最新の臨床医学:5月11日 <シェーグレン症候群>

アレルギー・リウマチ科の診療対象は、多くの難病が含まれています。

 

診断は技術ばかりでなく手続きが複雑なものが少なくありません。

 

また、ようやく診断が確定したとしても、治療エビデンスが乏しく、すべての患者さんを満足に導くことが困難なケースが少なくありません。

 

現在のところ標準医療では限界があります。

 

 

そこで、一考すべきは、生活習慣、食事、運動、心理社会的要因や環境整備です。

 

多岐にわたり、関与の程度も個々人によってまちまちであるため、エビデンスレベルは低くならざるを得ないのが残念ですが、臨床とは個性(体質・気質・行動傾向など)を対象とするものであること、エビデンスといってもオールマイティではないことを忘れてはならないと思います。

 

現代の内科学は薬物療法に偏りがちであるのが災いしている疾患群があります。

 

そうした疾患に対しては、非薬物療法を積極的に上手に取り入れて活用するなど個別の工夫も有意義だと思います。

 

実際に、線維筋痛症や関節リウマチを合併した二次性SSの方は、高円寺南診療所では決して珍しくありません。

 

そうした皆様の多くは水氣道®に計画的に参加され、周期的な運動習慣を身に着けることによって病気を克服しつつある姿を目の当たりにするにつけて、複雑な全身病、難病に対する薬物療法の限界と、非薬物療法の併用の意義を改めて実感しているところです。

 

 

それでは、SSに対する標準的な情報を整理してみることにします。

 

シェーグレン症候群(SS)は、涙腺、唾液腺など外分泌腺に対するリンパ球浸潤と自己抗体産生を特徴とする自己免疫疾患です。

 

男女比は1:17.4、平均年齢60.8歳です。わが国では2015年より指定難病となっており、専門医には診療ガイドラインに基づいた正確な診断・重症度判定が求められます。

 

そのSSの網羅的な診療ガイドラインは2017年に公開されました。

 

臨床症状は、乾燥症状を主体とする腺病変と、その他の臓器病変である腺外病変に分けられます。

 

60%を占めるのが他の膠原病を合併しない一次性SSで、

 

40%は関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病を合併する二次性SSです。

 

したがって、何らかの膠原病を診断した際には、SSの合併を考慮してスクリーニングを行うことが望ましいです。

 

また、除外診断として、頭頸部の放射線治療歴、活動性C型肝炎、AIDS、サルコイドーシス、アミロイドーシス、移植片対宿主病(GVHD),IgG4関連疾患、抗コリン薬を内服している場合には、十分な休薬期間をとって検査しなければなりません。

 

 

指定難病とされる重症の基準は疾患活動性の指標であるESSDAI5点以上と規定されています。

 

ただし、ESSDAIに含まれないが重要な臓器病変として、慢性甲状腺炎、原発性胆汁性胆管炎があり、SS診断時にはこれらの検索も行います。

 

 

治療は、診断が確定すればアルゴリズムの流れに従った治療を試みますが、腺外病変は多様であり、かつそれぞれの病変に対する治療のエビデンスは乏しいことが問題です。

 

 

一次性SSは基本的には予後良好とされますが、経過中は腺病変の悪化と新たな腺外病変の出現に注意します。

 

予後に影響する合併症として悪性リンパ腫や、肺高血圧症が挙げられています。

 

悪性リンパ腫の発生予測因子として、耳下腺腫脹、リンパ節腫脹、紫斑、ASSDAI高値、M蛋白血症、低補体血症、クリオグロブリン血症、リウマトイド因子、小唾液腺生検における胚中心様構造などが知られています。

 

高リスク群では慎重に経過観察をする必要があります。