最新の臨床医学:4月25日 < 拡張型心筋症(DCM)>

心筋症とは、高血圧や虚血性心疾患などの特定の原因なしに、心筋の病変の首座を有する疾患を包含する概念です。

 

近年、病因や治療に関する新しい知見が得られ、予後改善に寄与しています。

 

わが国では、2005年に「心筋症-診断の手引きとその解説」が作成され、拡張型、肥大型、拘束型、不整脈源性右室心筋症、家族性突然死症候群、ミトコンドリア心筋症、心ファブリ病、たこつぼ心筋症を含む分類が採択されました。

 

また、日本循環器学会から、「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症に関するガイドライン(2011年)」「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)」が示されホームページから参照可能です。

 

 

拡張型心筋症は、心筋収縮不全と左室内腔の拡張を特徴とします。

 

自覚症状は、心不全によるものが主体です。肺うっ血は労作性呼吸困難、起座呼吸の原因となり、循環不全のために浮腫や全身倦怠感が出現します。

 

身体所見は、視診(頸静脈怒張)、触・打診(肝腫大)、聴診(心Ⅲ音、肺ラ音)を認めます。

 

胸部X線では、心陰影の拡大を認めます。

 

また、心負荷増大に伴い脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が上昇し、心筋トロポニンは約30%の症例で持続高値を示します。

 

 

心筋症の診断において心エコーの役割はとても大きいです。

 

拡張型心筋症では、左室のびまん性壁運動低下と容積拡大を認め、左室壁厚は正常ないし減少します。

 

病歴や身体所見から全身スクリーニングを行い、サルコイドーシス、心ファブリ病など二次性心筋症の鑑別を行うことが必要です。

 

以上の検査は、高円寺南診療所にてすべて実施可能です。

 

 

専門医療機関での精密検査には、

 

①心臓MRI造影検査。これは心筋障害の原因が虚血性か非虚血性かを鑑別する上で有用(拡張型心筋症では、冠動脈支配領域に一致しない孤立性の淡い斑状の分布、左室壁中層を縦走する遅延造影、などを呈します)です。

 

②冠動脈撮影。虚血性心筋症との鑑別のために行います。

 

③心筋生検。他の心筋症を除外するために行います。拡張型心筋症に特異的な所見はありません。

 

 

拡張型心筋症の治療・治療

 

治療の対象は急性非代償性心不全で、利尿薬、硝酸薬、カルぺリチド、静注強心薬、収縮不全と拡張不全の管理(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ジギタリス、経口強心薬)不整脈の管理(抗不整脈薬)

 

 

デバイス治療等

 

①両心室ペーシング、再同期治療機能付き除細動器)

 

②外科治療

 

③補助循環(大動脈内バルーパンピング、経皮的心肺補助装置、補助人工心肺など

 

④心臓移植(2011年より、植込み型補助人工心臓が保険償還)

 

呼吸管理(低酸素血症に対する酸素療法、場合によっては非侵襲的陽圧換気NPPV)

 

 

拡張型心筋症は予後不良とされてきましたが、近年、治療成績は改善されてきており、5年生存率76%(1999、厚生省調査)と報告されています。

 

この調査以降も、β遮断薬、デバイスなど新しい治療が標準化されています。

 

しかし、重症例の予後はなお不良であり、心臓移植が最終的な治療であることは変わっていません。