診察室から:6月26日(火)

<初対面から怒っている受診者様>

 

平成元年開院以来、30年に及ぼうとする昨今、改めて思うことがあります。

 

それは、はじめての医療機関を受診するとき、それぞれの受診者の皆様の御気持ちを、予め察することができたら、ということです。

 

 

高円寺南診療所には以前から<木曜日ジンクス>があるようです。

 

あるようです、と他人事のように言うのは、しっかりと統計学的に処理して分析した結論ではないからです。

 

それよりも大切なのは医療の専門家として、なるべく偏見や先入観を捨てて対処するように心がけたからです。

 

それでも<木曜日の新患>の皆様には注意せざるをえない、これまでの多数の経験の蓄積から如何ともしがたいものが確かにあります。

 

 

その原因として考えられるのは、

 

①他の時間帯(ただし、終了ギリギリでない時間)に受診される皆様の御人柄に恵まれているため。

 

② 木曜日を休診としている医療機関が多いため、やっとの思いで、それもやむを得ず(積極的な選択ではなく)高円寺南診療所に辿り着いた、というケースが多いため。

 

 

①に関して、特に最近10年間を振り返ってみますと、高円寺南診療所を定期的に受診されている皆様方の健康意識が高く、意欲的な方が多いので、質の高い医療を継続し、発展させていく原動力になっている、ということです。

 

マナーが良く、健康管理に関して関心が高く、意欲的な方に恵まれています。

 

一言でいえば、信頼関係が厚いことです。

 

これは、医療従事者としてはとても感謝すべきことです。

 

 

②の一例は<最初から怒っている受診者様>です。

 

初診の受診者様で、高円寺南診療所はおろか院長である私を含めて初対面なのですから、怒りの矛先を私共の方に向けてくる方の対処には苦しみます。

 

そのような場合でも、当方を受診する以前の段階で、何らかのできごとによる不満が嵩じ、怒りが収まらぬまま受診に至ったのであろうことを想像し、可能な範囲での対応を試みております。

 

中でもよくあるのは他の医療機関から排除されてやむなく高円寺南診療所の門を叩いた、というケースです。

 

 緊急の場合は已むを得ないとしても、そうでない場合の初回診療は、互いに落ち着いて良好な関係性を築く準備に心掛けたいものです。

 

 

<最初から怒っている受診者様>には共通する特徴があります。

 

1)無言。当方からのあいさつに対して返事をしようとされない。お尋ねしてもなかなか答えようとなさらない。(窓口で、健康保険証を無言で投げ渡す。事前の血圧測定に非協力的、あるいは不承不承)

 

2)攻撃。説明やコメントは求めるが、コメントをしている間、一切のあいづちもなく、ひたすら強張った表情で話者をにらみ続ける。

 

3)批判。前医に対する主観的な批判を延々と展開される。それが悪口となり、感情を高ぶらせ、ののしりとなり、医療全般への批判にまで発展させ炎上される。おまけに、その理不尽な現状の釈明まで強要される。

 

4)強要。身勝手な要求をされる。(仕事が忙しいので、睡眠薬を1ヶ月分処方して欲しい、禁煙せずに済み副作用が無い薬を処方して欲しい、など)

 

5)無礼。自分の要求が通らないと、言葉遣いが粗くなり、侮辱的な言動をする。

(使えない医者だ、融通が利かない医者だ、あんた医者しかできないだろう!)

 

6)誹謗。ネット上に悪意に満ちた一方的な書き込みをする。

 

 

以上、いろいろありますが、一言でいえば、社会人としての最低限度のマナーを弁えない方、極端なまでに未熟な人格の持ち主の方々、自己反省が乏しく多罰的な方々、医師や医療機関を敵視すべき存在として認識しておられる方々ということになると思います。

 

ただし、以上のようなタイプに該当しても、初回診察の後、一気に急転換して信頼関係を取り結べる方々もいらっしゃいます。

 

 

しかし自分を助けようとする立場の相手を理不尽に困惑させて満足を得ようとする残念な方々が一定の割合で実社会に存在するのは確かです。

 

そのようなタイプの方であっても病人様や受診者様であることには違いありません。

 

病むということは、そういうことも含めて病むこともあるのですから、そうした方々を簡単に切り捨ててしまうことは好ましいことではありません。

 

 

しかしながら、私共が継続的に効果的に対応できる患者さんであるかどうか、はとても重要なポイントになります。

 

私どもが無理をしてまで、能力を超えて長期に対応していると、他の善良な患者の皆様に直接・間接に御迷惑が及ぶ結果を生じてしまうからです。

 

その分のエネルギーを、従来の信頼関係を構築できている患者の皆様のために振り向けるべきだと考えるようになりました。

 

 

最近では、私共の善意と専門性を発揮することが困難な、つまり、相互の信頼関係を構築できる見込みの乏しそうなタイプの方々には、なるべく早い段階で見きわめて、お引き取りいただくことにしています。

 

それは、そうした方々の別のチャンスを奪うことにもなるからです。

 

 

この判断も結論には至らず、30年以上の臨床経験の積み重ねを経ての慎重な仮説にすぎません。

 

しかし、互いに成長して再会する機会があれば、それはそれで素晴らしいことだと思いますし、実際に、たびたびそのような経験をしてきました。

 

 

ご縁あって来院された皆様一人一人と丁寧に向き合っていきたい、という私共の姿勢は一貫しています。