最新の臨床医学 9月15日(土)漢方治療についてのQ&A

漢方治療一般に関しては

 

一般社団法人 日本東洋医学会 一般の方へのHPを検索してみてください。

 

ここには<漢方ストーリー>という読み物がりますので、お読みになってください。

 

ただし、具体的なQ&Aは掲載されていません。

 

 

これに対して、慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&Aは比較的上手にまとめられていると思います。

 

ただし、その記載は概ね一般的ではありますが、慶應義塾大学医学部漢方医学センター受診者を想定して書かれているようです。

 

そこで、高円寺南診療所の立場から、<高円寺南診療所からのメッセージ>を加えてご紹介を試みることにしました。

 

Q

漢方薬は長く飲まないと効きませんか?

 

A

必ずしもそうではありません。病気の状態にもよります。

 

たとえば風邪のひきかけに漢方薬を使って、うまく薬があっていれば、30分ほどで効果は実感できるはずです。

 

病気の重症度や個人の体質差がありますので、はっきりと言うことが出来ませんが、風邪の初期の場合などは、1〜2回の服用で治ることがあります。

 

反対に慢性疾患などでは、すぐには効果があらわれにくいようです。

 

 

実際に漢方薬が使われる機会は、西洋医学でも長期の治療になる慢性病の場合が多いのです。

 

年単位の服用になることも珍しくありません。

 

しかしこうした場合でも、服用中の漢方薬が患者さんの状態にあっているかいないかは、2週間から4週間ぐらい服用を続けてみれば、判断できます。

 

効果がないと判断がつけば、薬の種類を変更する必要があります。

 

患者さんの状態は毎日、変わっていくものですから、それに合わせて薬を変えていくということもよく行います。

 

効果がよくわからないままに、漫然と同じ漢方薬を長い間飲み続けるようなやり方は、避けた方が賢明です。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

慶應義塾大学医学部漢方医学センターの回答は、とても親切だと思います。

 

大学病院という社会的立場を背景にすると、厳密に記述しようとして、かえって説明を複雑にしてしまいます。

 

高円寺南診療所は、民間の一開業医の個人的医療機関であるにもかかわらず、漢方専門医としての意識のせいか、歯切れの良い説明がむずかしく感じているので、慶應の先生方に深く敬意を表したいところです。

  

風邪の初期の場合などは、高円寺南診療所でも<1〜2回の服用で治ること>は珍しくありません。

 

それは慶應の先生方と同じ意見です。

 

これに対して、慢性的な病気を一発で治すことは、残念ながらほぼ不可能です。

 

慶應の先生方は<実際に漢方薬が使われる機会は、西洋医学でも長期の治療になる慢性病の場合が多いのです。>と解説していますが、高円寺南診療所の場合も全く同様です。

 

ただその場合でも<服用中の漢方薬が患者さんの状態にあっているかいないかは、2週間から4週間ぐらい服用を続けてみれば、判断できます。>と書かれていますが全く同感です。

 

 

高円寺南診療所では様々なアレルギー疾患、リウマチ関連疾患、再発を繰り返す発作性の疾患、心身症や神経症、それに線維筋痛症などを専門にしているため、どうしても漢方薬の助けが必要になってきます。

 

それは、なぜかというと、西洋医学の標準的な現代薬を長期に続けていかざるを得ない場合には、治療効果の他に、長期に亘る服用による副作用発現を懸念しなければならないからです。

 

初期治療のうちから、漢方薬を併用しておくと、治療の相乗効果が得られるばかりでなく、安定期になり、さらに改善してくると、現代の医薬品を減量したり、中止したりすることに成功する確率を高めることができるからです。

 

 

さて高円寺南診療所の患者さんに漢方を処方すると、このQ&Aの御質問とは異なり、「漢方は気長に続けると、体質が改善されてくるのですよね」という反応が多いです。

 

私にこの様な問いかけをして喜んで漢方を始める方は、概して反応が良いようです。

 

すると、「先生、この漢方薬をはじめてまだ2週間も経っていないのに、ずいぶんと体調も気分もよくなってきました。漢方はこんなに早く効いてくるものなのですか」などと喜んで尋ねてこられます。

 

そのような場合には、次のようにお答えすることがあります。

 

「それはとても良かったですね。漢方は体調と同時に気分も安定させてくれるものが多いです。

あなたが実感しているように、この漢方がお役に立てたことは間違いないと思います。しかし、それ以上に大切な理由があります。

それは、あなたが生活記録をきちんと続けて養生法と鍛錬法の両方が身に着いてきてから漢方薬をはじめたという事実です。

それから、禁煙にもみごとに成功されましたね。とても立派なことです。」

 

 

最後の引用は<患者さんの状態は毎日、変わっていくものですから、それに合わせて薬を変えていくということもよく行います。>です。

 

実は、患者さんの状態は毎日どころか、時間帯ごとに周期的に変化していることがほとんどなのです。

 

これは時間生理学でも証明されています。その結果、病気ごとに薬が効きやすい時間帯があります。

 

この原理を応用した薬物療法が時間薬理学的方法です。

 

高円寺南診療所では、朝、昼、夕すべてに異なる漢方薬を処方することがしばしばですが、時間薬理学的な効果を考えているからです。

 

また、女性では概ね4週間の周期で心身のコンディションが変動します。

 

さらに患者さんに限らず人間は季節ごとに体調や気分が変化しますから、生理学的な周期的変動や季節の変化に応じて漢方薬の処方を工夫するようにこころがけています。