診察室から:解離性(かいりせい)遁走(とんそう)②

意外に多い病気の話:

解離性(かいりせい)遁走(とんそう)

 

職場に遅刻したり、帰宅が遅くなったりしたことは、おそらく多くの人が経験していることなので、繰り返さなければ取り立てて問題とならないことがほとんどだと思います。

 

しかし、多くの場合、そこから病気が始まっていることがあります。これが発展して、職場や家庭に連絡を入れないまま、姿をくらまし、連絡が取れない状態になると、これを遁走(とんそう)といいます。

 

前回はこちら

 

 

解離性とん走の診断

 

〇医師による評価

自己同一性に関する混乱や過去の記憶について困惑がみられる場合、あるいは新たな自己同一性や自己同一性の欠如について葛藤がみられる場合に、解離性とん走が疑われます。

 

ときに、とん走前の自己同一性を突然取り戻し、見慣れない環境にいることに困惑する状況になるまで、解離性とん走とは診断されない場合もあります。

 

ですから、早期診断はとても難しいです。

 

診断は通常、医師が患者の経歴を調べ、家出をする前から、とん走中、そして新たな生活が確立されるまでの状況に関する情報を収集した後に下されるからです。

 

なお鑑別疾患としてPTSD、頭部障害、てんかん、身体疾患、アルコール、薬物乱用などを除外しなければなりません。

 

 

解離性とん走の治療

〇精神療法

 

〇ときに催眠または薬物を利用した面接

 

〇水氣道、聖楽院などの集団的活動によるケア

 

解離性とん走が生じている場合は、とん走中の出来事を思い出す助けとなるように、催眠または薬物を利用した面接(鎮静薬を静脈から投与した上で行う面接)と組み合わせて、精神療法を行うことがあります。

 

しかし、その方法はリスクもあり、効果も定かでないためお勧めできません。

 

高円寺南診療所では、生活指導、カウンセリング、水氣道などの統合的治療体系によって、解離性遁走を早期の段階で発見することが、かつてより容易になってきました。

 

もっとも重要なのは早期発見です。

 

医師や心理士は患者がとん走の引き金となった状況、葛藤、感情の対処法を探り、その後によりうまく対処できる方法を見つける手助けをすることができます。

 

このようなアプローチは、とん走の再発を予防するのにも役立ちます。