最新の臨床医学 11月17日(土)漢方治療についてのQ&A

漢方治療に関しては一般社団法人 日本東洋医学会 一般の方へ

 

HPを検索してみました。

 

ここには<漢方ストーリー>という読み物がりますので、お読みになってください。

 

ただし、具体的なQ&Aは掲載されていません。

 

これに対して、慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&Aは比較的上手にまとめられているので独自のコメントを付して紹介して参りました。

 

これに引き続き、富山県立中央病院 内科和漢・リウマチ科-Q&Aをご紹介いたします。

 

 

そこでも、高円寺南診療所の立場から、<高円寺南診療所からのメッセージ>を加えてご紹介を試みることにしました。

 

Q

.漢方薬と西洋薬はどう違うの?

 

A

西洋薬(新薬)は人工的に化学合成された物質がほとんどで、その多くは一つの成分からなっています。そのため、西洋薬は一つの臓器や症状に対して強い薬理作用を示します。

 

それに対して漢方薬は天然の材料(生薬)を用いて、原則として二種類以上の生薬の組み合わせで薬方(処方)が構成されています。そのため、一つ一つの作用は弱くても、生体のいろんな部分に働き、全体として病気を治す方向に作用します。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

上記の説明文について検討を加えてみます。

 

 <西洋薬(新薬)は人工的に化学合成された物質がほとんどで、その多くは一つの成分からなっています。>たしかに、西洋薬(新薬)は人工的に化学合成された物質が多いのですが、ほとんど、というのは言い過ぎです。

 

そもそも西洋薬を(新薬)と括ってしまえば、人工的に化学合成された物質を新薬ということから、単なる言葉遊びになってしまいます。ただ、最近開発された薬剤の中にも配合剤があります。降圧剤などは、作用の異なる2~3種類の降圧剤が1剤として製造されたものが広く使用されつつあります。また喘息の吸入薬もステロイド剤とβ2気管支拡張剤が配合されているものが主流となりつつあります。

 

注射薬では、鎮痛補助薬で生物組織抽出物であるノイロトロピン®(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)や、プラセンタ(ヒト胎盤抽出物)などは、漢方薬としてではなく、西洋医学の薬として認識されています。これらは、人工的に合成されたものではありません。

 

また紛らわしいものの例としては、S・M散という健胃薬があります。これは、食欲不振、胃不快感、胃もたれ、嘔気・嘔吐がある場合に処方されます。その成分は、タカジアスターゼ(消化酵素)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、沈降炭酸カルシウムの他、丁字(チョウジ)、茴香(ウイキョウ)、桂皮(シナモン)、甘草(カンゾウ)など漢方薬で用いられている生薬も配合されています。

 

 

<西洋薬は一つの臓器や症状に対して強い薬理作用を示します。>

これも言い過ぎです。

 

西洋薬であっても、複数の臓器に作用し、複数の症状に対して、様々な薬理作用を示します。

 

その中には、強い薬理作用を示すものと、穏やかな薬理作用を示すものがあることは事実です。また、薬剤の投与方法や、投与量によって、効き方が異なる場合があります。

 

 

<漢方薬は天然の材料(生薬)を用いて、原則として二種類以上の生薬の組み合わせで薬方(処方)が構成されています。>

それでは、例外的に一種類の生薬単独で用いられる漢方薬をご紹介いたしましょう。

 

 

甘草湯(カンゾウ):

保険適応:(激しい咳、咽喉痛の寛解)

 

禁忌:アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症

 

副作用:(重大)偽アルドステロン症、ミオパチー

 

 

薏苡仁(ヨクイニン):

保険適応(青年性扁平疣贅、尋常性疣贅、イボ)

 

副作用:発疹、発赤、掻痒、蕁麻疹、胃不快感、下痢など

 

 

紅参(コウジン):

漢方処方の調剤、「独参湯(ドクジントウ)」という名称で用いられることがあります。

 

副作用:発疹、軟便、下痢

 

 

附子(ブシ):

保険適応(錠剤では、鎮痛、強心、利尿)

      

 副作用:心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心など

 

 

〈(漢方薬は)一つ一つの作用は弱くても、生体のいろんな部分に働き、全体として病気を治す方向に作用します。>

この説明は、少しわかりづらいかもしれません。

 

まず、生薬の一つ一つの作用は弱いとは限りません。作用の強い生薬の作用を緩和する目的で、他の生薬と組み合わせることで、漢方処方が発達してきた側面もあります。

 

また仮に、ある漢方薬を構成している生薬の一つ一つの作用が弱くても、生薬の配合の仕方によっては、相乗作用を発揮して強い作用を発揮することもあります。

 

ただし、その人に合った漢方薬とは、体質・気質および体調・気分、生活習慣、労働環境、気象条件などから総合的に判断して処方された漢方薬です。

 

そうして処方された漢方薬は生体のいろんな部分に適切に働き、全体として病気を治す方向に作用することでしょう。