心筋症とは、高血圧や虚血性心疾患などの特定の原因なしに、心筋の病変の首座を有する疾患を包含する概念です。

 

近年、病因や治療に関する新しい知見が得られ、予後改善に寄与しています。

 

わが国では、2005年に「心筋症-診断の手引きとその解説」が作成され、拡張型、肥大型、拘束型、不整脈源性右室心筋症、家族性突然死症候群、ミトコンドリア心筋症、心ファブリ病、たこつぼ心筋症を含む分類が採択されました。

 

また、日本循環器学会から、「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症に関するガイドライン(2011年)」「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)」が示されホームページから参照可能です。

 

 

拡張型心筋症は、心筋収縮不全と左室内腔の拡張を特徴とします。

 

自覚症状は、心不全によるものが主体です。肺うっ血は労作性呼吸困難、起座呼吸の原因となり、循環不全のために浮腫や全身倦怠感が出現します。

 

身体所見は、視診(頸静脈怒張)、触・打診(肝腫大)、聴診(心Ⅲ音、肺ラ音)を認めます。

 

胸部X線では、心陰影の拡大を認めます。

 

また、心負荷増大に伴い脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が上昇し、心筋トロポニンは約30%の症例で持続高値を示します。

 

 

心筋症の診断において心エコーの役割はとても大きいです。

 

拡張型心筋症では、左室のびまん性壁運動低下と容積拡大を認め、左室壁厚は正常ないし減少します。

 

病歴や身体所見から全身スクリーニングを行い、サルコイドーシス、心ファブリ病など二次性心筋症の鑑別を行うことが必要です。

 

以上の検査は、高円寺南診療所にてすべて実施可能です。

 

 

専門医療機関での精密検査には、

 

①心臓MRI造影検査。これは心筋障害の原因が虚血性か非虚血性かを鑑別する上で有用(拡張型心筋症では、冠動脈支配領域に一致しない孤立性の淡い斑状の分布、左室壁中層を縦走する遅延造影、などを呈します)です。

 

②冠動脈撮影。虚血性心筋症との鑑別のために行います。

 

③心筋生検。他の心筋症を除外するために行います。拡張型心筋症に特異的な所見はありません。

 

 

拡張型心筋症の治療・治療

 

治療の対象は急性非代償性心不全で、利尿薬、硝酸薬、カルぺリチド、静注強心薬、収縮不全と拡張不全の管理(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ジギタリス、経口強心薬)不整脈の管理(抗不整脈薬)

 

 

デバイス治療等

 

①両心室ペーシング、再同期治療機能付き除細動器)

 

②外科治療

 

③補助循環(大動脈内バルーパンピング、経皮的心肺補助装置、補助人工心肺など

 

④心臓移植(2011年より、植込み型補助人工心臓が保険償還)

 

呼吸管理(低酸素血症に対する酸素療法、場合によっては非侵襲的陽圧換気NPPV)

 

 

拡張型心筋症は予後不良とされてきましたが、近年、治療成績は改善されてきており、5年生存率76%(1999、厚生省調査)と報告されています。

 

この調査以降も、β遮断薬、デバイスなど新しい治療が標準化されています。

 

しかし、重症例の予後はなお不良であり、心臓移植が最終的な治療であることは変わっていません。

 

インフルエンザに罹って(H.Aさん48歳)

 

第0病日:2/8(木)高円寺南診療所受診。肩こり(軽度)、腹部膨満感(軽度)の他、特記すべきことはありませんでした。

 

(職場でインフルエンザのワクチンを接種していただく予定でしたが、今年に限って未接種でした。)

 

アレルギー性鼻炎の治療薬をはじめ、朝:葛根湯、夕:柴胡桂枝乾姜湯などを処方しました。

 

 

第1病日:2/9(金)仕事を終え、3連休何しようかなと思いながら、途中ケーキなども買い、帰宅の途に付いていました。

 

帰宅後、夕食を食べながらなんとなく食欲が無い上に、体の異変を感じていましたが、入浴しくつろいだ後、就寝しました。

 

夜半に目が覚め、体の節々が痛いことがはっきり感じ取れ異変が大きくなっていることに気づきました。

 

職場でインフルエンザが流行し、罹っていなかったのが自分だけであったことを考えると、インフルエンザだろうなと直感的に思いました。

 

水氣道を続けていると、心身の異変に気づきやすくなります。

 

 

第2病日:2/10(土)起床後、朝食を取ったのち早速近くの診療所へ行きました。

 

待合室で熱を測ったら37.6℃あり、おそらくこの後検査キットで検査してインフルエンザと診断されるんだろうなと思っていました。

 

自分の診察の順番が廻ってきて、案の定検査キットで検査を実施し、その結果は予想に反して陰性でした。

 

その時の診療所の医者の診断は

 

熱が出てから、24時間経たないとインフルエンザかどうか検査結果に表れてこないため、診断は出来ない。よって今日は解熱剤だけ渡すから明日また診察を受けてくれというものでした。但し、明日は日曜日のため、うちも含めほとんどの診療所は休みのため救急医療に罹ってくれとのことでした。(半笑いで)」

 

しょうがないと思い、薬局で解熱剤を受け取り、帰宅しました。

 

 

H.Aさんの近所の診療所のドクターは、インフルエンザ診断キットの限界をご存じであり、それをH.Aさんにきちんと伝えていることは評価できると思います。おそらく、インフルエンザの可能性あり、と判断されていたのではないでしょうか。

 

この段階で解熱剤のみの処方、というのは完全な誤りではありませんが、必要な発熱を抑え込むことでウイルス感染をかえって長引かせ、ウイルスを周囲にばら撒いてしまうことになるので残念です。

 

この段階で検査キットを用いないで、臨床判断のみで抗インフルエンザ治療薬を即時に開始していれば、H.Aさんの経過は順調だったものと思われます。

 

インフルエンザの診断は、検査キットによる迅速診断によらなければならない、とする思い込みは是正していただきたいと思います。

 

検査キットで陰性であるにもかかわらず、医師がインフルエンザと診断したとすれば、いかがでしょうか。

 

「それでは何のために検査したのか?」という疑問とともに不信感がもたらされるのではないでしょうか。

 

また、何も処方されないとしたら不満を表明する方が少なくないのではないでしょうか。

 

帰宅後自宅では隔離され、すぐに寝たのですが、寝ながら明らかにどんどん調子が悪くなっているのを感じながらふと次のような疑問が湧いてきました。

 

「今日受けた診療所では、検査キットで検査し、結果がでず判断できないから、解熱剤だけ渡して帰ってくださいという診断だったけど、このまま明日まで養生しても良くなるどころか悪化してそうだけど、こういう流行性感冒などは初期の対応が重要なのではないのかな」というものです。

 

今の医療はこんな感じなのかなと思いつつ養生することに努めました。

 

 

H.Aさんは、初期対応の重要性に気づいておいでです。しかし、もっと大切なのは、インフルエンザワクチンを例年通り、早い段階で接種すべきであったことです。

 

2015/2016年シーズンからは国内におけるインフルエンザワクチンはバージョンアップし、それまでは「3価ワクチン」だったものが「4価ワクチン」となりました。

 

「3価」「4価」とは、それぞれワクチンの中に入っている「株」の種類の数を表します。3価の場合は2種類のA型に対するもの、1種類のB型に対するものが入っていましたが、これが4価になって2種類のA型、2種類のB型に対応するものになりました。

 

つまり、同じワクチンでもカバーできる範囲が広がったわけです

 

また、特に発熱直後の場合、検査キットを実施しないという方針も尊重されるべきではないでしょうか。

 

高円寺南診療所では、ホーム・ページで迅速検査キットによるインフルエンザ検査を行っていない旨を表明していますが、随分と時代遅れで低レベルの医療機関であると判断されることもあり、残念な思いをすることがあります。

 

ところで、流行性感冒(インフルエンザ感染症)は、初期対応が重要であることは事実です。

 

漢方では太陽傷寒といい、麻黄湯桂枝湯を処方することが多いです。

 

麻黄湯は初期のインフルエンザで、悪寒(寒気)、発熱、頭痛、腰痛があり、自然に発汗しない場合に良く効きます。

 

これに対して桂枝湯は体力が衰えたときの風邪やインフルエンザの初期に用います。

 

 

第3病日:2/11(日)起床後、良くなっていることはなく、熱も解熱剤が切れれば36.7℃あり昨日より明らかに調子悪くなっていました。

 

早速救急医療に出向き診察を受けることにしました。そこでも検査キットにて検査し、医師からインフルエンザB型ですと診断されました。

 

(内心、こんなに調子悪いんだからそりゃそうだろうな)

 

「会社に提出するための診断書を書いてほしいとお願いすると、今日は救急だから書けない。ほしいなら週明け火曜日に来てくれ」というものでした。

 

診察後薬局で、薬を受け取り(吸引用治療薬)帰宅し、早速薬を服用し、就寝することにしました。

 

 

インフルエンザは例年、2月中旬くらいまではA型が主流で、バレンタインデーを過ぎてからB型が出始める傾向が強いのですが、今年に限っては、「1月中からB型に罹患する人が多い」という特徴がありました。

 

今年のインフルエンザの特徴は「A型とB型が同時に流行した」ことでした。

 

インフルエンザB型の特徴を記載します。

 

発熱に関しては、A型と同様に高熱が出るケースと、熱が出ないケースがあります(37℃台の方もたくさんいます)。

 

一方で、胃腸炎のような症状を訴える人が特徴です。

 

この時期、ノロウイルス感染症のような急性胃腸炎(感染性)が見られることもあり、しばしば鑑別が難しいケースも見られますが、

 

感染性胃腸炎の場合は1-2日程度で症状や発熱などが落ち着いてきますが、インフルエンザB型の場合は3日以上症状が続くこともあります。

 

熱はなくても立派な「インフルエンザ感染症」ですので、周囲の方に感染を広げてしまうリスクは変わりません。

 

発症早期であれば、インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬(タミフル®、リレンザ®、イナビル®等)を服用します。

 

インフルエンザはA型でもB型でも、治療に用いる抗インフルエンザ治療薬の使い分けはありません。

 

A型インフルエンザのみ有効とされたアマンタジンは、耐性化が進んだため使われていません。

 

また、近年、オセルタミビル(タミフル®)とベラミビル(ラピアクタ®)との同時に交叉耐性を示すウイルス株が報告されています。

 

そこで吸入薬ザナミビル(リレンザ®)あるいはラニナミビル(イナビル®)の処方選択は一定の根拠はあると思います。

 

 

第4病日:2/12(月)熱36.5℃(解熱剤が切れると熱が出てくる上に、耳の後ろがひどく痛む)ひたすら睡眠をとり養生に努めました。

 

水分補給と休息、が特効薬です。

 

 

第5病日:2/13(火)診断書をもらいに、救急で訪れた病院を訪れました。

 

受付で「外出禁止の期間なのに何で来たの?」と言われ愕然としつつ、診断書をもらうための具体的な話をし、こちら側の明記事項を説明したが

 

希望している内容を書けないということで、診断書をもらうことをあきらめることにしました。

 

 

第6・7病日:2/14(水)、2/15(木)ひたすら睡眠を取り養生した結果、耳の後ろのひどい痛みと発熱はようやく治まりました。

 

 

第8病日:2/16(金)職場復帰したが、仕事しながら全然調子が悪く明日土曜日(休日)でよかったと思いながら、高円寺南診療所へ行き、先生の診察を受け、インフルエンザ後の体調回復の薬を処方してもらいました。

 

H.Aさんの血圧132/83mmHg、脈拍数92/分、動脈血酸素飽和度98%で概ね正常でしたが、体温は38.3℃であり、十分な解熱が得られていませんでした。

 

竹筎温胆湯(チクジョウンタントウ)という漢方薬を処方しました。この漢方薬は、インフルエンザの回復期に熱が長引いて、気分がさっぱりしないような場合に処方します。

 

H.Aさんは消化管がデリケートでアレルギー性鼻炎をはじめアレルギー体質でもあるため、適切な初期対応が遅れると、それ以上に回復が遅れる傾向があります。

 

・・・・・・・・・・・・

 

第18病日:それから体が本調子になるまでに10日程度を要したことは、インフルエンザはやはり普通の風邪とは違うと思い知らされたところです。

 

 

最後に

今回インフルエンザに罹って思うことは、やはり最初の診察で初期の対応が取れていれば、もっと軽く済んだのにと思いました。

 

また私の勝手な主観ながらこの初期の対応の遅れが、大流行につながっているとも感じました。

 

 

H.Aさんは、水氣道®やカウンセリングなどにより、セルフ・コントロール能力がかつてと比べて格段に進歩しています。

しかし、そこで油断が生じないように養生と鍛錬を続けていくことが必要になります。

今回の苦い経験によって、普段の健康の維持・増進や体質改善、また予防医学の大切さをさらに実感されたようにお見受けします。

それから、現代医療の問題点についても、ご自分の実際の体験を元に、貴重な所感を述べていらっしゃいます。

 

H.Aさんの体験記は、貴重な報告書であり、多くの皆様方の参考になるものと考えております。

 

 

肺結核は、結核菌による感染症です。

 

治療は多剤併用療法(経口薬の場合、イソニアジド・リファンピシン・エタンブトール塩酸塩・ピラジナミドの4剤)が基本になります。

 

治療期間は、標準治療を実施した場合でも6か月間に及びます。

 

不規則治療や中断は、十分な効果が挙げられないばかりでなく、結核が蔓延し、耐性菌を生み出すことになります。

 

WHOは1995年にDOTS(直接観察下、短期化学療法)戦略を提唱しました。

 

これは「発見した喀痰塗抹陽性肺結核患者の85%以上を治す」ことを目標とした包括的な結核対策です。

 

日本の結核登録率(罹患率に相当)は人口10万対13.9(2016年)まで低下し、低蔓延国といわれる10万対10に近づいています。

 

しかし、初回塗抹陽性肺結核患者の治癒・治療完了率は47.7%(2016年)と良好ではありません。これには結核患者の高齢化(70歳以上の患者割合59.0%)が強く影響しています。

 

潜在性結核感染症の診断と治療は、わが国の結核対策のなかでも重要です。

 

潜在性結核感染症であった場合、免疫抑制状態にある患者(HIV感染症、臓器移植、慢性腎不全・血液透析、糖尿病、生物学的製剤による治療)は、活動性結核を発症するリスクが高いです。

 

 

日本結核病学会「結核診療ガイドライン(改訂第3版)」(2015年3月)

 

厚生労働省「結核医療の基準」(2016年1月)

 

 

高円寺南診療所での結核対応

 

①結核の診断には、検査結果を併せて説明することが重要です。

 

②喀痰検査と塗抹検査が陽性であった場合、胸部X線で空洞がある場合は結核の病態が進行していることになります。そのため、結核診療施設に入院して治療する可能性が高まります。その場合には、感染症法に則って対応する必要性を説明します。

 

③患者・家族などに接触する時間が長い人は結核に感染している可能性があります。

その場合、接触者検診を実施する対象になる可能性について説明します。ただし、すでに呼吸器症状を呈している家族(接触者)が居る場合は、より迅速な対応が必要です。

 

④結核の治療は最短でも6か月間を要すること:治療を成功させるためには厳密な服薬管理が重要です。その際には保健所の担当者が支援を行うことを説明します。

 

⑤結核の治療は多剤併用療法:肝機能障害などの副作用が起こる頻度は比較的高く、定期的に採血を行い副作用の有無を確認します。副作用の症状があった場合には、早期に受診していただきます。

 

⑥リファンピシンは薬物相互作用を起こしやすい抗結核薬です。

現在内服している薬をすべて提示していただき、薬物相互作用の可能性をチェックすることは不可欠です。

たった3日間の学会ですが、内容が濃く、膨大な情報量になってしまいました。

 

以下の学会報告リポートは、いわば講義ノートのようなものですが、一般の皆様にも理解し易いように書き改めています。私の分析の他、感想や思い付きは朱書きとしました。

 

 

4.褐色細胞腫パラガングリオーマの診断と治療:現状と課題 ……………京都医療センター 成瀬 光栄

 

褐色細胞腫もクッシング・サブクリニカルクッシング症候群と同様に、特徴的な身体所見や副腎偶発腫瘍として発見される例が増えています。

 

この疾患はホルモン過剰症のみならず悪性腫瘍の側面を有し、診断・治療は「褐色細胞腫診療指針2012」に準拠します。

 

診断のきっかけは、1)発作性高血圧・高血圧クリーゼ、2)頭痛、動悸等の多彩な症状、3)副腎偶発腫瘍、4)治療抵抗性高血圧・糖尿病等です。

 

機能診断としては血中カテコラミン分画、随時尿中メタネフリン分画(外来)、24時尿中カテコラミン排泄量(入院)測定によります。

 

局在診断は副腎のCTやMRIが第一選択で、約90%は副腎性で主要も大きいため、診断自体は容易です。

 

ただし、腫瘍を認めない場合は、全体幹CT、MRI、¹²³I-MIBGシンチグラフィを組み合わせます。

 

コレラも高血圧や耐糖能異常等合併症が多く、手術により著明な改善が期待されます。また¹⁸F-FDG-PETは悪性例の転移巣検索に有用です。

 

治療は腹腔鏡下腫瘍切除が第一選択です。

 

 

 

5.睡眠時無呼吸症候群… ………………………………………自治医科大学 苅尾七臣

 

日本人でも、肥満の増加に伴い、睡眠時無呼吸症候群(OSA)が多く、原発性アルドステロン症と並んで頻度が高いです。

 

高血圧、不整脈、多血症、代謝異常等、さまざまな合併症がみられ、重症者に対して、経鼻的持続陽圧呼吸(nasal CPAP)の導入や体重減量により期待されます。

 

 

日常診療では、薬物治療抵抗性高血圧や二次性高血圧に隠れているOSAを見落さないことがポイントです。

 

OSAを疑う徴候としては、昼間の眠気、一晩3回以上の夜間覚醒と覚醒時の窒息感と動悸等があり、脈拍70/分以上の頻脈、朝・就寝時血圧差(ME差)や日間血圧変動差が収縮期血圧で15~20mmHg以上の不安定変動型早朝高血圧ではOSAを疑います。

 

さらに、24時間血圧モニタリング(ABPM)夜間高血圧を呈することが特徴です。

 

この血圧変動は睡眠時無呼吸発作により直接的に引き起こされ、OSAで多い睡眠中発症の循環器イベントの誘因となります。OSAの診断はパルスオキシメータを補助的に使用し、確定には睡眠ポリソムノグラフィを用います。

 

 

高円寺南診療所では、高血圧の方には家庭血圧測定を推奨しています。

 

その際には、少なくとも、朝と就寝前の血圧と脈拍数を測定し、記録していただけるようにお伝えしています。

 

それによって朝の頻脈の有無や朝・就寝時血圧差(ME差)を評価することができます。

 

また、肥満を伴う方にも、できる限り同じタイミングで体重測定をして記録していただいております。

 

 

治療法としては、生活習慣の改善、肥満の是正、マウスピース、CPAP等があります。

 

ただし、2017年AHA/ACC高血圧治療ガイドラインでは、「CPAPの降圧効果は確立していない」とされています。

 

 

一晩(7時間)の睡眠中に30回以上の無呼吸(10秒以上の呼吸気流の停止)があり、そのいくつかはnon-REM期にも出現するものを睡眠時無呼吸症候群と定義します。

 

1時間あたりでは、無呼吸回数が5回以上(AI≧5)で睡眠時無呼吸症候群とみなされます。

 

睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類します。

 

なお、低呼吸(Hypopnea)とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3~4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。

 

 

保険診療上のCPAP導入基準において、重視されているのが、日常の傾眠、起床時の頭痛などの自覚症状が強く、日常生活に支障をきたしていることであり、その場合は、無呼吸低呼吸指数が40以上であれば対象患者になるということです。

<読売新聞3月24日>

前回の内容(うつ病と生活習慣)が他に無いか調べたところ、読売新聞にも3月24日付けで同じ内容の記事が出ていました。

 

読売新聞の記事では以下の部分も追加されています。

 

生活習慣では、間食や夜食をほぼ毎日食べている人でリスクが高かった一方、朝食を毎日食べている人はリスクが低かった。

また、「ゆっくり泳ぐ」「カートを使わないゴルフ」など中等度以上の運動を習慣的に行っている人も、リスクは低かった。

 

 

「朝起き朝食を食べる」はドクトル飯嶋がずっと言い続けています。

 

ご本人に確認したところ、20年以上も前から(!)言っているそうです。

 

 

中等度の運動だと「水氣道®」があてはまります。

 

 

高円寺南診療所では当たり前に、ずっと実践されていることですね。

 

世間が追い付いてきたということでしょうか?

 

ドクトル飯嶋は「初診の方へ」で

 

「当院では最小限の薬を処方しております。

それに伴い生活習慣の指導を重視しております。」

 

と宣言しています。

 

 

これからも、この方針は変えないと思います。

 

Nogucciも、自分の生活習慣を良くする努力を更に進めていきたいと思います。

 

 

 

たった3日間の学会ですが、内容が濃く、膨大な情報量になってしまいました。

 

以下の学会報告リポートは、いわば講義ノートのようなものですが、一般の皆様にも理解し易いように書き改めています。私の分析の他、感想や思い付きは朱書きとしました。

 

 

2.原発性アルドステロン症の診断と治療… ………………………大分大学 柴田 洋孝

 

二次性高血圧のなかで、原発性アルドステロン症は特に頻度が高く、高血圧の約5~15%を占める食塩感受性高血圧です。

 

しばしば治療抵抗性高血圧をも呈し、同程度に血圧をコントロールした本態性高血圧患者と比べ、心血管疾患の罹患率が高いです。

 

本症の診断は、段階的に行うことが推奨されています。スクリーニング検査としては、アルドステロン/レニン比で行うことが推奨されています。

 

しかし、最終的に手術による治療を目指すためには、副腎静脈サンプリングによる片側性アルドステロン産生腺腫の局在診断が必要になりますが、実臨床とりわけ外来診療において容易に実施できる検査ではありません。

 

診断の進捗を阻む未解決の課題としては、ホルモンの迅速測定、副腎静脈サンプリングの代替検査となる体外診断、手術治療と薬物治療による予後調査等があります。

 

片側性病変では副腎摘出術により治療を期待でき、両側性病変でも薬物療法により著明な改善が期待できます。

 

高円寺南診療所では、今後、未治療高血圧患者の薬物療法を開始する際に、積極的に二次性高血圧を鑑別し、とりわけ原発性アルドステロン症の鑑別するための初診時スクリーニング検査としてアルドステロン/レニン比をルーチン化する予定です。

 

 

 

3.クッシング・サブクリニカルクッシング症候群… ……………福岡大学 柳瀬 敏彦

 

クッシング・サブクリニカルクッシング症候群は、特徴的な身体所見や副腎偶発腫瘍として発見される例が増えています。これらも高血圧や耐糖能異常等合併症が多く、手術により著明な改善が期待されます。

 

糖質コルチコイド(GC)は、糖質・脂質代謝作用のみならず、昇圧に作用し、生命維持に必須のホルモンです。

 

クッシング症候群はコルチゾールの慢性過剰症ではおよそ84%で高血圧を呈します。

 

コルチゾールの自律産生能が弱いサブクリニカル・クッシング症候群においても60%強の高血圧合併症が報告されています。

 

GCにおける死因は心不全、脳卒中、心筋梗塞等の血管合併症によるものが多いです。

 

本症における血管合併症の発症・進展には高血圧以外にもGC過剰に伴う糖尿病、肥満、脂質異常症等が相互に関係します。

 

 

血圧上昇の成因としては、GC過剰に伴う体液量増大や種々の因子を介した末梢血管抵抗の増大、カテコラミンやアンジオテンシンⅡに対する受容体等様々な機序関与しています。

 

また長期的にはインスリン抵抗性を介した耐糖能異常や脂質異常症等により動脈硬化を惹起することも関与します。

 

治療は副腎腫瘍の摘出を原則とし、CSにおけるその効果は顕著です。

 

一方、コルチゾールの自律性分泌が比較的弱いサブクリニカルCS(SCS)に関しては、診断上の問題点や手術適応に関して種々の議論がなされてきました。

 

なおCSやCSCの副腎腺腫ではPKA(プロテインカイネースA)シグナルの恒常的活性化をきたす体細胞異変が同定されました。

 

これはSCSよりもCSでの変異陽性率が高いことから、コルチゾールの自律分泌能との関連が明らかになっています。

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「水分(すいぶん)」です。

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場所は、臍から上へ親指の横幅の距離にあります。

 

 

「腹痛」「下痢」「胃炎」「腸炎」「浮腫」「腎炎」「膀胱炎」等に効果があります。

 

 

<参考文献>

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

肝硬変とは、慢性肝障害の終末像です。

 

それは肝細胞の炎症・壊死とその修復・再生が持続することによって高度な線維化が生じたものです。

 

その結果、肝臓は硬く変化し、肝機能が減衰した状態となります。

 

肝硬変は肝予備能(合成能、代謝能)が低下するために、腹水、肝性脳症、黄疸、静脈瘤(食道、胃など)などの合併症を生じます。

 

これらの合併症がない代償性肝硬変と合併症を有する非代償性肝硬変に分類されます。

 

 

わが国における肝硬変のおもな原因は肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)感染であり、肝硬変の成因の約8割を占めています。

 

C型急性肝炎(HCV)は感染すると、健康成人の感染であっても、急性の経過で治癒するのは30%であり、感染例の慢性化率は60~70%で持続感染が続き、特に輸血後肝炎に多く、またウイルスの自然消失は年率0.2%とまれです。

 

日本での一般人口におけるHCV抗体陽性率は2%、約200万人存在するとされています。

 

C型肝炎はほぼ100%ウイルスの永続的な排除が期待できる疾患です。非代償性肝硬変例、肝細胞癌治療中の症例、併存疾患のため予後不良の症例を除き、原則として全例が治療適応になります。

 

HCVキャリアが無治療のとき、慢性肝炎60~70%、肝癌25%、肝硬変15%に進展します。

 

抗ウイルス治療の進歩により、肝硬変の予後は改善しました。

 

しかし、非代償性肝硬変では、種々の合併症が容易に出現し易く、合併症が契機となって肝不全に至る場合があります。

 

 

日々の診療において、血液検査や画像検査により合併症を早期発見するとともに、発症リスクを軽減する治療を行うことが必要です。

 

 

2015年に慢性化疾患患者の掻痒症に対してナルフラフィン®の使用が承認されました。

 

2016年にリファキシミンが肝性脳症に伴う高アンモニア血症に対する抗菌薬として承認されました。

 

 

食道静脈瘤効果療法薬

 

モノエタノールアミンオレイン酸塩(オルダミン®)、ポリドカノール(エトキシスクレロール®、ポリドカスクレロール®)

 

食道静脈瘤の局所に注入することによって静脈瘤を硬化退縮させるものです。

 

ショックに注意して用いる必要があります。

 

 

参照:2017年日本食道学会,食道癌診断・治療ガイドライン(診療ガイドライン第4版)

 

参照:肝硬変診療ガイドライン2015改訂第2版(日本消化器病学会)

 

平成28年B型C型慢性肝炎・肝硬変治療のガイドライン(厚生労働省科研費研究班)

 

たった3日間の学会ですが、内容が濃く、膨大な情報量になってしまいました。

 

以下の学会報告リポートは、いわば講義ノートのようなものですが、一般の皆様にも理解し易いように書き改めています。私の分析の他、感想や思い付きは朱書きとしました。

 

 

1.腎血管性高血圧の診断と治療… …………………………防衛医科大学校 熊谷 裕生

 

腎血管性高血圧は腎実質性高血圧と並び、腎性高血圧の代表的疾患です。腎血管性高血圧は、動脈硬化等により片側または両側の腎動脈が狭窄することによって生じた高血圧です。若年者に多い線維筋性異形成と中高年者に多い粥状動脈硬化性のものがあります。

 

診断:形態診断としては、MRアンギオグラフィで狭窄75%以上のものを腎動脈狭窄と定義します。

 

腎動脈狭窄(Renal Artery Stenosis;RAS)は、全身の動脈硬化性病変を反映し、頚動脈 狭窄や心血管疾患との合併が多いことが知られています。

 

RAS の評価は、心筋梗塞や脳 梗塞など生命予後に影響を及ぼす疾患の診療上、重要な情報になると考えられます。

 

最終診断には、腎動脈造影や造影CTが必要となります。

 

 

しかし、腎動脈硬化(RAS)の診断には、放射線を用いた CT 血管造影やデジタルサブトラクション血管造影、 磁気を用いた MR血管撮影などがあります。

 

これらは RASの存在を正確に証明することができますが、被ばくや造影剤の問題もあり、ペースメーカーが挿入された患者さんでは検査ができない場合もあります。

 

また、形態だけでなく、レノグラムで狭窄腎の機能も低下していることを確認して、はじめて腎動脈狭窄による腎血管性高血圧と診断されます。

 

腎動脈やその分枝の狭窄病変に対し、薬物療法や血行再建を慎重に選択して介入することが望ましいです。

 

一方、エコー検査は、従来の方法では得られない血流速度が評価できること、また腎障害のある患者にも繰り返し施行できることなどの利点があり、 簡便かつ安全なスクリーニング検査として有用です。

 

腎動脈エコーの検査法 腎動脈起始部の収縮期最高血流速度(Peak systolic velocity;PSV)を測定し、腎動脈の狭窄の程度を評価します。同時に腹部大動脈の血流も測定します。

 

これは後述する腎動脈/腹部大動脈血流速度比(RAS) の評価基準 の一つに、腎動脈と大動脈の血流速度比があるためです。

 

また腎内血管(区域動脈・葉間動脈)の血流を測定することにより、腎実質障害の程度を評価することも可能です。

 

このデータは、RAS に対する経皮的腎動脈形成術(Percutaneous Transcatheter Renal Angioplasty; PTRA)適応判定にも用いられています。

 

 

〇腎動脈狭窄の評価方法 腎動脈起始部の片側または両側の PSV が 180cm/sec 以上、または腎動脈/腹部大動脈血流速度比(renal/aorta ratio:RAR)が 3.5 以上の場合、有意な腎動脈狭窄(径狭窄率 60%以上) が示唆されます。

 

腎動脈エコー検査対象 (右腎動脈 大動脈 左腎動脈 )

 

治療:降圧だけでなく腎機能の改善や悪化防止を目指します。ドップラーエコーresistive indexが0.8以上の症例にステント療法は無効です。

 

また腎血管拡張術+ステント療法は薬物療法(ABR+スタチン+抗血小板薬)と差が無いことがわかりました。

 

そこで、すべての症例に対して薬物療法を基本としますが、肺水腫・腎機能が急速に悪化する症例、両側腎動脈狭窄、片腎の腎動脈狭窄、治療抵抗性高血圧(3種類以上の降圧剤でも無効)等に対してはステント療法を考慮すべきです。

 

 

〇腎内血流(区域・葉間動脈)の評価方法 腎機能評価において、末梢血管抵抗を示す指標 RI (resistance index:抵抗係数)値が用いられています。

 

これは腎内血管の収縮期最高血流速度と拡張末期血流速度から求めることができる簡便な指標です。

 

RI>0.8 の場合には高度の腎機能障害で予後不良とされています。RI 値が高値となる例では血流を PTRA で回復しても腎機能の改善が難しいことが報告されています。

 

このように、腎動脈エコーは非侵襲的にRASが評価できるだけでなく、腎実質障害の程度、治療方針や効果などの判定に役立つ情報が得られる大変有用な検査法です。

 

高円寺南診療所でも実施できる検査なので、十分に活用していきたいと思います。

 

 

 

関節リウマチ(RA)とは、一言でいえば全身性自己免疫疾患の代表です。

特徴は、持続性・破壊性の関節症状を有することです。

つまり、端的には関節に症状が現れる病気なのですが、全身性の病気であるという理解が必要です。

患者数は国内で約70万人とされてきましたが、80万人とされるようになってきました。

男女比は1:4で女性に多い病気です。

年齢は40~60歳代で、就業年齢に起こるため、RA発症は労働生産性の低下につながります。また、近年では生物学的製剤が普及し、RA患者の労働生産性は向上しましたが、患者医療費を押し上げ、社会経済的にも大きな問題になっています。

RAは身近な疾患であるため、こうした経済的観点は重要であり、抗リウマチ薬を「適切な患者に」「適切なタイミングで」「適切な製剤や投与量を」使用することを常に心がけているところです。

 

薬剤の進歩に合わせてRA分類基準が改訂され、また「目標達成に向けた治療」戦略が公表されました。

以下が、日本リウマチ学会から刊行されています。

2014年「関節リウマチ診療ガイドライン」

2016年「関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン改訂版」

 

しかし、以下のような課題が残っています。

①いまだに治療の決定版がない

難治性のRAの場合、せっかく早期にRAを診断し、ガイドラインに沿って治療を試みても、多くの薬剤にアレルギー反応が出たり、しばらくすると効果不十分となったりすることがあります。その理由は、RAは一括りの病気ではなく、ある程度異質な病気の寄せ集めであるからです。私は<関節リウマチ>という病名自体が多くの患者さんに誤解を与えているのではないかと心配しています。個人的には<関節リウマチ症候群>に改めるべきではないかと考えています。

言い換えれば、同じRAという診断であっても、患者ごとに病態が異なり、それに関連する免疫細胞やサイトカインが異なっています。これは、多くの患者さんに対して原因療法が行えていない現実とも重なってきます。また、抗体製剤にアレルギーがある場合には、有効性の判定以前に、その薬剤の使用が困難になってしまうことも問題になっています。

②長期罹患RAで合併症の多い患者

困るのは、強力な免疫抑制療法が行いにくいケースです。

典型例としては、すでに関節変形が進行してしまっている例、ステロイド薬の合併症が複数生じてしまった例、肺線維症をはじめとする肺合併症を有する例などです。

この場合は、治療目標を臨床的寛解ではなく、低疾患活動性とせざるを得ません。

しかし、悩ましいのは、患者は疼痛や機能障害を訴えることが多く、生活の質QOLが著しく低下することです。とりわけ、問題になるのは高齢RA例です。

認知機能の低下を伴う場合には、いっそうの支援が必要になります。

②医療費の問題

生物学的製剤が使用できるようになってから、RA患者の医療費は急上昇しました。

高円寺南診療所では、高額な生物学的製剤を極力使用しないで済むように、コストの低い抗リウマチ薬を工夫して処方しています。そのために最も大切なのは、早期発見および早期治療です。