最新の臨床医学 12月2日(日)心療内科についてのQ&A

心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

それは日本心療内科学会のHPです。

 

 心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックするとが表示されます。

と書かれています。

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、

<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。

 

「質問16」

胃・十二指腸潰瘍にストレスが関係していると言われたのですが、心療内科で受診をした方がいいでしょうか?

 

「答え」

むずかしい質問です。

胃・十二指腸潰瘍がストレスで発症するとはいえません。

 

ヘリコバクターピロリ菌の感染がある場合、危険因子となります。

 

ですから、まずは通常の消化性潰瘍の治療をうけるべきです。

 

プロトンポンプ阻害剤といった制酸剤を中心とした薬物療法と背景に胃粘膜のピロリ菌感染があれば、除菌をすることが重要です。

 

これらは一般内科、消化器内科で受けられるのがよいでしょう。

 

ですが、もしあなたがそうした治療を受けたうえで、主治医からあなたの胃・十二指腸潰瘍にはストレスが関係していると言われたとしたら、おそらくそれは、形態的に見た胃・十二指腸潰瘍の状態とあなたが訴える胃や十二指腸からの痛み症状が釣り合わない(潰瘍がほとんど治っているのに、強い痛みを訴える)のだと思います。

 

これには、上部消化管の機能異常と刺激への感受性の亢進が関係し、この両者には心身のストレスが関与することも多いからです。

 

心療内科はこのような病態の治療を専門的に行います。

 

まずは、内科的な薬物治療に加え、食事、睡眠のとりかたなどの生活指導を行います。ここまでは一般内科と大きな違いはありませんが、加えて緊張や疲労の蓄積を自覚する方法や緊張や疲労の緩和法(リラクセーション法)を指導します。

 

さらに必要があれば心理面からの治療を併用しますが、こうしたケースはそう多くはありません。

 

ですので、あなたが一般内科や消化器内科で胃・十二指腸潰瘍の治療を受けられたうえでも、胃痛などの症状が続いて困られた場合は、心療内科を受診されるのがよいでしょう。

 

(福永幹彦)

 

 

<高円寺南診療所の見解>

回答者の福永幹彦先生は、関西医科大学心療内科教授です。ご専門は、心療内科全般、消化器心身症(過敏性腸症候群・機能性ディスペプシア)、慢性疼痛とのことです。

 

質問は、要するに、胃・十二指腸潰瘍で心療内科を受診して良いのかのお尋ねです。

 

そこで<「答え」難しい質問です。>というのでは、質問者は困ってしまうことでしょう。患者さんの質問は至って平明であり、何ら難しいことはありません。答えるのが難しい質問、あるいは答えにくい質問だということでしょう。

 

ここで「胃・十二指腸潰瘍」というのは、胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍ということであって、一般に消化性潰瘍と呼ばれるものと考えます。心療内科専門医としては、まず、胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍という診断が確定しているのかどうかを確認することからはじめるべきでしょう。

 

消化性潰瘍が確定診断であって、患者さんが、何らかのストレス(正確には、ストレッサー)を自覚しているのであれば、心療内科を受診していただくことは、その患者さんにとって、とても望ましいことだからです。

 

もし、「胃・十二指腸潰瘍」というのが患者さん自身の自己診断であって、ストレス性潰瘍を疑っているケースであったとしても、心療内科専門医であれば相談にのることは可能だと思います。なぜならば心療内科専門医は、消化器内科専門医ではなくとも、少なくと一般内科医だからです。しかし、世の中には、精神科医など内科医でない心療内科標榜医がほとんどなので、福永教授は明確に回答しにくかったのかもしれません。