最新の臨床医学 12月1日(土)漢方治療についてのQ&A

漢方治療に関しては一般社団法人 日本東洋医学会 一般の方へのHPを検索してみました。

 

ここには<漢方ストーリー>という読み物がりますので、お読みになってください。

 

ただし、具体的なQ&Aは掲載されていません。

 

これに対して、慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&Aは比較的上手にまとめられているので独自のコメントを付して紹介して参りました。

 

これに引き続き、富山県立中央病院 内科和漢・リウマチ科-Q&Aをご紹介いたします。

 

 

そこでも、高円寺南診療所の立場から、<高円寺南診療所からのメッセージ>を加えてご紹介を試みることにしました。

 

Q

リウマチに漢方は効きますか?

 

A

関節リウマチは関節滑膜の異常な増殖を主体とした慢性の炎症性疾患です。

 

その原因は不明ですが、免疫学的な異常が背景にあることは間違いなく、炎症が持続して関節が破壊されていきます。

 

治療としては、現代医学的には、免疫抑制剤を含めた疾患修飾性抗リウマチ薬や、非ステロイド性抗炎症薬が中心となっておりますが、全身症状として全身倦怠感や食欲不振、貧血、浮腫などが持続したり、前述の薬を駆使しても良くならなかったり、副作用のために使える薬が限られてしまったり、合併症があるために通常の治療が受けられないなどといったことがよく起こります。

 

こういったことで、漢方を希望して受診される方も多いのですが、このような場合に限らず、漢方薬はすべてのリウマチ患者さんに幅広く使っていただいてよいのではないかと思っています。

 

というのは、約3~4割の患者さんは漢方薬のみで治療可能で、副作用の多い薬剤を併用しなくて済むからです。

 

残りの6~7割の方は病気の勢いが強いために、何らかの現代医学的な薬を併用せざるを得ませんが、炎症を抑えきれなくても風邪をひきにくくなる、だるさが改善するなど、全身症状に対する波及効果が期待できます

 

また余談ですが、八味地黄丸に含まれる山薬は、山芋の根なので山芋アレルギーの方に、猪苓湯に含まれる阿膠はゼラチンアレルギーの方に、禁忌となっています。そのため、食物アレルギーにも十分に注意を払うようにしてください。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

『リウマチに漢方が効きますか?』と患者さんから尋ねられて、上記のような答えを述べても、最後まで聞いてくださる方ばかりではありません。

 

もちろん、話し言葉ではなく、書き言葉での回答なのである程度はやむを得ない点もあることでしょう。

 

しかし、まずYesかNoかの問いかけに対しては、YesかNoかで答えるのが親切というものでしょう。

 

そこで、再掲します。

 

Q『リウマチに漢方が効きますか?』

 

A『はい、効きます。ただし、全員に効くとは限らないのは現代薬と同じです。』

 

<漢方薬はすべてのリウマチ患者さんに幅広く使っていただいてよいのではないか>というのは少し言い過ぎです。漢方薬が嫌いな方に対して、説得してまで処方する必要はないと思います。そのようなケースでなければ、ほとんどの方に処方することが可能です。

 

また、<約3~4割の患者さんは漢方薬のみで治療可能>という根拠があいまいです。

 

特に関節リウマチの初期に関節変形が進行するので、一見、症状が軽快しているかのように見えて不可逆的な関節変性を見落さないように標準的治療をするのが、リウマチ専門医の常識です。

 

実際、漢方薬を併用した関節リウマチの標準治療が進展した結果、長期的には<約6~7割の患者さんが漢方薬のみでコントロール可能>というのが、高円寺南診療所の実績です。

 

漢方薬は、関節リウマチに対する抗炎症効果のみならず、<全身症状に対する波及効果が期待>できるということ、つまり、体全身のコンディションを整え、体調ならびに気分が安定し、家事や仕事などの生産性を向上させてくれる効果は確かに認められています。