系)などとの併用は注意することになっています。高血圧や心不全・肝不全などの治療に際しては特に注意を要します。