最新の臨床医学:5月5日<胆石症>

胆石症に関しては、これまでの常識が、つまり私が30年前に受けた医学教育の内容とは大きく変わってきているので注目しています。

 

かつてであれば、手術による胆のう摘出を勧めたはずの症例が、いまでは薬物療法による経過観察でよいとする症例も増えてきました。

 

 

胆石は腹部超音波検査で簡単に検出し、大きさを計測することも容易なうえ、胆石溶解療法の反応が良いものが多かったため、手術待機中に胆石が消失した多数の成功例を経験してきました。

 

 

高円寺南診療所の外来での胆石症患者の再発予防には、規則正しいバランスの取れた食事が有効であることを説明したうえで、実行し記録を提出していただいております。

 

具体的には食物繊維やカルシウムが多く、動物性脂肪が少ない食事としますが、若干の脂肪摂取は、胆嚢の収縮機能が残存している間は、胆嚢の収縮を促すために勧めています。

 

また胆石患者では適切なエネルギー摂取と運動により肥満にならないように指導しています。

 

また、比較的まれではありますが、急性胆管炎を疑う患者では急激な状態の悪化があるため、緊急入院を要しないと判断される場合であっても、帰宅後も注意深い観察が大切であり、場合によっては救急車を呼ぶことも必要であることを伝えています。

 

 

無症状の胆石では、胆嚢癌発生の危険因子になるとのエビデンスは無く、胆嚢癌発症の合併症について考慮しつつ経過観察とすることになりました。

 

また、胆石症は、かつて女性に多い疾患でしたが、2013年の日本胆道学会の調査では男性に多いことが判明しました。

 

 

胆石症診療ガイドラインでは、無症候性胆石では結石充満型など画像診断で胆嚢壁の評価が困難な症例を除いて原則的に手術をせず、経過観察することが推奨されました。

 

 

胆汁酸利胆薬による経口溶解療法は、胆嚢の機能が正常で直径15mm未満のX線陰性あるいはCT値<60HUのコレステロール結石に対して有効です。

 

胆石は溶解し始めると、その後加速度的に溶解が進みます。消失後は4~6ヵ月ごとに経過を見ます。

 

再発率は3年までで30~40%ですが、再投与によって溶解し易いです。

 

再発防止のために、肥満の抑制、朝食の十分な摂取、食物繊維の摂取、性ホルモンの使用禁止、就眠前UDCA200mg程度の服用などが勧められます。UDCAはCDCAに比べて安全性や有効性の面で優れます。

 

肝内結石はビリルビンカルシウム結石が多く、胆汁酸利胆薬による有効性は少ないです。

 

ただし、胆石発作急性胆嚢炎などの合併症や胆管炎を繰り返す有症状例では抗菌薬の使用など急性期の治療後に腹腔鏡下胆のう摘出術など侵襲の少ない外科的治療が適応となるほか、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)が勧められます。

 

腹腔鏡下胆嚢摘出術の普及で、溶解療法やESWLによる治療は減少しています。

 

総胆管結石は胆管炎を起こし致命的になることがあるため、内視鏡的乳頭切開術、バルーン拡張術、結石除去術などの積極的な処置を行います。

 

 

ESWLと溶解療法の適応の違いは、主に胆石の大きさと数にあり、大部分は重複します。

 

浮遊する多発症結石(グレードA),その他のX線陰性のコレステロール石(グレードB)です。

 

効果判定は3ヵ月ごとに行います。大きさが5~10mm(中胆石)や10mm以上(大胆石)では6ヵ月・1年後に再度判定し、径の縮小がなければ無効と判定し投薬を中止の上、1~2回/年の間隔で経過を観察します。

 

 

ESWLによる破砕成功率は75~100%です。破砕片が消失するまでUDCAを併用し、破砕片の1年後の完全消失率は63~90%です。

 

径2㎝以下1個の純コレステロール石(グレードA),その他の径3cm以下、3個以下のX線陰性コレステロール結石(グレードB)です。破砕片の膵管閉塞による膵炎の合併に注意します。

 

 

参照:胆石症診療ガイドライン2016(日本消化器病学会)